静岡県はさまざまなメディアで「日本一住みやすい街」などと高く評価されています。それもそのはず。富士山、熱海、伊豆など世界的に知られた観光地だけでなく、ホンダやヤマハやスズキを生んだ浜松市もあります。しかも太平洋に面した風光明媚な土地が広がり、気候も穏やかです。
魅力はまだあります。東京・神奈川と大阪・名古屋を結ぶ4本の大動脈「JR東海道線、東海道新幹線、東名高速道、新東名高速道」はすべて静岡県を走っています。
静岡県は経済活動するにも便利な場所にあるのです。

これだけの好条件がそろうと、昨今の好景気を受けて不動産価格が値上がりしてそうですが、そうはなっていません。
意外にも静岡県の2018年の公示地価の前年比(平均変動率)は、全国平均を下回っているのです。
公示地価は中古マンションや中古戸建ての価格にも影響を与える指標だけに、売却を検討している不動産オーナーは、売るタイミングを測りかねているのではないでしょうか。

個人が自分の土地や中古不動産を適正価格で売るには、不動産がある地域のローカル情報を収集するだけでは足らず、静岡県経済に目を配る必要があります。
この記事では、静岡県の不動産オーナーにとって有益な情報を紹介していきます。

静岡県の不動産の全体的な話題

経済情勢は不動産価格に大きな影響を与えます。したがって静岡県内の不動産を売却しようとしている不動産オーナーは、静岡県経済をウォッチ(観察、観測)する必要があります。

静岡県経済は緩やかに回復している(2018年11月分)

静岡県経済産業部は毎月、「静岡県月例経済報告」を公表しています。最新の「2019年1月号(2018年11月分)」によると、県内経済は緩やかに回復しています(*)。
この判断の根拠は以下のとおりです。

個人消費 緩やかに持ち直している
設備投資 増加の動きがある
輸出 持ち直しの動きがある
生産 持ち直しの動きがある

個人消費のなかで最も中古マンション・中古戸建て・土地の価格に影響するのは、新設住宅着工戸数です。静岡県の新設住宅着工戸数全体は、3カ月連続で前年同月を上回っています。その内訳は次のとおりです。

分譲住宅 5カ月ぶりに前年同月を下回る
持ち家 3カ月連続で前年同月を上回る
貸家 4カ月ぶりに前年同月を上回る

新設住宅着工戸数は、静岡県民の「住宅購入意欲」と住宅メーカーの「住宅建設意欲」を表すものなので、その好調な数字は、基本的には中古マンション・中古戸建て・土地のオーナーにも歓迎できるものになっています。
ただ、全体が3カ月連続上昇だけでは、それほど強い数字とはいえません。また分譲住宅の減少は、住宅メーカーの建設意欲の減退を意味するので気がかりです。
それというのも、日本人は新築志向が強く、中古住宅をあまり好みません。確かに最近は、お買い得な中古住宅を購入して大改造するリノベーションが話題になっていますが、地方都市にまで浸透しているとはいえません。

そのため住宅需要はまずは新築市場を潤し、その「あまり」が中古不動産市場に流れてくるのです。したがって静岡県のそれほど強くはない住宅需要は、中古市場を潤すには不十分であるとみるべきでしょう。
中古マンション・中古戸建て・土地の売却は、楽観視できない状況です。

*:http://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-030d/documents/getsurei1901.pdf

県内の市町村経済の情勢

続いて、よりローカルな経済情勢をみていきましょう。
以下の表は、静岡県内の「市町村別人口」と「経済活動総生産」と「人口1人当たりの経済活動総生産」の順位表です。人口の多い順に並べました。数字は2015年度のものです。
この表からは静岡県内の市町村経済の特性がよくわかります。

2015年度、静岡県内の「市町村別人口」「経済活動総生産」「1人当たりの経済活動総生産」
  人口
(単位:人)
順位 経済活動総生産
(単位:百万円)
順位 人口1人当たりの経済活動総生産
(単位:円/人)
順位
静岡県 3,700,305   17,292,439   4,673,247  
浜松市 797,980 1 3,012,935 2 3,775,703 23
静岡市 704,989 2 3,237,731 1 4,592,597 15
富士市 248,399 3 1,216,097 4 4,895,740 10
沼津市 195,633 4 849,975 5 4,344,740 16
磐田市 167,210 5 1,241,936 3 7,427,402 4
藤枝市 143,605 6 580,017 9 4,038,976 20
焼津市 139,462 7 563,548 10 4,040,869 19
富士宮市 130,770 8 637,756 8 4,876,928 11
掛川市 114,602 9 661,756 7 5,774,381 7
三島市 110,046 10 399,490 14 3,630,211 25
島田市 98,112 11 383,512 15 3,908,923 21
御殿場市 88,078 12 423,807 12 4,811,720 13
袋井市 85,789 13 411,425 13 4,795,777 14
伊東市 68,345 14 199,876 19 2,924,520 30
湖西市 59,789 15 715,783 6 11,971,809 2
裾野市 52,737 16 269,360 17 5,107,613 9
伊豆の国市 48,152 17 181,001 20 3,758,955 24
菊川市 46,763 18 227,142 18 4,857,301 12
牧之原市 45,547 19 556,056 11 12,208,410 1
長泉町 42,331 20 274,495 16 6,484,491 5
函南町 37,661 21 88,236 28 2,342,893 35
熱海市 37,544 22 135,652 24 3,613,139 26
御前崎市 32,578 23 138,083 23 4,238,534 17
清水町 32,118 24 130,636 25 4,067,383 18
伊豆市 31,317 25 96,883 27 3,093,631 28
吉田町 29,093 26 170,202 21 5,850,265 6
下田市 22,916 27 81,005 29 3,534,877 27
小山町 19,497 28 156,062 22 8,004,401 3
森町 18,528 29 103,244 26 5,572,323 8
東伊豆町 12,624 30 36,647 30 2,902,934 32
南伊豆町 8,524 31 22,532 33 2,643,339 33
西伊豆町 8,234 32 24,980 32 3,033,767 29
河津町 7,303 33 17,232 35 2,359,627 34
川根本町 7,192 34 27,381 31 3,807,199 22
松崎町 6,837 35 19,967 34 2,920,392 31

人口1位の浜松市と経済活動総生産1位の静岡市が2強

静岡県経済を牽引しているのは、人口1位・経済活動総生産2位の浜松市と、人口2位・経済活動総生産1位の静岡市です。それぞれの経済活動総生産は3兆円を超えています。3位の磐田市が1.2兆円なので、静岡市と浜松市の経済の強さは群を抜いています。

県庁所在地の静岡市は、茶、ワサビ、イチゴ、ミカン、水産などの1次産業が強いうえに、製造業も市経済を支えています。
浜松市も農業、水産業の1次産業が強い自治体ですが、経済の柱はなんといってもヤマハ、河合楽器、ローランド(以上、楽器、音楽)、ホンダ、スズキ、ヤマハ発動機(以上、自動車・バイク・機械)などの名門製造業です。

したがってこの2市の不動産価格は、仮に値上がりしないとしても、大幅に値下がりするリスクは低いでしょう。

人口1人当たりの経済活動総生産1位はスズキの工場がある牧之原市、ヤマハ発の磐田市はバランスがよい

人口1人当たりの経済活動総生産とは、経済活動総生産を人口で割った指数で、住民1人が稼ぎだしているお金という意味です。
静岡県内の人口1人当たりの経済活動総生産1位は牧之原市の12,208,410円/人でした。ただ牧之原市の人口は県内19位です。
人口1人当たりの経済活動総生産2位は湖西市の11,971,809円/人で、人口は15位です。
牧之原市と湖西市が強い理由も、やはり自動車産業や機械産業です。スズキは両市に工場を置いています。市の知名度は高くはありませんが、「がっちり」稼いでいる自治体といえます。

また、ヤマハ発動機の本社がある磐田市は、人口5位(約17万人)、経済活動総生産3位(約1.2兆円)、人口1人当たりの経済活動総生産4位(約743万円)と、3項目がそろってベスト5に入っていてバランスが取れています。

これだけ経済基盤がしっかりしている牧之原市、湖西市、磐田市ですので、この3市内にある不動産も大幅下落しづらいでしょう。

ちなみに、楽器をつくっているのがヤマハ株式会社(本社・浜松市)で、バイクやトヨタのエンジンをつくっているのがヤマハ発動機株式会社(本社・磐田市)です。両社の創業者は同じですが、いまでは完全に別個の会社です。ただ双方は株を持ち合っています。

静岡県の中古マンションの売買状況

不動産の種類ごとに動向を探っていきましょう。
まずは静岡県内の中古マンションの売買状況をみていきます。

静岡市、浜松市、熱海市、磐田市に高級物件

下記の表は、不動産会社が公表している静岡県内の中古マンションの平均価格を地域別・延べ床面積別に並べたものです。
中古マンション市場が形成されていない市町もありますが、全体的な傾向をつかむため、全市町を掲載しました。

静岡市と浜松市の中古マンションの売買状況
地区 ~40m² ~50m² ~60m² ~70m² ~80m² ~90m² ~100m² 101m²~
静岡市葵区 475万円 890万円 662万円 1,154万円 2,701万円 1,963万円 3,200万円
静岡市駿河区 362万円 565万円 1,986万円 1,657万円 1,693万円
静岡市清水区 550万円 385万円 1,615万円 1,816万円 1,983万円 2,580万円
浜松市中区 267万円 343万円 854万円 1,187万円 1,911万円 2,120万円 3,163万円 4,719万円
浜松市東区 300万円 300万円 1,418万円 1,940万円 2,097万円 1,850万円 2,820万円
浜松市西区 340万円 825万円 950万円 1,012万円 1,990万円 2,910万円
浜松市南区 1,380万円 920万円 630万円
浜松市北区 155万円 801万円 600万円
浜松市浜北区
浜松市天竜区
沼津市 450万円 1,215万円 736万円 993万円 1,593万円 1,458万円 2,045万円 1,680万円
熱海市 417万円 708万円 640万円 2,313万円 2,886万円 3,642万円 1,795万円 4,227万円
三島市 700万円 1,812万円 1,560万円 2,430万円 1,190万円
富士宮市 780万円 630万円
伊東市 220万円 287万円 501万円 697万円 900万円 904万円 1,102万円 1,497万円
島田市
富士市 500万円 380万円 530万円 1,451万円 2,053万円 2,683万円 2,218万円
磐田市 700万円 4,500万円
焼津市 1,880万円
掛川市
藤枝市 1,450万円 2,880万円 2,980万円
御殿場市 50万円 133万円 540万円 1,460万円 2,687万円 1,915万円 780万円
袋井市
下田市 640万円 600万円 850万円 1,290万円
裾野市 1,890万円 2,580万円 2,547万円
湖西市 400万円
伊豆市 447万円 173万円 240万円 319万円 850万円 750万円
御前崎市
菊川市
伊豆の国市 496万円 429万円 1,340万円 975万円 1,180万円
牧之原市
賀茂郡東伊豆町 254万円 356万円 483万円 518万円 490万円 665万円 1,050万円 1,213万円
賀茂郡河津町
賀茂郡南伊豆町
賀茂郡松崎町
賀茂郡西伊豆町
田方郡函南町 580万円 900万円 1,285万円 830万円 700万円 1,280万円
駿東郡清水町 1,748万円 1,770万円 1,690万円
駿東郡長泉町 1,930万円 2,179万円 2,233万円 2,580万円
駿東郡小山町 97万円 268万円 460万円
榛原郡吉田町
榛原郡川根本町
周智郡森町

静岡市、浜松市、熱海市、磐田市には、3,000万円や4,000万円といった高額な物件が並んでいます。経済が強い地域や全国区の観光地にある高級中古マンションは値下がりしにくいという特徴があります。
この表のなかから、特徴的な物件の詳細を紹介します。

浜松市中区中央1丁目のタワーマンション23階が約1億円

浜松市中区中央1丁目の25階建てのタワーマンションで、23階、延べ床面積101平方メートル2LDKの部屋が9,450万円で売りに出ています。2014年10月に完成しています。

眺望は素晴らしく浜松の夜景を一望できます。101平方メートルという広さがありながら、あえて3LDKや4LDKにしていないのも今風です。その結果、リビングは28帖もあります。アイランドキッチンや洗面台や浴室などの水回りは、最新の設備がおごられています。収納スペースも十分確保されていて、主婦の強い味方になりそうです。
エントランスはまるでホテルのようで、毎日の帰宅が楽しみになるはずです。

そして立地場所の浜松市中区中央1丁目は、JR東海道線と東海道新幹線の共通駅である浜松駅まで500メートルの近さです。近隣には静岡県浜松総合庁舎、静岡銀行浜松中央支店、JA静岡厚生連・遠州病院、浜松市地域総合情報センター、浜松市楽器博物館などがあります。商業施設はヤマダ電機、ビックカメラ、ホテルなどが近くにあります。
このマンションの住人は、浜松市の都市機能をフル活用できるはずです。
立地からもマンションのグレードからも、1億円の価値は十分あるでしょう。

熱海市東海岸町の6階76平方メートル2LDKが7,300万円

熱海市にある2007年完成の6階76平方メートル2LDKの部屋に7,300万円という高値がついていますが、その理由は、この19階建て全76戸のマンションが熱海市東海岸町に建っているからです。

熱海市は今、歴史ある新しい温泉地として注目されています。そのなかでも東海岸町は太平洋に面した超一等地で、このマンションのバルコニーからはサンビーチやヨットハーバーが一望できます。また海上花火大会の会場は、このマンションの目の前です。
JR東海道線と東海道新幹線の共通駅である熱海駅は、500メートル圏内にあります。

そしてマンション内には、入居者専用の温泉大浴場があります。この物件を別荘にしたら、周囲の人たちからうらやましがられるでしょう。

静岡県の中古戸建ての売買状況

静岡県内の中古戸建ての売買状況をみてみましょう。
市場が形成されている101平方メートル以上の平均金額だけ表にしてみました。地方部でも「しっかりした価格」がついています。注目物件を詳しくみていきましょう。

静岡県内の中古戸建ての売買状況(市場が形成されている101平方メートル以上のみ掲載)
地区 101m²~ 地区 101m²~ 地区 101m²~
静岡市葵区 2,610万円 富士宮市 1,813万円 御前崎市 1,042万円
静岡市駿河区 2,722万円 伊東市 1,516万円 菊川市 1,859万円
静岡市清水区 2,313万円 島田市 1,665万円 伊豆の国市 1,572万円
浜松市中区 2,792万円 富士市 2,098万円 牧之原市 2,072万円
浜松市東区 2,726万円 磐田市 1,996万円 賀茂郡東伊豆町 1,150万円
浜松市西区 2,223万円 焼津市 1,935万円 賀茂郡河津町 1,475万円
浜松市南区 2,321万円 掛川市 2,146万円 賀茂郡南伊豆町 1,196万円
浜松市北区 1,865万円 藤枝市 2,261万円 賀茂郡松崎町 695万円
浜松市浜北区 2,787万円 御殿場市 2,660万円 賀茂郡西伊豆町 600万円
浜松市天竜区 1,548万円 袋井市 2,172万円 田方郡函南町 1,538万円
沼津市 2,200万円 下田市 3,636万円 駿東郡清水町 2,697万円
熱海市 3,037万円 裾野市 2,232万円 駿東郡長泉町 2,868万円
三島市 2,456万円 湖西市 2,080万円 駿東郡小山町 1,850万円
伊豆市 1,219万円 榛原郡吉田町 1,340万円
榛原郡川根本町
周智郡森町 1,737万円

浜松市中区富塚町の木造2階166平方メートルが4,980万円

浜松市中区富塚町にある木造2階建て延べ床面積166平方メートル5LDK、土地面積448平方メートルの物件が、4,980万円で売りに出ています。1991年3月に完成したので、そろそろ築30年になります。

広大な土地は立派な壁に囲まれ、ガレージと庭がついています。浜松市中区富塚町は高級住宅街を形成しているので、これだけ立派な家でも周囲にしっかり溶け込んでいます。築年数の割に高額なのは、土地のブランド力のせいでしょう。
中区富塚町の周辺には浜松医療センターや神経科近松病院、小中学校や高校があり、スーパーや洋品店などの小売店も数多く出店しているので住環境は申し分ありません。
さらに佐鳴湖という小さな湖が近くにあり、絶好のウォーキングコースになりそうです。
浜松駅までは道路距離で4.4キロ、自動車で12分ほどです。

三島市佐野見晴台2丁目の木造2階116平方メートル3SLDKが5,600万円

三島市にある2004年4月完成の木造2階建て3SLDKの中古戸建てです。新築から15年経っていますが、とてもいい雰囲気のログハウスなので、5,600円という価格がついています。
土地面積は644平方メートルと広大で、住宅の延べ床面積も116平方メートルと立派です。
家のなかはウッディでこのタイプの家を探している人ならひと目で気に入るはずです。広いウッドデッキがあるので、コーヒーや紅茶を飲みながら日光浴を楽しむことができます。

この物件がある三島市佐野見晴台2丁目は、三島カントリークラブというゴルフ場に接する地区で、広大な住宅街が形成されています。
ところがそれほど山奥のあるわけではなく、三島市佐野見晴台2丁目から最寄り駅の御殿場線・裾野駅までは5.4キロほど、自動車で13分の距離です。
またJR東海道本線・沼津駅までは12.6キロ、東海道新幹線・三島駅までは7.2キロです。
そして東名高速道・沼津インターチェンジと新東名高速道・長泉沼津インターチェンジまで10キロほどです。
自家用車を保有している方なら気軽に多くの交通手段にアクセスすることができます。

静岡県の土地の売買状況

静岡県内の土地の売買状況をみていきましょう。
静岡県全体の公示地価は2018年も前年を下回り、他の都道府県と比べても見劣りする結果になってしまいました。

住宅地と商業地は10年連続下落

2018年の静岡県の公示地価の内訳は次のとおりです。

住宅地 平均価格72,700円/平方メートル 平均変動率△0.8%
商業地 平均価格147,000円/平方メートル 平均変動率△0.2%
工業地 平均価格49,600円/平方メートル 平均変動率△0.2%
(△はマイナス。平均変動率はほぼ「前年比」と同じ意味)

住宅地と商業地の前年割れは10年連続です。
しかしさらに懸念すべき点があり、それは静岡県の全国的な位置づけです。
平均変動率(前年比)を、静岡県、全国平均、地方圏と比べてみましょう。

住宅地 商業地 工業地
静岡県(再掲) △0.8% △0.2% △0.2%
全国平均 0.3% 1.9% 0.8%
地方圏 △0.5% △0.4% △0.1%

全国平均は3項目がすべてプラスに転じています。そして静岡県の住宅地と工業地は、地方圏と比べてもマイナス幅が大きくなっています。静岡県「工業の集積地」ですので、工業地の地価の落ち込みは、地域の将来に暗い影を落とします。

地価の落ち込むのは、土地需要が落ち込んでいるからです。つまりこの数字は、工業地を必要とする企業が減っていることを示唆しているのです。
企業は工業地を買うとき慎重に検討します。工業地を買ったら工場を建てて機械を入れて人を雇って材料を購入して稼働させなければならないからです。したがって将来の売り上げ増が見込めなければ工業地は買いません。
企業が将来を不安視して投資を控えれば、周辺地域を寂れさせてしまいます。そのような事態に陥れば、中古マンションも中古戸建ても住宅地も売りにくくなるでしょう。
静岡県にとってさらに残念な数字を紹介します。

住宅地36位、商業地24位、工業地27位という現実

以下の3つの表は、2018年の公示地価の住宅地、商業地、工業地の平均変動率(前年比)の都道府県ランキングです。
静岡県は住宅地で36位、商業地で24位、工業地で27位という結果でした。ここには「住みやすい都道府県日本一」の面影も、「世界的な製造業の集積地」の栄光も感じられません。
静岡県内の不動産の売却を検討している個人オーナーは、この現実を受け止めて販売のタイミングや販売活動の内容を再考したほうがよいかもしれません。

2018年、住宅地
順位   平均変動率
  全国 0.3
1 沖縄 5.5
2 宮城 2.7
3 東京 2.4
4 福岡 1.8
5 福島 1.4
6 愛知 0.7
7 広島 0.6
8 熊本 0.6
9 埼玉 0.5
10 千葉 0.4
11 京都 0.3
12 神奈川 0.1
13 大阪 0.1
14 大分 0.1
15 北海道 0
16 佐賀 0
17 石川 △ 0.1
18 長崎 △ 0.1
19 山形 △ 0.3
20 富山 △ 0.4
21 兵庫 △ 0.4
22 山口 △ 0.4
23 徳島 △ 0.4
24 香川 △ 0.4
25 長野 △ 0.5
26 奈良 △ 0.5
27 岡山 △ 0.5
28 宮崎 △ 0.5
29 岩手 △ 0.6
30 群馬 △ 0.6
31 青森 △ 0.7
32 茨城 △ 0.7
33 岐阜 △ 0.7
34 滋賀 △ 0.7
35 栃木 △ 0.8
36 静岡 △ 0.8
37 高知 △ 0.8
38 島根 △ 1.0
39 新潟 △ 1.1
40 鳥取 △ 1.1
41 福井 △ 1.2
42 山梨 △ 1.2
43 愛媛 △ 1.2
44 三重 △ 1.4
45 鹿児島 △ 1.4
46 和歌山 △ 1.5
47 秋田 △ 1.8
2018年、商業地
順位   平均変動率
  全国 1.9
1 京都 6.5
2 沖縄 5.6
3 東京 5.4
4 大阪 4.9
5 宮城 4.8
6 福岡 3.9
7 愛知 3.2
8 北海道 2.3
9 広島 2
10 神奈川 1.9
11 熊本 1.9
12 千葉 1.7
13 兵庫 1.7
14 長崎 1.3
15 埼玉 1.2
16 福島 0.8
17 石川 0.7
18 奈良 0.4
19 岡山 0.4
20 滋賀 0.3
21 大分 0.2
22 佐賀 △ 0.1
23 富山 △ 0.2
24 静岡 △ 0.2
25 香川 △ 0.3
26 群馬 △ 0.4
27 岐阜 △ 0.4
28 栃木 △ 0.6
29 山口 △ 0.6
30 徳島 △ 0.6
31 茨城 △ 0.7
32 山梨 △ 0.7
33 青森 △ 0.8
34 福井 △ 1.0
35 長野 △ 1.0
36 山形 △ 1.1
37 和歌山 △ 1.1
38 高知 △ 1.1
39 三重 △ 1.3
40 愛媛 △ 1.3
41 宮崎 △ 1.3
42 鹿児島 △ 1.4
43 島根 △ 1.5
44 岩手 △ 1.7
45 新潟 △ 1.7
46 鳥取 △ 1.7
47 秋田 △ 1.9
2018年、工業地
順位   平均変動率
  全国 0.8
1 沖縄 14.6
2 佐賀 5.5
3 宮城 3.5
4 埼玉 3
5 京都 2.7
6 東京 2.6
7 神奈川 1.9
8 福岡 1.9
9 千葉 1.8
10 広島 1.3
11 岩手 1.1
12 福島 1.1
13 熊本 1
14 兵庫 0.9
15 滋賀 0.7
16 大阪 0.7
17 奈良 0.7
18 茨城 0.6
19 山形 0.2
20 愛知 0.2
21 岡山 0.2
22 石川 0.1
23 富山 0
24 長野 0
25 北海道 △ 0.1
26 栃木 △ 0.2
27 静岡 △ 0.2
28 群馬 △ 0.3
29 岐阜 △ 0.3
30 鳥取 △ 0.3
31 高知 △ 0.3
32 福井 △ 0.4
33 徳島 △ 0.4
34 新潟 △ 0.5
35 愛媛 △ 0.5
36 青森 △ 0.6
37 香川 △ 0.6
38 宮崎 △ 0.6
39 山梨 △ 0.7
40 長崎 △ 0.7
41 大分 △ 0.7
42 島根 △ 1.0
43 鹿児島 △ 1.0
44 山口 △ 1.1
45 三重 △ 1.3
46 和歌山 △ 1.4
47 秋田 △ 2.9


日本経済は2013年ごろから好転し、2019年もまだ成長を続けています。ところが静岡県の公示地価はこのとおり上昇気流に乗ることができていません。
その理由ははっきりしています。それは静岡県の「2トップ」である静岡市と浜松市の公示地価がふるわないからです。

静岡市と浜松市がふるわない

静岡市と浜松市の公示地価の住宅地と商業地の平均変動率(前年比)の推移をみていきます。

  住宅地 商業地
  静岡市 浜松市 静岡市 浜松市
2009年 △ 1.9 △ 0.7 △ 2.3 △ 1.6
2010年 △ 2.2 △ 2.9 △ 3.0 △ 3.3
2011年 △ 1.8 △ 1.1 △ 1.9 △ 1.3
2012年 △ 2.4 △ 1.3 △ 2.5 △ 1.1
2013年 △ 1.3 △ 0.9 △ 1.3 △ 0.5
2014年 △ 0.2 △ 0.4 0 0.1
2015年 △ 0.3 △ 0.2 0.4 0
2016年 △ 0.6 △ 0.1 0.2 0.2
2017年 △ 0.5 △ 0.2 1.3 0.1
2018年 △ 0.6 0 1.2 0.5

2013年までは日本全体が「失われた20年」のなかにあったので、公示地価がマイナスで推移したのはやむを得ないでしょう。
しかし住宅地の価格では静岡市も浜松市も、2014年以降もマイナスで推移しています。静岡市は一時的にマイナス幅を縮小させましたが、2016年以降再びマイナス幅が拡大してしまいました。浜松市の住宅地価格も、2018年にようやくゼロ(前年並み)にできた状況です。
商業地では、静岡市は2014年以降プラスに転じましたが、2018年はプラス幅を減らしています。浜松は2014年以降、プラスまたはゼロですが、勢いのある数字ではありません。

静岡県の経済活動総生産の推移をみても、県経済の不調ぶりは顕著です。2008年に「百年に一度の経済事件」といわれたリーマンショックがあり、経済活動総生産は2008年の17.3兆円から2009年の16.1兆円へと6.9%も減りました。
しかも2015年になっても「リーマンショック前」の水準を回復していません。

静岡県の経済活動総生産(単位:百万円)
2006年 18,003,104
2007年 17,998,943
2008年 17,267,761
2009年 16,050,800
2010年 16,389,652
2011年 16,421,453
2012年 16,322,934
2013年 16,730,907
2014年 16,567,762
2015年 17,292,439

静岡市の静岡駅も浜松市の浜松駅も、JR東海道本線と東海道新幹線の共通駅です。JR線と新幹線駅が数キロ離れている市もあるなかで、共通駅を持つことは街づくりにとっても経済にとって大きなアドバンテージです。
しかも両市とも、東名高速道路と新東名高速道路のインターチェンジを持ちます。
東京・大阪・名古屋とこれだけ太いパイプを持つ静岡市と浜松市の公示地価ですらこの状態ですので、静岡県の経済の空洞化は深刻です。
県を代表する2市の経済成長が期待できない以上、静岡県全体が浮揚する見込みは薄いと考えざるを得ないでしょう。

まとめ~なぜ公示地価が上がらないのか

静岡県の不動産オーナーは、「なぜ静岡県内の公示地価が上がらないのか」と感じていることでしょう。富士山を筆頭に有名な観光地が多く、名門製造業を数多く輩出し、しかも太平洋に面し、東京・名古屋・大阪へのアクセスも良好です。
まさに非の打ちどころのない土地ですが、好景気の恩恵をそれほど受けることができていません。

交通便がよすぎて、経済が「通過」してしまうのでしょう。企業や経営者に「静岡でビジネスをするなら名古屋か東京に出てしまおう」という心理が働くのかもしれません。
不動産市場の静岡県に対する評価は低すぎます。中古マンションや中古戸建てや土地のオーナーには厳しい状況ですが、静岡県の物件を探している人には喜ばしい状況です。土地や中古不動産を早期に売却するには、割安感やお得感を強くPRするとよいでしょう。