栃木県内の中古マンション、中古戸建て、土地の相場と不動産売却状況をみていきましょう。
県全体の傾向として、土地の価格は下落基調が解消されていません。全国的には「地方都市でも土地の値上がり傾向がみられる」といった情報が飛び交っていますが、栃木県の土地相場は「置いてきぼり」の様相を呈しています。

県内で断トツの人口を誇る宇都宮市でも、JR宇都宮駅東口の再開発や路面電車の新規建設といった明るい経済ニュースがある一方で、市が将来の都市構想として取り組んでいるコンパクトシティ政策に足踏み状態がみられます。

地元経済が上向かないことには不動産の流通も活性化しないでしょう。
栃木県内で売却用の中古マンション、中古戸建て、土地を持っている方は、不動産市況を「やきもき」しながら眺めている状態ではないでしょうか。

ただ大手自動車メーカーの工場や世界遺産の日光の社寺、那須御用邸などがある栃木県は、全国的にみても「工業、農業、商業、観光、自然のバランスがほどよく取れている」県です。
栃木県の隠れた魅力を発見した不動産会社やディベロッパーは、ピンポイントで大型投資を行っていますので、売却を検討している中古不動産オーナーは、地元密着の経済情報にアンテナを張っておいたほうがいいでしょう。

栃木県の不動産価格に影響を与えそうなトピックス

不動産価格は地域経済を映す鏡なので、経済が活性化すれば不動産価格も上向きます。
そこで栃木県内の経済ニュースで、不動産価格に影響を与えそうなものをピックアップして紹介します。

【宇都宮市情報1】路面電車の建設に期待

2018年の宇都宮市の最大の経済トピックスは、近年では類をみない路面電車の新設です。既存の路面電車をリニューアルする自治体は少なくありませんが、線路の敷設から新規で建設するのはとても珍しいことです。
宇都宮市と隣町の芳賀町を結ぶ路面電車は、正式には次世代型路面電車(LRT)といいます。2018年7月に建設が始まり、開業は2022年3月の予定です。
宇都宮市は、LRTを人口減・高齢化対策として導入しました。市内の交通網を整備すれば、商業施設や病院にアクセスしやすくなるので、街の魅力がアップし長く住んでもらえる、ということです。
またLRTを導入すれば宇都宮市内の郊外の住民の「足」になるので、再開発を市中心部に集中させることができます。つまり市中心部を「利用区域」にして市内郊外を「住区域」にすることができるわけです。
開発を市中心部に集中させれば建設コストも節約できます。これは街の機能を狭い範囲に集中させることから、コンパクトシティ構想と呼ばれています。

LRTの事業費は、JR宇都宮駅東口周辺だけで約460億円にのぼります。
またLRTは大型の「箱もの」建設も呼び込みました。宇都宮市と野村不動産など17社は2018年7月、JR宇都宮駅東口開発に関する協定を結びました。野村不動産などは、東口に2,000人収容の大ホールを含むコンベンション施設や、店舗、医療、ホテルが入居する商業施設も建設します。完成は2022年の予定です。

宇都宮市には、LRTの効率性がもたらす経済効果だけでなく、大型公共工事による経済効果も期待できるわけです。
宇都宮市に売却用の不動産を保有している方は「好機の到来」を期待できます。

【宇都宮市情報2】地方都市開発の「難しさ」が露呈?

LRT(次世代型路面電車)の建設やJR宇都宮駅東口事業は、宇都宮市の再開発の「陽」の面です。しかし宇都宮開発には「陰」の部分もあります。
宇都宮市は、街の機能を狭い範囲に集中させるコンパクトシティ構想を推進するため、2017年4月に、コンパクトシティ化に寄与する経済活動を支援する補助金制度をつくりました。
しかし2018年7月現在、その補助金を利用した実績はゼロ件でした。

この補助金制度は、宇都宮市が指定する区域に診療所やスーパーなどを建てると建設費の1割を負担してくれるという内容ですが、最低でも10年間は同じ場所で営業しなければなりません。その「縛り」が敬遠されたようです。
宇都宮市としては、「LRTが開通すれば集客効果が高まり、それを当て込んだビジネスが活発になってコンパクトシティ化が進む」と考えたわけですが、当てが外れてしまいました。地方都市の経済力では、いい話にすぐ投資するわけにはいかないようです。

栃木県の中古マンションの売買状況

栃木県内の中古マンションの売買状況をみていきましょう。
まずは中古マンションの売却価格に影響するトピックスを紹介します。

大和ハウスがJR小山駅前にプレミアムな分譲マンションを建設

大和ハウス工業は、栃木県小山市のJR小山駅周辺の再開発事業「駅東通り一丁目第一地区市街地整備事業」に合わせ、2018年9月から分譲マンション「プレミスト小山 ステーションレジデンス」の販売を開始しました。
地上17階、135戸という規模で、1室65~80平方メートルで価格は2,700万~5,300万円台です。「栃木県の宇都宮市以外の市」のマンションとしては高価格帯といえます。入居開始は2020年です。
マンション内には商業施設のほか、子育て支援施設が入居する予定です。このマンションから徒歩3分の距離にあるJR小山駅には、在来線(両毛線、宇都宮線、水戸線)だけでなく東北新幹線も通っているのでとても便利です。

新築のマンションが建つと、周囲の既存マンションが見劣りするので、中古マンションの価格は下がる傾向があります。
しかし、この「プレミスト小山 ステーションレジデンス」は高価格帯の物件なので、中古マンションとバッティングしない可能性があります。
そうなると、新しい分譲マンションができることで「街が活性化した」というよい印象を与えることになるので、中古マンション価格にもよい効果が期待できます。「新築分譲マンションは高嶺の花だけど、JR小山駅周辺に住みたい」という人が、中古マンション市場に流れてくるかもしれません。

したがってこの地域に保有する中古マンションの売却を検討している方は、近隣の不動産会社に価格動向を問い合わせてみてはいかがでしょうか。「売り時」は案外近いかもしれません。

栃木県の中古マンション市況

不動産会社が公開しているデータを元に、栃木県内の中古マンションの市町村別の平均価格をまとめてみました。

栃木県の中古マンション価格
地区 ~40m² ~50m² ~60m² ~70m² ~80m²
宇都宮市 277万円 650万円 963万円 1,892万円 1,945万円
足利市 186万円
栃木市
佐野市 850万円
鹿沼市
日光市 155万円 190万円 1,750万円
小山市 600万円 650万円 920万円 2,180万円
真岡市
大田原市
矢板市
那須塩原市
さくら市
那須烏山市 280万円
下野市
河内郡上三川町
芳賀郡益子町
芳賀郡茂木町
芳賀郡市貝町
芳賀郡芳賀町
下都賀郡壬生町
下都賀郡野木町
塩谷郡塩谷町
塩谷郡高根沢町
那須郡那須町
那須郡那珂川町

栃木県内の地方部では、中古マンション市場はほとんどありません。地方部にはまだまだ安い土地があるので、「マンションより戸建て」というニーズが強いためでしょう。

また他の都道府県では「~100平方メートル」帯や「101平方メートル~」帯の情報もあるのですが、栃木県ではその面積帯の情報がなく、最も広くて「~90平方メートル」でした。
栃木県民は「100平方メートル以上の広い家に住むなら戸建てを建てる」という意識が強いのでしょう。

宇都宮市の中古マンション価格は「順当」か

宇都宮市の中古マンションは、「~70~90平方メートル」帯で1,899~2,645万円となっていて、これはこの規模の都市としては順当な価格といえるのではないでしょう。
宇都宮市は国内有数の観光地があるだけでなく自然にも近い一方で、新幹線1本で東京にアクセスできる利便性も備えています。ただ東京圏の住民からは、「宇都宮市は遠い」というネガティブな印象を持たれています。そのため80平方メートルほどの中古マンションを2,000万円前後で購入できるのは「順当」といえます。
中古マンションの売却を考えている方にとっては、こうした「相場感」が販売活動のときに役立つでしょう。

小山市の中古マンション価格は「割安」か

栃木県内の宇都宮市以外の市で、中古マンション市場が形成されているのは小山市です。東北新幹線小山駅は、宇都宮駅より「10分」分、東京寄りです。
宇都宮市に比べると圧倒的に知名度が低い小山市ですが、宇都宮市より少し東京に近いため、中古マンション市場は宇都宮市より2~3割安い程度で収まっています。こちらも妥当といえるでしょう。
ただ「~80平方メートル」帯では、小山市が2,180万円ですので、宇都宮市の1,945万円より12%ほど高くなっています。つまり、「宇都宮市より東京に近い」ことに価値を見出す購入希望者も存在することがわかります。
小山市の中古マンションオーナーは、販売活動のときにこうした「小山のメリット」をPRするとよいでしょう。

販売活動での注意点

こうした傾向から、宇都宮、小山両市の中古マンションオーナーが販売活動に着手するときは、次の項目に力点を置いて展開してみてはいかがでしょうか。

宇都宮市の中古マンションオーナーの販売活動のコツ 再開発が活発で新しい街ができる。
路面電車の新設やコンパクトシティ化など全国的に注目されている街づくりを行っている。
市内に活気がある。
東京へは「新幹線1本」だから便利。
小山市の中古マンションオーナーの販売活動のコツ 栃木県内の新幹線駅の中では最も東京寄り。
小山駅と宇都宮駅の距離は新幹線で「わずか10分」だが、心理的にはその差は大きい。

購入希望者に街の魅力や立地条件を理解してもらえれば、価格交渉を有利に進めることができます。販売活動では物件の長所をPRするだけでなく「それ以外のメリット」を訴求していきましょう。

栃木県の中古戸建ての売買状況

栃木県内の中古戸建て市場には「~100平方メートル」帯の物件がほとんどありません。そこで「101平方メートル~」帯だけで比較してみました。

栃木県の中古戸建て価格(相場が形成されている「101平方メートル~」のみ表示)
地区 101m²~ 地区 101m²~
宇都宮市 2,368万円 那須烏山市 1,424万円
足利市 1,736万円 下野市 2,432万円
栃木市 1,675万円 河内郡上三川町 2,310万円
佐野市 1,689万円 芳賀郡益子町 1,169万円
鹿沼市 1,825万円 芳賀郡茂木町 660万円
日光市 1,712万円 芳賀郡市貝町 1,529万円
小山市 2,176万円 芳賀郡芳賀町
真岡市 2,140万円 下都賀郡壬生町 1,713万円
大田原市 1,543万円 下都賀郡野木町 1,810万円
矢板市 1,494万円 塩谷郡塩谷町
那須塩原市 1,647万円 塩谷郡高根沢町 1,830万円
さくら市 2,149万円 那須郡那須町 1,518万円
    那須郡那珂川町

日産効果は明白。「下野市+上三川町」は人口2トップの「宇都宮市+小山市」を超える

中古戸建ての価格で注目したいのは、「宇都宮市と小山市」の平均価格が「下野市と上三川町」の平均価格に負けている点です。
宇都宮市の人口は県内最多の52万人を誇っています。ちなみに2位は小山市の17万人です。「下野市と上三川町」は隣接しているので一つのエリアとしてまとめます。
大きな街の中古戸建て価格が郊外に負けるという逆転現象は、上三川町にある日産自動車栃木工場が影響しています。
同工場の総面積は290万平方メートルもあり、広大なテストコースが設置されています。5,200人の従業員が年間25万台の自動車を製造しています。生産している車種は高級車や輸出車が中心になっています。

栃木県における日産の経済効果は明らかで、市町村内総生産(GDP)を市町村人口で割った「1人当たりGDP」にくっきり表れています。

  市町村内総生産(GDP)(円) 人口(人) 1人当たりGDP(円)
人口1位 宇都宮市 2,914,497,000,000 521,820 5,585,254
人口2位 小山市 715,874,000,000 166,593 4,297,143
日産工場がある 上三川町 198,024,000,000 31,454 6,295,670
上三川町に隣接 下野市 204,754,000,000 60,135 3,404,906
  栃木県全域 9,016,319,000,000 1,998,864 4,510,722
GDPは2015年、人口は2016年の数字

日産栃木工場がある上三川町の1人当たりGDPは約630万円で、栃木県全域の約450万円を4割も上回っています。下野市は1人当たりGDPが栃木県全域を下回っています。それでも中古戸建て価格が堅調なのは、下野市が「上三川町のベッドタウン」になっているためと思われます。
県内人口1位の宇都宮市ですら1人当たりGDPは約560万円で、上三川町より1割低くなっています。
「稼ぐ力」がある上三川町では、町民が比較的高い戸建てを建てても不思議はありません。それが中古戸建て市場に反映されています。

栃木県の土地の売買状況

国内の主要地方都市では、土地価格の上昇や高騰が散見されるようになりましたが、栃木県の土地価格はまだ下げ止まり感が見え始めた段階といった印象です。
ただ宇都宮市の土地価格だけが「1人勝ち」です。

栃木県の地方部に「原野商法」被害が再び

土地の市況をみる前に、栃木県内の土地に関するニュースを紹介します。

40~50年ほど前に国内各地で原野商法が横行し社会問題になりました。原野商法とは、山林などのまったく使い物にならない土地を安い価格で仕入れ、富裕層などに「値上がり間違いない」などといって転売する詐欺的行為です。
その原野商法が栃木県内などで復活していることを、日本経済新聞が2018年5月に「原野商法膨らむ二次被害 処分焦る高齢者標的に」という記事で報じています。

栃木県那須町に土地を持つ高齢女性が、2016年に原野商法の被害に遭いました。ある業者が女性に「那須町の土地を売却する手伝いをさせてほしい」と持ちかけたところ、その土地の処分に困っていた女性は同意してしまいました。
業者は売却手数料など210万円を女性に要求し、女性はそれにも応じてしました。ところが間もなくしてその業者と連絡が取れなくなり、那須町の土地は売れませんでした。
国民生活センターによると、2017年度には、原野商法に関する相談が1,682件ありました。2016年度より56%も増えているとのことです。
栃木県内に保有する土地の売却を検討している方は注意してください。

栃木県の土地市況

栃木県内の土地価格については「~100平方メートル」帯の市場がほとんど形成されていません。それで「101平方メートル~」帯の平均価格だけを表示しました。
注目していただきたいのは、広い土地にもかかわらず500万円を割り込む市町が多いことです。

栃木県の土地価格(相場が形成されている「101平方メートル~」のみ表示)
地区 101m²~ 地区 101m²~
宇都宮市 1,264万円 那須烏山市 180万円
足利市 801万円 下野市 1,222万円
栃木市 792万円 河内郡上三川町 997万円
佐野市 786万円 芳賀郡益子町 929万円
鹿沼市 851万円 芳賀郡茂木町 1,960万円
日光市 479万円 芳賀郡市貝町 493万円
小山市 1,250万円 芳賀郡芳賀町 489万円
真岡市 1,605万円 下都賀郡壬生町 1,000万円
大田原市 289万円 下都賀郡野木町 913万円
矢板市 498万円 塩谷郡塩谷町 400万円
那須塩原市 429万円 塩谷郡高根沢町 1,082万円
さくら市 656万円 那須郡那須町 526万円
    那須郡那珂川町

例えば世界的な知名度を誇る日光市でも、観光地から外れると「101平方メートル~」であっても479万円です。年間を通じてアウトドアレジャーを楽しむことができ、都心からの観光客を取り込んでいる那須塩原市でも429万円です。
また、宇都宮市と次世代型路面電車(LRT)でつながる芳賀町も489万円でした。
このように栃木県内の多くの地域では土地価格の低迷が続いています。

2018年の栃木県の基準地価は宇都宮市の「1人勝ち」

2018年の栃木県内の基準地価のランキングは以下のとおりでした。

住宅地価格ベスト5
  1. 宇都宮市元今泉5丁目:112,000円/1平方メートル
  2. 宇都宮市元今泉7丁目:109,000円/1平方メートル
  3. 宇都宮市昭和2丁目:105,000円/1平方メートル
  4. 宇都宮市今泉4丁目:102,000円/1平方メートル
  5. 下野市祇園2丁目:101,000円/1平方メートル
住宅地上昇率ベスト5
  1. 宇都宮市元今泉7丁目:3.8%
  2. 宇都宮市元今泉5丁目:3.7%
  3. 下野市祇園2丁目:2.7%
  4. 小山市東城南5丁目:2.5%
  5. 小山市城東6丁目:2.2%
商業地価格ベスト5
  1. 宇都宮市池上町:318,000円/1平方メートル
  2. 宇都宮市江野町:287,000円/1平方メートル
  3. 宇都宮市池上町:273,000円/1平方メートル
  4. 宇都宮市東宿郷4丁目:264,000円/1平方メートル
  5. 宇都宮市大通り2丁目:244,000円/1平方メートル
商業地上昇率ベスト5
  1. 宇都宮市東宿郷:1.9%
  2. 下野市祇園1丁目:1.8%
  3. 宇都宮市城東2丁目:1.6%
  4. 宇都宮市下栗町:1.4%
  5. 宇都宮市簗瀬町:1.4%

下野市や小山市の地点がとこどころランクインしていますがほとんどは宇都宮市の地点で占められました。宇都宮市内の住宅地の基準地価は、1991年以来27年ぶりに上昇しました。

栃木県内全域では、住宅地が26年連続で前年比割れ、商業地も27年連続で下落しています。
ただ上昇、横ばいだった地点は増えていて、下げ幅はかろうじて縮小しています。

以上のことをまとめると「栃木県内の土地価格は依然低調ながら、宇都宮市を中心にピンポイント的に持ち直す動きもみられる」となります。

まとめ~栃木県の中古不動産の売却価格は依然厳しい状況

栃木県内の中古マンション、中古戸建て、土地の売却を検討している方にとっては、不動産市場は依然厳しい状況にある、といってもいいでしょう。
ただ宇都宮市など価格が持ち直している地域の不動産については、そろそろ「売り時」を検討してもいいかもしれません。2019年秋の消費増税や、2020東京五輪後の景気の落ち込みといった「荒波」が今後予想されるだけに、「売却できるときに売ってしまう」というスタンスが必要です。