自宅として使っているマンションを、できるだけ高く売却するには、いくつかの段取りを踏む必要があります。
事前の準備や、売却を仲介してもらう不動産会社選び、そして売却した後にもやるべきことがあります。
やることは多いのですが、それぞれの作業はそれほど難しくありません。1つひとつ階段をのぼるように着実に進めていってください。

マンションのイメージ画像

事前の準備

マンションの売却というと難しく聞こえるかもしれませんが、モノを売るだけですのでただ処分するだけなら簡単です。値札をつけて買い手がついたらお金をもらってマンションを渡すだけです。
しかし、適正価格で売却するには事前の準備は欠かせません。ここを怠ると買いたたかれて、相場より安く売ることになり損するかもしれません。

なぜ「今」「売る」のかを考える

事前準備ではまず、なぜ今売るのかを考えましょう。その際、「今」と「売る」にわけて考えてみてください。
なぜ貸すのではなく売るのでしょうか。例えば、新しいマンションを購入する場合であればその頭金が必要なので、現金をつくるために売ることには躊躇がないでしょう。
しかし、現金をすぐに手に入れる必要がない場合なら、マンションを貸すことができれば不労所得が得られます。マンションを貸すことは、不動産投資になります。すでに株式などに投資している方であれば、不動産投資を始めれば分散投資になり、投資リスクを減らすことができます。
このように、売るか貸すのかは慎重に見極める必要があります。

そして、なぜ今なのかも考えましょう。いまのご時世バブル期のように不動産価格が大幅に値上がりすることは期待できないので、マンションを含む不動産は、売却するなら早い方がよいという原則があります。
しかし、仕事が忙しかったり、近く転勤する可能性があったり、家族の介護をしていたりすると、じっくり腰を据えて売却の手続きをすることができなくなります。判断が鈍ってしまうかもしれません。その場合、今でないほうがいいのかもしれません。
「なぜ売却なのか」「なぜ今なのか」に明確に答えられるようになったら、次は住宅ローンの残高を調べましょう。

住宅ローンの残高を調べる

売却するマンションを、住宅ローンを使って購入していたら、残高を調べる必要があります。なぜなら、マンション売却が成功したといえるのは、「マンションの売却額≧住宅ローン残高+売却コスト」になったときだからです。
住宅ローン残高がはっきりしていないと、マンションの売却額を決めることもできませんし、マンションの売却額によって変動する売却コストも決まりません。
マンション売却は、「住宅ローン残高ありき」な部分があります。

さらにマンションを売却するには、事前にローン残高を全額返済し、抵当権を抹消しておかなければなりません。つまり借金をなくしておく必要があるのです。
いま住んでいるマンションを売って新しいマンションを買い、そこに引っ越すのであれば、買い替えローンを組み、残高を返済することができます。
ただし、買い替えローンは、古い借金(残高)に加えて新しい借金をすることになるので、返済計画を立て直さなければなりません。
古い借金をそのままにするのか、預貯金を取り崩したり株式を売却したりして得たお金で減らすのか、大体の方針を立てておいたほうがいいでしょう。
ただ返済計画は、売却額によって古い借金の額が変わってくるので、マンションの売却額が決まった時点でまた練り直す必要があります。

必要書類を用意する

マンションを売却するには、登記識別情報(旧・登記済権利証)、購入時の売買契約書、重要事項説明書、住宅ローンの支払明細書といった書類が必要になります。
売却手続きが進むと慌ただしくなるので、これらの書類は事前に手元に用意しておいたほうがいいでしょう。

自分のマンションの魅力を把握しておく

事前準備のなかで自分のマンションの魅力を把握しておくことはとても大切です。購入希望者が現れたときに、「こんなにいい物件ですよ」と言えるか言えないかで、売却額が違ってきます。
自分のマンションの魅力の把握の仕方は、後述する「販売活動」のところで詳しく解説します。

不動産会社に査定を依頼する

事前準備が整ったら、不動産会社に売却するマンションを査定してもらいましょう。そのとき次の3点に注意してください。

  • 査定は相場感を持つために行う
  • 正式な売却仲介依頼をする「不動産会社選び」とは別に行う
  • 複数の不動産会社に査定依頼を出し「不動産会社を査定」する

ここもとても重要なので、1つずつ詳しくみていきましょう。

査定は相場感を持つために行う

不動産会社に査定を依頼するのは、自分のマンションの大体の値段を知るためです。つまり、相場感を持つためです。
初めてマンションを売る方は、「違った財布に見える錯覚」に注意してください。
日常生活では、例えば「20万円のバッグを買う」ときは大きな決断をするはずです。しかしマンション売却という非日常的な場面では、「2,020万円で売ることも2,000万円売ることも同じ」に感じてしまうのです。
しかし両方とも20万円には変わりはないので、家計に与えるインパクトは同じです。しかし、人は「日常生活の財布」と「マンションを売るときの特別な財布」の2つの財布が存在すると錯覚してしまうのです。もちろん現実は、財布は1つしかありません。

こうした錯覚を起こさないためには、相場感を「1,000万円単位」でも「100万円単位」でもなく「10万円単位」で持っておく必要があります。

「査定依頼」は正式な売却仲介依頼をする「不動産会社選び」とは別に行う

不動産会社に査定を依頼することと、売却の仲介を正式に依頼する不動産会社選びは、別のことと、とらえておいたほうがいいでしょう。
不動産会社にマンションの査定を依頼するときは、「まだ売るかどうか決断できていないのですが、相場を知りたいので査定を依頼したい」と伝えましょう。
査定依頼からなし崩し的に売買仲介の正式依頼につなげてしまうと、価格交渉をしっかり行うことができなくなってしまいます。「価格」には売却価格だけでなく、手数料価格も含みます。
不動産会社の担当者には、「今回は査定だけをお願いしたい。売買の仲介依頼は、後日あらためて検討する」ということをしっかり伝えましょう。

複数の不動産会社に査定依頼を出し「不動産会社を査定」する

査定では、必ず複数の不動産会社に声をかけてください。少なくとも3社、できれば5社に依頼したいところです。
というのも、不動産会社には得手不得手があります。例えばマンション売買を多く手掛ける不動産会社でも、高級マンションの取扱いは得意だが、安い物件は苦手ということもあります。
5社に査定を依頼すると、最高価格と最低価格で100万円以上の差がつくこともあります。

そして、複数社に査定を依頼することで、売主は「不動産会社の実力を査定」することができます。
不動産会社の実力は、物件を高く買ってくれる買主を見つけることだけではありません。売主は自分のタイミングで売却スケジュールを組みたいと考えますが、「できる担当者」はそのような意向を最大限汲んでくれます。

マンション売却は、よほどの好物件でない限り数カ月以上かかることは珍しくありません。半年、1年かかることもあります。つまり売主は長丁場をともに走ってくれる「伴走者=不動産会社」を探さなければならないのです。
売主が「まだ売るかどうか決断できていないのですが、相場を知りたいので査定を依頼したい」と言っている段階でも、真剣に取り組んでくれる担当者は信頼できるでしょう。

不動産会社を選ぶ

自分のマンションが大体いくらくらいで売れるのかがわかり、さらに、売却の仲介を依頼できそうな不動産会社の目途が立ったら、正式に不動産会社を選ばなければなりません。
マンションの売主が不動産会社を選ぶとき、媒介契約の種類に注意しなければなりません。媒介契約には3形態あって、それぞれにメリットとデメリットがあります。
ちなみに媒介契約は、マンションの売買契約とは別物です。

媒介とは仲介のこと

媒介契約の媒介とは、仲介のことです。媒介は法律用語で、仲介が一般用語と覚えておいてください。
不動産会社による媒介(=仲介)業務は、主に3つあります。
1つめは<商品化活動>です。マンション売却では、中古マンションが商品になりますが、売主(オーナー)が「売りたい」と思っているだけでは商品になりません。売主が不動産会社に正式に媒介を依頼した瞬間に、マンションは商品になるのです。

2つめは<販売活動>です。マンションも商品なので、宣伝しなければ買い手はつきません。チラシを配布したり、ダイレクトメールを送信したりします。販売活動は、期間が短ければ短いほど、売主にも不動産会社にもメリットになります。

不動産会社による媒介業務の3つめは<契約と引き渡し活動>です。中古マンション売買では、売主も買主も不慣れなことが多いので、その双方だけでは売買契約や引き渡しの段取りがスムーズに運ばないことがあります。そこで不動産会社が間に入り、売主、買主双方が確認したとおりに進むようフォローするのです。

売却仲介を1社に頼むか、複数社に頼むか

不動産会社に売却を仲介してもらう場合、1社に絞って売却を依頼する方法と、複数社に売却を依頼する方法の2とおりあります。

もし、信頼できる不動産会社に出会えることができたら、1社に絞ったほうがいいでしょう。そのほうが売主に選ばれた不動産会社の販売活動へのモチベーションが高まります。
一方で1社に絞るということは、他社を頼らないことを意味します。1社と契約するとその契約期間中「他社にも仲介を依頼する」ということはできません。売却後も「もし他社に頼んでいたら、もっと高く売ることができたかもしれない」という気持ちが残る可能性があります。

その点、複数の不動産会社に売却仲介を依頼すれば競争が生まれるので、最高値で買ってくれる買主を見つけてきた不動産会社を選ぶことができます。
しかし、不動産各社のモチベーションが高まらないデメリットもあります。販売活動が停滞して、最悪、売れ残ることもあります。

購入希望者が短期間でたくさんの購入希望者が現れそうな優良マンションを売るときは複数社に売却仲介を依頼し、売ることが難しそうなマンションは1社に絞るというのをひとつの目安にしてみてはいかがでしょうか。

「一般」「専任」「専属専任」から選ぶ

不動産会社に仲介(=媒介)を正式に依頼するには、媒介契約を結ばなければなりません。
媒介契約には、

  • 一般媒介契約
  • 専任媒介契約
  • 専属専任媒介契約

の3形態があります。
複数社に売却仲介を依頼できるのは、一般媒介契約です。
さらに一般媒介契約なら、売主が自分で売却先を見つけたとしても、不動産会社を経由しなくていいので、売却仲介手数料を支払う必要がありません。

一方、不動産会社を1社に絞り、他社に仲介を依頼しない場合は、専任媒介契約か専属専任媒介契約を結びます。
専任媒介契約では、売主が自分で売却先を見つけても不動産会社を経由しなくてもかまいません。しかし専属専任媒介契約の場合、売主が自分で売却先を見つけたとしても、不動産会社を経由しなければなりません。つまり売却先が親族だったとしても、不動産会社に手数料を支払って仲介してもらわなければならないのです。

ただ専任媒介契約も専属専任媒介契約も、1回の契約期間は3カ月以内と決まっています。それより長く契約することはできません。
もし継続して仲介を依頼したい場合は、3カ月後に再び契約を結び直す必要があります。

販売活動をする

不動産会社にマンション売却の仲介を依頼すれば、原則、販売活動を丸投げすることができます。しかし、売主が独自に販売活動をすれば、売却額をアップさせることが可能になります。
ポイントは次の2点です。

  • 購入希望者に気に入られるようにする
  • 内覧会をする

購入希望者に気に入られるようにする

マンションを売るには、なにより購入希望者に気に入ってもらわなければなりません。ですので、自分のマンションの魅力を把握しておきましょう。
部屋の広さや間取りのよさ、築年数の浅さ、最近リフォームしたばかりのキッチン、最寄り駅までの近さ、といったことを売主は十分把握していると思います。
しかし、学校や病院、介護施設、公共施設までの近さ、買い物環境の充実度、分譲主(ディベロッパー)のブランド力、マンション内の住民の「民度」の高さなどは、言われなければなかなか気がつきません。

こうした魅力は、メモに書き出しておきましょう。そうすることで、不動産会社の担当者にも「だからもう少し高い価格で買ってもらえるよう、販売活動に力を入れてほしい」と依頼できます。
また、内覧会を開いた際、内覧に訪れた人に魅力を存分にPRできます。例えば、子供の学校を気にかけている購入希望は介護施設の情報は気にしません。一方、介護施設のことを気にする購入希望者は病院のことが気になります。
つまり売主は、内覧会にやってきた購入希望者の「属性」に応じてセールストークを変える必要があります。

自分のマンションの魅力の把握は、売却活動を始める事前準備の段階で済ませるようにしましょう。

内覧会をする

内覧会は必ず開催しましょう。内覧会を開く前には、とにかく掃除を徹底してください。壁紙のはがれや日焼けしたカーテンは、内覧会参加者に「ここには住みたくない」と思わせてしまいます。
また内覧会参加者は、台所や洗面所、浴室、トイレといった水回りを特に注視します。物品が雑多に並べられているとそれだけで購買意欲が落ちます。生活感を出さないようにしておくことが好感度を上げるポイントです。
内覧会の段取りは、不動産会社と相談することになります。

売却価格を決める

売却価格は、売主が決めます。売主が不動産会社の担当者に「〇千万円で売却したいです」と伝えることになります。
すでにこの段階では、相場も把握していますし査定も受けているので、あとは「マンションの売却額≧住宅ローン残高+仲介手数料を含む売却コスト」を考慮して決めればいいだけです。
売却価格の決め方のコツは、「不動産会社の査定額と自分が調べた金額が同じぐらいであれば、その額にする」ことです。
高く設定しすぎると売れ残ってしまいます。一般的には、中古マンションはいま、買い手市場といわれています。つまり売主がやや不利な状況です。

売却する

マンションを買いたいと思った購入希望者は、売買を仲介する不動産会社に「不動産購入申込書(買付)」という書類を出します。これは購入希望者の希望条件にすぎないので、まだこの内容で買うことを決めたわけではありません。
しかし売主のほうで、売却額を含め購入希望者が提示した購入条件に支障がなければ、素早く売る決心を固めましょう。このとき「もう少し粘ればもっと高く買ってくれる人が現れるのではないか」と考えるのは危険です。

売却することを決めたら、売主と買主が話し合ってマンションの引き渡し日を決めます。
そして付帯設備表をつくります。付帯設備表とは、マンション内の設備の種類や痛んでいる箇所などの記録簿です。「この状態で引き渡します」という約束のようなものです。例えば、売主がマンションから引っ越すときにクーラーを取り外していくときは、付帯設備表にクーラーがあることは記載しません。

また売主は、買主の住宅ローン事前審査を確認しましょう。買主が住宅ローンを使うことができなければ、最悪、マンションを引き渡したのに代金が振り込まれないことになります。
事前審査関連の書類は、不動産会社の担当者が「確認した」と言ったとしても、コピーではなく実物を見せてもらうようにしましょう。

これらの段取りが整ったら、売買契約を結びます。売買契約書などは不動産会社が用意してくれますが、契約書の文面には必ず目をとおしておいてください。

売却後にすること

マンションを引き渡し、代金が振り込まれたら、売却は完了です。
ただ売主にはもう少し「やること」があります。
まず、売ったマンションを購入したときの住宅ローンの残高を返済しましょう。そのためには買主からの代金の振り込み日時を正確に確認しておく必要があります。

また、固定資産税の清算が必要になります。
固定資産税は、マンションの1月1日現在の所有者が、その年の1年分の税を税務署に納めなければなりません。例えば2月1日にマンションを売却したとしても、固定資産税は売主が負担します。
しかし理屈上は、2月2日以降分の固定資産税は、買主が負担すべきです。
そこで売主は買主から、2月2日以降分の固定資産税分のお金をもらうことになります。これが固定資産税の清算です。
ただ普通は、固定資産税の清算は、売買代金と相殺されます。

一括見積もり査定サイト

マンションの売却を考えているなら、まずはいろいろな不動産会社に簡単にアクセスすることができる「一括見積もり査定サイト」を使うことをおすすめします。
一括見積もり査定サイトを利用するには、サイトに登録し、複数の不動産会社からの連絡を待ちます。
一括見積もり査定サイトには、「地域密着型の会社を集めたタイプ」「大手不動産会社を集めたタイプ」「興味本位で値段を知りたいだけの利用を歓迎するタイプ」などがあるので、自分のケースにマッチしたサイトを選べば最適な不動産会社を選ぶことができます。
マンションを高く売るにはできる限り多くの情報があったほうがいいので、一括見積もり査定サイトは売主の味方になってくれるはずです。