熊本県内の「中古マンション、中古戸建て、土地」を売るタイミングをつかむことは、とても難しい状況です。それは、熊本県内の不動産価格の動向をつかむための指標は複数あるのですが、ある指標は「よい数字」を示し、別の指標は「やや悪い数字」になっていて、それ以外は「とても悪い数字」だからです。
よい数字を信じれば、不動産オーナーは「もう少し値上がりするのを待つ」と判断したくなりますが、とても悪い指標が正しければ「すぐ売却活動に取りかかる」ようにしなければなりません。
また、不動産価格に大きな影響を与える地域経済も同じで、2016年4月の熊本地震からの復興は、一部の分野では順調に進んでいるのですが、「置き去り」になっている分野もあります。そのためよいニュースと悪いニュースが入り乱れていて、熊本県経済を評価しにくくなっています。
ただ、視野を広げて日本経済を見渡すと悪い材料が目立つので、熊本県内の「よい数字」の不動産関連指標は悪化する可能性があります。そして「悪い数字」が改善する兆候はみつかりません。
熊本県内にある不動産の売却を検討している方は、「いつでも売れるように準備しておく」姿勢でいたほうがいいでしょう。
もし、まだ所有している「中古マンション、中古戸建て、土地」の査定が済んでいなければ、まずはそこから着手しましょう。
- 地方のなかでは好調なほう
- しかし地方経済の好景気はそれほど堅牢ではない
- 「売れるときに売っておく」姿勢でいたほうがいい
熊本県の不動産の全体的な話題
不動産の個別案件をみる前に、熊本県内の不動産全体に影響を与えるニュースを確認しておきます。
不動産を売却する絶好のタイミングは、
- 市場が高値圏にあるとき
- しばらく価格上昇が見込めないとき
- 下落傾向がみえ始めたとき
上記です。この3つの現象は、地元経済や日本経済の動向とリンクしています。
不動産仲介会社に売却を仲介してもらうにしても、売り手(不動産のオーナー)自身が経済情勢を把握していなければなりません。
熊本県内の不動産価格によい影響をもたらすニュースと、悪い影響をもたらすニュースを紹介します。
くまモンとルフィに期待<よいニュース>
経済はイメージによって左右されることがあります。熊本地震が発生した直後は、イメージが悪化して観光が低迷しました。被害が出ていない地域でも、被災地に近いというだけで敬遠されてしまうのです。
そして現在の熊本県のイメージは良好です。復興が進んでいるというニュースが多く発信されているので、むしろ熊本地震を忘れている国民もいるでしょう。被災の記憶の風化という点からするとよいことではありませんが、しかしネガティブなイメージが国民のなかから消えることは、熊本県経済には悪いことではありません。
そして2019年4月、人気漫画「ONE PIECE(ワンピース)」のキャラクターの銅像8体が熊本県内に置かれることが決まりました。ワンピースの作者、尾田栄一郎氏が熊本県出身であることから、復興のシンボルとして設置されます。
主人公ルフィの銅像はすでに熊本市内の県庁舎前に設置済みで、その他の8人のキャラクターとその銅像が置かれる自治体は次のとおりです。
- ウソップ:阿蘇市
- フランキー:高森町
- ロビン:南阿蘇村
- ナミ:西原村
- ブルック:御船町
- サンジ:益城町
- チョッパー:熊本市
- ゾロ:大津町
ゲゲゲの鬼太郎の銅像で観光客を増やした鳥取県のように、熊本県にも全国のワンピース・ファンがやってくるでしょう。
熊本にはもうひとり、強烈なキャラクターがいます。くまモンです。
熊本県は2019年3月に、くまモン関連商品の2018年の売上高が1,505億円に達し、過去最高を更新したと発表しました。
くまモンは都道府県のゆるキャラのなかでは断トツの知名度を誇り、そして「稼ぎ頭」でもあります。
知名度は、地方経済の大きな柱である観光業の命運を握るだけに、2大キャラの存在は熊本県経済によい効果をもたらすでしょう。
熊本空港に待望の鉄道<よいニュース>
熊本空港(益城町と菊陽町)は現在、鉄道でつながっていません。
そこで熊本県は、JR豊肥本線から鉄道の新線を延ばし熊本空港に接続する工事を計画しています。
そしてJR九州が2019年2月、熊本空港への新線の整備費約380億円のうち、最大3分の1を負担すると表明しました。
熊本県の蒲島郁夫知事は「空港周辺の混雑が改善する」とコメントしています。空路と鉄路がつながることは、地方経済にとって大きなインパクトをもたらすでしょう。
JR豊肥本線と熊本空港の間の新線はJR九州ではなく、第3セクターが所有・運営することになります。それにも関わらず、JR九州が大規模出資を応じたことは、意義深いでしょう。
JR九州は地方JRのなかで唯一経営が安定している「珍しい」会社です。豪華列車や不動産事業が軌道にのっているからです。
つまり、熊本空港への新線建設事業は、強い地元企業が地元経済に投資をして、地元経済が潤って企業が儲かる、という好循環となっています。
JRの大津町=阿蘇市間が2020年度開通へ<よいニュース>
熊本地震で失った2本の「大動脈」が2020年度に復旧、開通します。
1本目のつながる動脈は、JR豊肥本線の肥後大津駅(大津町)と阿蘇駅(阿蘇市)の間の27.3キロです。
2020年度内に関連工事が終わり、鉄道が再び通るようになります。
2本目の動脈は、熊本市と阿蘇市を結ぶ国道57号です。阿蘇大橋が崩落したことなどで重要な陸路が不通になっていましたが、阿蘇大橋に代わる長さ525メートルの巨大な橋や周辺のトンネルが「異例のスピードで」(国土交通省熊本河川国道事務所)で完成に近づいています。
大動脈の再開通は、復興の象徴になるので熊本県経済には当然プラスに働きます。
ついに熊本県経済に「陰」が現れる<悪いニュース>
続いて、熊本県内の不動産価格に悪い影響を与えかねないニュースを紹介します。
財務省九州財務局は2019年4月に、熊本県内経済情勢報告を公表しました。総括判断は「生産の一部に弱さもみられるが、緩やかに回復している」とし、前回の2019年1月の判断を据え置きました。
「据え置き」ではありますが、前回の総括判断には「生産の一部に弱さもみられるが」が含まれていませんでした。この言葉は明らかにネガティブ・ワードなので、今回の判断は「下落傾向が見え隠れする据え置き」ととらえるべきでしょう。
個人消費、雇用情勢、設備投資、企業収益、住宅建設は「横ばい」でしたが、生産活動が前回の「緩やかに拡大しつつある」から今回の「拡大に向けたテンポが緩やかになっている」へと下降しました。
そして熊本県経済の先行きは、中国経済の不確実性と人手不足感の高まりといった、回復の動きを制約する要因があるため、下押しリスクに注意する必要がある、としています。
新設住宅着工戸数の減少が意味すること<悪いニュース>
熊本県内の新設住宅着工戸数は、2018年11月に約1,800戸を記録したものの、そこから3カ月連続で前月を下回り、最新の2019年2月は約1,200戸となっています。わずか3カ月で3割以上減っています。
日本人には新築志向が強いという特性があり、中古住宅というだけで購入候補から外してしまう人が少なくありません。すなわち、新設住宅着工戸数が落ち込んでいるということは、それより先に中古住宅の市場が縮小している可能性があります。
後で中古マンションと中古戸建ての価格動向を確認しますが、下落兆候はすでに表れています。
一喜一憂せず冷静に情報を獲得しよう
熊本県は今、全国的に注目を集めている県のひとつなので、経済関連だけでも、よいニュースと悪いニュースが入り乱れています。
不動産オーナーはこのような情報を集めなければなりませんが、一喜一憂することなく、それらのニュースが自分の不動産価格にどのように影響するかを予測しながら「絶好の売り時」をつかんでください。
それでは次に、不動産の種類ごとに熊本県内の価格動向をみていきましょう。
熊本県の中古マンションの売買状況
熊本県内の中古マンションの売買状況をみていきましょう。
全国指定流通機構連絡協議会が運営する不動産取引情報提供サイト「レインズマーケットインフォメーション」(以下、レインズ)が、熊本県内全域と熊本市内の中古マンションの価格動向を公表しています。
まずは熊本県内全域の価格動向を紹介します。
レインズ 熊本県全域 中古マンション |
2017年6月から2017年8月 | 2017年9月から2017年11月 | 2017年12月から2018年2月 | 2018年3月から2018年5月 | |
---|---|---|---|---|---|
合計成約件数(件) | 43 | 51 | 61 | 67 | |
平均成約価格(万円) | 1,432 | 1,606 | 1,413 | 1,632 | |
平均m²単価(万円/m²) | 20 | 21 | 19 | 20 | |
平均専有面積(m²) | 69 | 70 | 68 | 70 | |
2018年6月から2018年8月 | 2018年9月から2018年11月 | 2018年12月から2019年2月 | 2019年3月から2019年5月 | 2017年6月比 | |
合計成約件数(件) | 75 | 69 | 84 | 59 | 37% |
平均成約価格(万円) | 1,409 | 1,307 | 1,610 | 1,579 | 10% |
平均m²単価(万円/m²) | 19 | 19 | 22 | 21 | 4% |
平均専有面積(m²) | 67 | 67 | 70 | 74 | 8% |
成約件数は「2017年6~8月」の43件から、「2019年3~5月」の59件へと37%も増加しています。中古マンション市場が拡大していることがわかります。
また平均成約価格も同じ時期、1,432万円から1,579万円へと10%上昇しています。平均平方メートル単価も20万円/平方メートルから21万円/平方メートルへと4%増となっています。
この数字だけをみると、市場が拡大しているうえに価格も上昇しているので、熊本県内の中古マンションのオーナーは「もう少し値上がりするのを待ちたい」と考えたくなるでしょう。
しかしこの表のなかには、売却を急ぎたくなる数字も含まれています。
それは「2018年3~5月」と「2019年3~5月」の直近1年間の比較です。この期間、成約件数は67→59件(△12%減、△はマイナス)、平均成約価格は1,632→1,579万円(△3%減)と下落しています。
中古マンションのオーナーは、この点を十分警戒する必要があります。
以下は、熊本市内のみの中古マンションの価格動向です。この数字から熊本県全域の中古マンションの価格動向は、ほぼ熊本市内の動向であることがわかります。
例えば「2019年3~5月」の熊本市内の成約件数は56件ですが、これは熊本県内全域の59件の95%を占めます。
レインズ 熊本市内のみ 中古マンション |
2017年6月から2017年8月 | 2017年9月から2017年11月 | 2017年12月から2018年2月 | 2018年3月から2018年5月 | |
---|---|---|---|---|---|
合計成約件数(件) | 42 | 50 | 60 | 63 | |
平均成約価格(万円) | 1,411 | 1,604 | 1,402 | 1,639 | |
平均m²単価(万円/m²) | 20 | 21 | 19 | 20 | |
平均専有面積(m²) | 68 | 70 | 68 | 70 | |
2018年6月から2018年8月 | 2018年9月から2018年11月 | 2018年12月から2019年2月 | 2019年3月から2019年5月 | 2017年6月比 | |
合計成約件数(件) | 73 | 69 | 84 | 56 | 33% |
平均成約価格(万円) | 1,421 | 1,307 | 1,610 | 1,586 | 12% |
平均m²単価(万円/m²) | 20 | 19 | 22 | 21 | 5% |
平均専有面積(m²) | 67 | 67 | 70 | 74 | 9% |
それでは次に、熊本県内の中古マンションの個別案件をみていきましょう。
熊本市中央区水前寺公園の9階90平方メートル3LDKが3,690万円
熊本市中央区水前寺公園にある10階建て全54戸のマンションの9階、90平方メートル3LDKの部屋が3,690万円で売りに出ています。2015年1月完成です。
エントランスに入る前のアプローチの脇にはたくさんの木々が植えられていて、住人や訪問客を優しく迎え入れてくれます。エントランスは派手さこそないものの、デザインセンスが光ります。床材や壁材は明らかに質が高いものを使っています。
90平方メートルもありながら3室しか取っていないので、リビングダイニングは広々しています。そして床面は普通のフローリングではなく、鏡面加工が施されています。
リビングダイニングとベランダを仕切るのは壁ではなく、ガラスが天井から床まで張られた「掃き出し窓」です。そのため日当たりは申し分なく、眺望も楽しめます。シンク、トイレ、浴槽の水回り設備は、どれも凝ったデザインで高級感があります。
このマンションが建つ中央区水前寺公園地区には、路面電車の駅が国府駅、水前寺公園駅、市立体育館駅と3つもあります。すぐ近くに熊本県庁と熊本県警本部があり、官庁街を形成しています。JR豊肥本線・新水前寺駅も半径1キロ圏内にあり、住環境は申し分ありません。
9階、90平方メートル、築浅、質感、住環境とそろっている物件なので3,690万円は納得の価格といえるでしょう。
熊本市西区春日1丁目のタワマンの6階95平方メートル3LDKが3,880万円
熊本市西区春日1丁目にある36階全225戸のタワーマンションの6階、95平方メートル3LDKの部屋が3,880万円で売りに出ています。2012年2月完成です。
熊本駅前は高いビルがあまりないので、このマンションがランドマークになっています。ここに住むことはひとつのステイタスになります。
95平方メートルで3LDKなので、リビングダイニングは広々としています。そしてリビングダイニングとバルコニーの間には掃き出し窓が採用されています。ただシステムキッチンはやや小ぶりでシンプルなものです。洗面台のデザインは凝ったものですが、浴槽とトイレの設備は一般的なものです。
「36階建ての6階」と聞くと低く感じるかもしれませんが、周辺に視界を遮る建物がないので、この部屋のバルコニーからでも近くを流れる坪井川と白川がつくる水辺の景色を楽しむことができます。
そして圧巻はエントランスです。225戸のスケールメリットを活かし、とても広く豪華なつくりです。素敵なエントランスを共有できることは、タワマンに住む醍醐味のひとつです。
西区春日1丁目はJR熊本駅東口に広がる地区で、周辺には商業施設が並んでいます。幼稚園や小中学校も半径1キロ以内にあるので、生活で不便を感じることはありません。
まだ「築浅」といえる築年数ですので、4,000万円を大きく割り込む価格は好感が持てます。
熊本県の中古戸建ての売買状況
レインズでは熊本県全域の中古戸建ての価格動向を公開しています。
レインズ 熊本県全域 中古戸建て |
2017年6月から2017年8月 | 2017年9月から2017年11月 | 2017年12月から2018年2月 | 2018年3月から2018年5月 | |
---|---|---|---|---|---|
合計成約件数(件) | 46 | 30 | 41 | 54 | |
平均成約価格(万円) | 1,885 | 1,962 | 2,115 | 2,225 | |
平均土地面積(m²) | 201 | 235 | 194 | 281 | |
平均建物面積(m²) | 106 | 119 | 102 | 119 | |
2018年6月から2018年8月 | 2018年9月から2018年11月 | 2018年12月から2019年2月 | 2019年3月から2019年5月 | 2017年6月比 | |
合計成約件数(件) | 39 | 41 | 39 | 28 | -39% |
平均成約価格(万円) | 2,303 | 2,016 | 1,958 | 1,711 | -9% |
平均土地面積(m²) | 224 | 228 | 204 | 201 | 0% |
平均建物面積(m²) | 108 | 109 | 107 | 116 | 10% |
成約件数が「2017年6~8月」の46件から「2019年3~5月」の28件へと△39%も減少しています。中古戸建て市場が縮小していることは明らかで、直近1年間の比較では「2018年3~5月」の54件から「2019年3~5月」の28件へとほぼ半減しています。
平均成約価格も「2017年6~8月」の1,885万円から「2019年3~5月」の1,711万円へと△9%減となっています。「2018年6~8月」から3期連続で下落しているのも気になります。
熊本県内に売却用の戸建てを保有している方は、すぐに不動産仲介会社に連絡を取り、少なくとも査定だけは済ませておいたほうがいいでしょう。
査定額さえわかれば資金計画を立てることができますし、すぐに売却活動に着手することができます。
熊本県内の中古戸建ての価格動向は「とても悪い数字」といえます。「売れ残り」や「投げ売り」になる前に対処しましょう。
それでは次に、中古戸建ての個別案件をみていきます。
熊本市西区稗田町の199平方メートル6SLDKが3,980万円
熊本市西区稗田町にある軽量鉄骨2階建て、土地面積515平方メートル、延べ床面積199平方メートル6SLDKの戸建てが3,980万円で売りに出ています。1995年3月完成です。
広い敷地には庭木が所狭しと植えられていて、深い緑にホッとします。裏庭は芝生が植えられていてゴルフのスイング練習をしたら気持ちいいでしょう。カーポートは普通車を3台停めることができます。
建物の外観はとてもきれいで、またモダンなデザインなので、築20年をゆうに超えている物件とは思えません。軽量鉄骨造りが活きています。
これだけ広くて立派な戸建でありながら、この住宅が建っている西区稗田町は郊外ではありません。JR熊本駅までは道路距離で5キロほど、自動車で15分です。また、最寄りのJR鹿児島本線・上熊本駅までは道路距離で1.5キロです。
すぐ近くに坪井川が流れていて、その河川敷には坪井川緑地や坪井遊水公園があり、地域の憩いの場になっています。
保育園や学校も周囲に多くあり、名門・熊本大学教育学部付属中学も500メートルの場所にあります。そのため塾も多く、絶好の教育環境といえます。
この条件で4,000万円を切る値段の戸建てが買えるのは、地方都市の特権といえるでしょう。
合志市須屋の豪邸が9,800万円
豪邸を紹介します。
合志市須屋にある軽量鉄骨2階建て、土地面積573平方メートル、延べ床面積237平方メートル6LDKの戸建てが9,800万円で売りに出ています。2013年8月完成です。
見るからに豪華な建物ですが、南欧風のオレンジ色の屋根が温かみを感じさせます。壁の色が薄いベージュなので威圧感がありません。車を入れるガレージは住宅とつながっていて、雨に濡れずに家と車を行き来できます。
住宅のなかに入ると、広い玄関に圧倒されます。リビングダイニングに行く途中に吹き抜けスペースと階段があります。そしてリビングダイニングに入ると、その広さと、素敵なアイルランドキッチンにまた驚かされるでしょう。
リビングダイニングから庭に取り付けられたデッキに出ることができ、天気のいい日にはバーベキューを楽しむことができます。
合志市は熊本市に接するベッドタウンです。この豪邸が建つ合志市須屋は、地区全体が住宅街になっています。須屋地区内には熊本電鉄の新須屋駅、須屋駅、三ツ石駅、黒石駅、熊本高専前駅、再春荘前駅があります。
また地区内に国立病院機構熊本再春医療センターがあり、さらに熊本機能病院や菊南病院も近くにあります。幼稚園、小学校、中学校も充実しています。
飲食店、ドラッグストア、銀行支店などが建ち並び、買い物に不便を感じることはありません。
この地区で約1億円の豪邸に住むことは勇気が要るかもしれません。「名士」や「成功者」のための住宅といえるでしょう。
熊本県の土地の売買状況
冒頭で、熊本県内の不動産関連の指標には「よい数字」もある、と紹介しました。熊本県の2018年の公示地価はまさに「よい数字」でした。
熊本地震からの復旧・復興が進み、熊本市圏の土地の価格に回復傾向がみられます。
熊本県全用途、23年ぶり上昇、0.3%増
2018年の熊本県の公示地価の平均変動率(前年比)は次のとおりです。( )内は2017年の数字です。
- 全用途:0.3%増(△0.2%減)
- 住宅地:0.0%横ばい(△0.4%減)
- 商業地:1.5%増(0.1%増)
全用途は23年ぶりの前年比増となりました。
住宅地は横ばいでしたが、2017年まで20年連続で下落していたので、これでも「よい数字」といえます。
そして商業地は2年連続の増加となりました。
いずれも項目も熊本地震による復興需要が後押ししました。
全国平均と九州・沖縄圏と熊本県の2018年の平均変動率を並べてみましょう。
全国平均▲0.3%減、九州・沖縄圏0.1%増、熊本県0.0%横ばい
全国平均1.1%増、九州・沖縄圏1.2%増、熊本県1.5%増
熊本県の住宅地の平均変動率は、全国平均を上回り、商業地は全国平均も九州・沖縄圏も上回りました。さらに、2018年の住宅地の平均変動率の高さランキングで、熊本県は全国10位でした。商業地も10位でした。
価格に「力強さ」がある
熊本県の公示地価には力強さもみられます。震災前の水準を超えているのです。
例えば、2014年の住宅地最高額地点は「熊本市中央区新屋敷1丁目10番12」の161,000円/平方メートルでしたが、2018年の熊本県内の住宅地で最も高額だった地点は、「熊本市中央区新屋敷1丁目10番14外」の180,000円/平方メートルで、12%も上昇しています。
商業地の最高額地点は、2014年も2018年も「熊本市中央区下通1丁目3番3」でしたが、価格は1,340,000円/平方メートルから1,950,000円/平方メートルへと46%も上昇しています。バブル級の上昇率といってよいでしょう。
熊本市の一強状態、地方との格差拡大
熊本県の公示地価の数字をよくしているのは、熊本市の一強状態です。熊本市の2018年公示地価の住宅地は1.2%増、商業地は5.9%増でした。
その一方で、県内の地方市町村は下落が止まりません。
住宅地の平均変動率の下落率1位地点は、「天草市有明町大島子字江口2664番2」で△4.6%減でした。前年は△3.7%減でしたので、下落スピードが加速しています。
商業地の平均変動率の下落率1位地点は、「山都町馬見原字林ノ後830番5」で△5.3%減でした。前年は△3.4%減なので、こちらも下落が止まりません。
平均変動率の上昇幅が大きいグループをみると、熊本市、大津町、益城町、嘉島町といった自治体名が並びます。いずれも熊本市と隣接するか近隣の自治体ばかりです。
一方、平均変動率の下落幅が大きいグループは、離島の天草市、熊本市から最も遠い自治体のひとつである球磨村、内陸部の五木村、山間部の山都町と、熊本市圏から離れた自治体ばかりです。
熊本市内でも格差「中央区一強」
熊本市は、中央区、東区、西区、南区、北区の5区で構成されていますが、このなかでも格差があります。中央区の一強状態です。
2018年公示地価の各区の平均変動率と平均価格は次のとおりです。
- 中央区:2.4%増、104,500円/平方メートル
- 東区:1.7%増、68,700円/平方メートル
- 西区:0.3%増、54,900円/平方メートル
- 南区:1.0%増、41,300円/平方メートル
- 北区:0.6%増、45,200円/平方メートル
最高値の中央区の104,500円/平方メートルは、最安値の南区の41,300円/平方メートルの2.5倍です。
- 中央区:11.1%増、509,800円/平方メートル
- 東区:2.4%増、90,700円/平方メートル
- 西区:1.2%増、200,100円/平方メートル
- 南区:0.7%増、59,500円/平方メートル
- 北区:0.9%増、64,400円/平方メートル
最高値の中央区の509,800円/平方メートルは、最安値の南区の59,500円/平方メートルの8.6倍です。
南区にはJR鹿児島本線の駅が3つもあるほか、病院も、済生会熊本病院、御幸病院、桜十字病院、熊本光洋台病院、にしくまもと病院、あきた病院など多数あり、住環境は決して悪くありません。
しかし中央区には、九州新幹線とJR線の共通駅である熊本駅と、熊本市医師会熊本地域医療センター、九州記念病院、江南病院、くまもと乳腺胃腸外科病院、そして九州のシンボルである熊本城があります。さらに熊本県庁も熊本県警察本部も熊本市役所もメガバンクの支店も路面電車の大部分も中央区にあります。
中央区のこの強大な経済的な「引力」に、元々大きくはない地方経済が吸い寄せられてしまっています。それで県庁所在地の熊本市であっても、南区のような郊外部分は経済的に弱い地域になってしまうのです。
まとめ~地方の好景気は疑ってかかる
熊本県経済は、地方のなかでは好調なほうです。したがって、不動産価格の指標でよい数字も存在します。しかし悪い数字もあります。
売却用の不動産を持っていると、つい、よい数字を信じたくなります。しかし地方経済の好景気はそれほど堅牢ではありません。
また日本全体の経済は2019年に入って下落に転じました。好景気は東京・大阪・名古屋から始まって、不景気は地方から始まります。したがって熊本県経済がいつ悪化に転じたとしても不思議ではありません。
熊本県内の不動産オーナーは「売れるときに売っておく」姿勢でいたほうがいいでしょう。
- 関連ページ:神奈川県の不動産売却時の相場
- 関連ページ:沖縄県の不動産売却時の相場
- 関連ページ:佐賀県の不動産売却時の相場