不動産売却では、希望通りの売却金額で売れれば大成功です。
しかし、なかなか売れずに値段を下げたり、買い手が見つかったが相手の希望で割引をしたり、思い通りの金額で売れるとは限りません。
また、売却には様々な諸費用がかかり、売却金額 = 手元に残る金額 ではないことも覚えておきましょう。
ここでは、売却にかかる諸費用についてまとめてご紹介します。
目次
諸費用一覧
不動産売却に際してかかる諸費用は以下になります。ここでは一覧で紹介し、次項以降で1つ1つ説明していきます。
不動産売却でかかる諸費用
- 仲介手数料
- 内覧諸費用(ハウスクリーニング代、倉庫代など)
- 印紙税などの税金
- 登記費用(抵当権抹消などにかかる費用、司法書士への謝礼)
- 繰り上げ返済費用
- その他費用(測量、解体、廃棄物処分費用)
- 引越し代
仲介手数料
不動産売却で不動産会社に仲介を依頼する場合、売買契約が成立した場合に依頼した不動産会社に仲介手数料を支払います。成功報酬ですので、売買が成立しなければ支払う必要はありません。この仲介手数料は宅地建物取引業法で上限額が定められています。
売却金額 | 報酬金額の上限 |
---|---|
200万円以下の部分 | 取引額の5% |
200万円を超えて400万円以下の部分 | 取引額の4% |
400万円を超えた部分 | 取引額の3% |
つまり、400万円以上の物件の場合は以下の計算式となります。
消費税額が2019年10月から10%に引き上げられます。飲食料品等を中心に軽減税率8%も導入されますが、住宅売却の手数料については10%となる予定です。
ここで、以下に売却金額に対する仲介手数料にかかる消費税を8%と10%で比較してみます。
売却金額 | 消費税8%の時の仲介手数料 | 消費税10%の時の仲介手数料 | ||
---|---|---|---|---|
仲介手数料 | 内消費税分 | 仲介手数料 | 内消費税分 | |
1000万円 | 388,800円 | 28,800円 | 396,000円 | 36,000円 |
2000万円 | 712,800円 | 52,800円 | 726,000円 | 66,000円 |
3000万円 | 1,036,800円 | 76,800円 | 1,056,000円 | 96,000円 |
4000万円 | 1,360,800円 | 100,800円 | 1,386,000円 | 126,000円 |
5000万円 | 1,684,800円 | 124,800円 | 1,716,000円 | 156,000円 |
6000万円 | 2,008,800円 | 148,800円 | 2,046,000円 | 186,000円 |
7000万円 | 2,332,800円 | 172,800円 | 2,376,000円 | 216,000円 |
8000万円 | 2,656,800円 | 196,800円 | 2,706,000円 | 246,000円 |
9000万円 | 2,980,800円 | 220,800円 | 3,036,000円 | 276,000円 |
1億円 | 3,304,800円 | 244,800円 | 3,366,000円 | 306,000円 |
たとえば、5000万円の物件を売却した時期が消費税アップ後でとなると、31,200円多くかかってしまいます。一般的には契約締結時に仲介手数料の50%を支払い、引き渡し完了時に残りの50%を支払うこととなっていますので、売却のタイミングによっては消費税が10%で計算されることも踏まえておきましょう。
内覧諸費用(ハウスクリーニング代、トランクルーム代など)
マンション売却や一戸建て売却など、自宅を売却する際には、住んでいるうちに購入希望者に部屋の中を見てもらう機会を作らなければならない場合もあります。
新築マンションのモデルルームを見てもわかるように、センスよく配置された家具や、おしゃれな小物類でアレンジされた部屋は、「将来この家に住んだら、素敵な暮らしができそうだ」と想像できて、購入意欲をそそられます。
中古の不動産、それも居住中の場合はそこまで綺麗にアレンジするのは無理だとしても、汚れた室内やごちゃごちゃと置かれた家具類が丸見えでは、購入意欲は減ってしまいます。
そこで、購入希望者が内覧をする前に、徹底的に部屋をきれいにするために、プロの清掃業者にハウスクリーニングを頼んだり、場合によっては大きすぎて部屋が狭く見える家具などを一時的にトランクルームに預けたりする方法があります。
ハウスクリーニング代 | 3LDKで5~8万円程 |
---|---|
トランクルーム代 | 1畳の広さを1ヶ月借りて1万円前後 |
これらの方法は、できるだけ高く、できるだけ早く売却するためには効果的でありますが、一方、それだけ費用がかかってしまうことも踏まえておきましょう。
仲介業者の中には、提携のハウスクリーニング業者やトランクルームの紹介や、媒介契約の条件によっては格安、あるいは無料でサービスを提供してくれるところもあります。
印紙税などの税金
不動産売却では、売主、買主、両方に税金の支払いが課せられます。
売主の場合は不動産売買という行為に対して課される税金と、売却して売却所得(売却益)が出た場合にだけ課される税金があります。
印紙税
印紙税は、不動産売買の際に作成される不動産売買契約書に貼る印紙によって納められる税金です。印紙の金額は契約金額によって違います。
以下に印紙税額を一部抜粋してご紹介します。なお、印紙税は平成26年4月1日~平成32年3月31日までの間に作成される不動産売買契約書のうちで記載金額が10万円を超えた場合には、租税特別措置法によって軽減措置が取られます。
印紙税額(一部抜粋)※()内は軽減税率後の金額 | |
---|---|
5,000,000円超~ 10,000,000円以下 | 10,000円( 5,000円) |
10,000,000円超~ 50,000,000円以下 | 20,000円(10,000円) |
50,000,000円超~100,000,000円以下 | 60,000円(30,000円) |
所得税・住民税
不動産を売却して売却益が出た場合、不動産譲渡所得税や住民税が課せられます。これは不動産を売却して得た譲渡所得(売却益)に対してかかるものなので、不動産を売却して購入時と比べてマイナスになってしまった場合にはかかりません。
譲渡所得(売却益)は、不動産を売却した金額から取得費、譲渡費用を引いて計算します。ここでいう取得費は、売った不動産を購入した際の代金や購入手数料など取得にかかった金額、またその後支出した設備費、改良費などをいい、譲渡費用とは売却するためにかかった仲介手数料や印紙代、建物を壊して土地だけを売る場合の取り壊し費用などを含めます。
不動産売却時の所得税や住民税についての詳細は、別頁『不動産売却で課される税金とは?売却益と取得費用の関係』をご参照ください。
繰り上げ返済とその事務手数料
不動産を売却するためには、住宅ローンの残りを全額一括繰り上げ返済して、登記簿にある抵当権を抹消しなければなりません。しかし、売却前に一括返済できる資金があるとは限りません。多くの場合は、不動産売却が決まり引き渡し時に決済と同時に所有権の移転と抵当権の抹消を行います。つまり、買主から売却金額が売主に支払われたらすぐに、売主は残りのローンを返済して抵当権を抹消、その上で所有権を移転するのです。
繰り上げ返済には事務手数料がかかり、各銀行によってその金額は5000円~数万円と違います。ローンを借りた際の契約書等で確認してみましょう。
登記費用(抵当権抹消などにかかる費用、司法書士への謝礼)
不動産は、その土地や建物が誰の所有物かをはっきりするために、登記簿への所有者の登録記載が必要です。不動産の売買が行われた場合、売主から買主へと所有権移転登記が必要です。また、不動産売却で売主がそれまで支払中だった住宅ローンを繰り上げ一括返済した場合には、抵当権の抹消登記を行う必要もあります。
これらの登記にかかる税金が登録免許税です。
慣例では買主への所有権移転登記は買主が負担することとなっています。一方、抵当権抹消登記については、売主が負担することとなります。
その費用は1つの不動産に対して1,000円かかり、売却物件が一戸建ての場合は土地と建物の両方の抹消登記をした場合は2,000円となります。万が一、土地の登記が分割して登記されている場合は、その登記の数だけかかることになります。
また、抵当権抹消登記の手続きは自分でも行えますが、手間がかかるため司法書士に依頼する場合が多いです。司法書士へ支払う謝礼が別で1万円前後かかります。
その他費用(測量、解体、廃棄物処分費用)
不動産売却で、一戸建て売却や土地売却にあたっては、次のような費用がかかる場合があります。
測量費用
一戸建住宅や土地を売却する際、隣接地との境界がはっきりしない場合には土地家屋調査士に測量を依頼して明確にする必要があるため、測量費用がかかります。
測量費用は土地の広さや隣接する土地の数によっても違いますが、30坪~40坪の土地でだいたい40万円前後。ただし、公道に面していて官民立会いが必要な場合は80万円前後となります。
解体費用
古家付の土地を売却する場合、古家にそのまま住もうという買主は少ないです。古家を取り壊して更地にして売却した方が、古家付で売って買主がその後解体しなくてはならない場合よりも、価格交渉がすすめやすいですし、売主は建物取り壊し費用を前述の譲渡費用に含められますので節税になります。
この解体費用は業者により、また建物の状態によっても違いますが、木造が3~5万円(坪)、軽量鉄骨造が4~7万円(坪)ほどです。
廃棄物処分費用
相続した空き家を売却する場合、家に残された家具や家電などの廃棄物処分が必要となります。こつこつ自分で処分する時間があればいいのですが、売却を急ぎたい場合は一括で不用品回収業者に依頼する方法もあります。この場合の費用は、業者によって違いますし、ゴミの量やマンションではエレベーターがあるかなどでも変わってきますが、だいたい2・3LDKで15万円~40万円となります。依頼をする時は、何社か査定依頼をして金額を比べてみることをおすすめします。
引越し代
住まいの売却が決まったら、引き渡しの日までに引越しを完了しなければなりません。住み替えの場合は、不動産売却後にすぐ新居に移れるタイミングで引き渡し日を決めないと、売却した家→仮住まいの家→新居と2回引越しをしなければならず、引越し代が倍かかる上、仮住まいの家賃もかかってしまいますので注意しましょう。
逆にその事情を逆手に取って、買主が早めの引き渡しを希望した場合に仮住まいで賃貸マンションなどに移らなければならないという事情を踏まえて料金交渉をする方法もあります。
引越し業者に依頼する際には、必ず数社の見積もりを取って料金やサービスを比べてから決めましょう。
3月など人の移動が多い繁忙時は料金が高めになり、直前ではトラックや人の手配ができない場合もありますので注意が必要です。
不要な家電や家具は別途費用を払って廃棄してもらえますので、その分の見積もりも取るようにしましょう。