不動産売却を考えている時にタイミングよく届いた不動産会社からの手紙。
読んでみると、高く売却してくれそうな宣伝文句が並んでいます。
「高額査定実施中!」「売却物件大募集」「現在キャンペーン中で今査定依頼いただくと○○プレゼント」などなど。
「どうしてうちの住所がわかったの?個人情報が漏れた!?」
と不安になる方もいれば、
「大手不動産会社だし、ちょうどよいタイミングだから、ここでお願いしてしまおうか?」
と乗り気になる方もいることでしょう。
しかし、その前に、まずこの手紙がどのような意図で送られているのかをぜひ知ってください。

突然届く不動産会社からの手紙のなぞ。情報漏洩なのか?

これまでまったく取引のなかった見知らぬ不動産会社から、なぜ突然手紙が届くのでしょうか?
ダイレクトメール(DM)であればマンションやエリアの物件のポストに一斉投函ということも考えられますが、住所も名前も記載された封書で直接送られてくるわけですから、個人情報の漏洩かと心配になってしまいます。

実は、この不動産会社からの手紙は、不動産会社が販売活動の一環として行っているものです。
住所と氏名は不動産登記簿で確認しているものなので、決して違法な行為ではありません。
住民票の写しや戸籍抄本は本人、同居の家族、委任を受けた人、また正当な理由がある人など、取得できる人は決められていますが、登記簿は誰でも閲覧が可能です。
登記とは、日本における行政上の仕組みのひとつで、不動産登記のほかに、商業登記や法人登記、船舶登記などがあり、不動産登記法や商業登記法といった法律のもとで保護されています。
不動産登記の場合、どこにどんな不動産があり、その所有権を誰が持っていて、抵当権がどのように設定されているかが記載された帳簿が登記所に保管されています。この不動産の状況を公に示す、つまり公示することで取引が間違いなくスムーズに行われます。
もしこの登記の確認を怠って売買をすると、地面師という土地の所有者になりすまして売却をもちかけ、多額の代金をだまし取る不動産詐欺に引っかかる場合もあります。このような不動産売買のトラブルをなくすためにも、不動産登記簿は誰でも手数料を納付すれば自由に閲覧したり写しを取得したりすることが可能になっています。

手紙の送付も不動産会社の立派な販売活動

では、不動産会社はなぜこれまで取引実績のない個人に対して、手紙を贈るのでしょうか。実はこの手紙の送付も不動産会社にとっては立派な販売活動にあたります。
ここでは、不動産会社が利益を得る方法について説明しましょう。

不動産会社は不動産売買において売主と買主を仲介し、仲介手数料を取ることで商売が成り立ちます。この手数料は、売買契約が成立した場合にのみ支払われる成功報酬ですので、不動産会社としては魅力ある不動産を扱いたいと考えます。なお、この手数料は売主または買主のどちらかと契約した場合に得られる金額ですので、もし、買主も売主も自社で見つけて契約したのならば、仲介手数料は2倍になります。

仲介手数料は法律で以下のような上限が決められています。

売却金額 報酬金額の上限
200万円以下の部分について 取引額の5%
200万円を超え400万円以下の部分について 取引額の4%
400万円を超えた部分について 取引額の3%

たとえば、3,000万円の物件について計算してみると、

(200万円×0.05)+(200万円×0.04)+(2,600万円×0.03)=96万円(税別)

これをより簡単な計算式にすると、400万円以上の物件の物件であれば以下のようになります。

成約金額 × 0.03 + 6万円 =仲介手数料 (税別)
成約金額 仲介手数料(税別)
1,000万円 360,000円
2,000万円 660,000円
3,000万円 960,000円
4,000万円 1,260,000円
5,000万円 1,560,000円
6,000万円 1,860,000円
7,000万円 2,160,000円
8,000万円 2,460,000円
9,000万円 2,760,000円
1億円 3,060,000円

※仲介手数料は別途消費税がかかります。

このように成約した金額が高ければ高いほど、仲介手数料として不動産会社に入る金額も高くなります。もし、売主、買主の両方と契約できていれば、さらにその金額は2倍になります。

不動産会社としては、少しでも高く売れそうな良質な売却物件をたくさん集めて、売買成立のチャンスを増やしたいところです。そこに、手紙による販売活動をする意味が出てくるわけです。

高く売れそうな物件とは、築年数が浅い、交通の便がよい、文教地区など周辺環境がよいといった特徴を持つ不動産物件です。こうした優良物件の持ち主を顧客にできれば、すぐに買い手は見つかりますから、販促活動にかかる経費は少なくてすみます。不動産会社の担当者は、担当するエリアで人気のマンションや、立地が魅力のエリアの一戸建てに絞り、その持ち主を登記所の登記簿で調べて、集中的に手紙を送っているのです。

手紙が届いたら売り時?不動産売却のタイミング

不動産会社からの手紙が届いたら、それは不動産売却のよいタイミングなのかもしれません。不動産会社もいくらよい物件だとしても、新築で居住者が越して来たばかりの物件に、大がかりに販売活動を仕掛けてくることはありません。また、古くなって大規模な修繕が必要な物件に対してもしかりです。
その不動産が人気の物件であるか、そのエリアの不動産売買が活況を呈しているか、新築購入者がそろそろ買い替えを考える時期であるかなど、長年蓄積してきた経験をもとに不動産会社は時期を判断して手紙を送るので、手紙がと届く時期は売り時であるということになります。ですから、手紙が届いたら、不動産売却を考えるよい時期なのかもしれません。

気をつけておきたい不動産会社の手紙で起きるトラブル

不動産会社から届いた手紙は法的に問題なく、またその不動産会社が高く売ってくれるのなら、仲介依頼をすればいいのかというと、そういうわけではありません。
中には、具体的に「こちらのマンションで2LDK~3LDKの物件をお探しのお客様がいらっしゃいます」などと書かれてある手紙もあり、マンション売却をこの会社に依頼すればすぐ売れそうな気持ちになります。
しかし、この「お客様がいる」が事実なのか、宣伝文句なのかはわかりません。優良物件の売主と売買契約を結んでおけば、すぐにでも買い手は見つかるからとありもしない顧客情報を流している場合もあります。
気をつけておきたい不動産会社の手紙にまつわる失敗例やトラブルをご紹介します。

高額査定につられて契約、売却してしまった失敗例

「高額査定します!」という不動産会社の手紙を受け取って、軽い気持ちで査定依頼をしたところ、近隣の相場よりはるかに高い査定金額を提示されて仲介契約を結んだ売主。しかし、なかなか買い手は見つからず、不動産会社のすすめで少しずつ値段を落として、結局相場の金額で売買成立。「急いで売る必要もないが、高く売れるなら売ってもいい」という軽い気持ちで査定依頼をしたはずが、納得いかない結果になってしまいました。
このように、不動産会社の中には、敢えて査定金額を高く出して仲介契約を結ぼうとするところもあります。ですから、「高く売ります」という言葉を信じて、最初から1社に絞って仲介契約を結んでしまうのは危険です。

任意売却についての手紙が届いた

不動産会社から、「任意売却をしませんか?」という手紙が突然届くことがあります。
任意売却とは住宅ローンなどの借入金の返済が滞り、もしその不動産を売却しても住宅ローンが残ってしまうような不動産を、金融機関の合意を受けて売却する方法です。
これに似た方法で競売がありますが、こちらは住宅ローンの滞納があり、お金を貸した銀行などの金融機関が担保としている不動産を強制的に売却して回収しようとするものです。
競売は所有者の同意がなくても裁判所が認めれば、裁判所が所有者に変わってオークション形式で買い手を見つけます。
競売の場合は、市場価格の7割程度の金額となり、また新聞やネット上で競売にかけられたことが世間に知られてしまいます。一方、任意売却の場合は市場価格に近い金額で売却できる上、通常の不動産売却と同じ方法が取られるため、知り合いや近所の人に事情を知られずにすむという利点があります。
登記簿には様々な情報が記載されおり、その中には処分制限の登記といって差押えや処分禁止の仮処分が行われるとそのことが記載されます。これらの情報をもとに、不動産会社は任意売却が必要そうな人を絞ってこの手紙を出しているので、ローンを滞納していることを、親しい誰かに知られてしまっているのか?と疑心暗鬼になる必要はありません。
もし、このような状況に陥ったら、金融機関とよく相談して任意売却をするかも含め検討していくといいでしょう。

相続で不動産を手に入れたらすぐに手紙が届いた

親が亡くなって不動産を相続した途端、「不動産を高く買います」という手紙が不動産会社から届いたら、誰か親族が情報を漏らしているのでは?と疑ってしまいます。しかし、これも登記簿から得ることができる情報です。親族間で要らぬ諍いが生じてしまうこともあるので、ぜひ知っておいてください。

手紙が届いたら賢く売却のタイミングと仲介業者を決めよう

不動産売却を考えていたところに、タイミングよく不動産会社から手紙が届いた。取引のある会社ではないが、よく知られている会社であるし、高く売ってくれるなら頼んでみようか?
そう決断する前に、ぜひおすすめしたいことがあります。
無料で複数の不動産会社から査定見積が取れる一括査定サービスの利用です。
一括査定サービスのサイトに不動産情報を入力すれば、複数の不動産会社に一括で査定見積を依頼できるサービスです。入手した査定見積を比較することで、自分が所有する不動産の売却金額の相場がわかりますし、査定見積をもとに不動産会社と話してみることで、高く売ってくれそうな不動産会社、サービスのよさそうな不動産会社を選ぶことできます。こうして、信頼できる不動産会社を見つけることが、満足のいく不動産売却につながるのです。