不動産の査定

愛媛県内に「中古マンション、中古戸建て、土地」を持っているオーナーは、売るなら今です。
愛媛県内の中古マンション市場は2017年夏から2019年春にかけて好調に推移していて、売りやすくなっています。だからといって、今後の値上がりを期待して、売却を延期しないほうがよいでしょう。なぜなら、愛媛県内の不動産全体に影響を与える公示地価の下落傾向が止まらないからです。中古マンション市場の「地合い」が悪くなくても、大元の不動産全体の地合いが悪ければ急激な価格上昇は見込めません。
中古戸建て価格についても、新設住宅着工戸数が乱高下しながら少しずつ悪化しているので期待薄です。新築市場と中古戸建て市場は連動しているからです。

愛媛県内に売却用の不動産を保有している方は、少なくとも不動産仲介業者に査定を依頼したほうがよいでしょう。査定額を出しておけば、資金計画を作ることができますし、いつでも売却活動を始めることができます。
不動産価格の下落が決定的になって「投げ売り」状態になる前に手を打っておくのが、賢い選択といえるでしょう。

この記事のポイント!
  • 愛知県経済は元気だが不動産オーナーは警戒したほうがいい
  • 「売れるときに売る」という姿勢で!
  • いつでも売却活動をスタートできるようにしておく

愛媛県の不動産の全体的な話題

不動産の種類ごとに分析する前に、愛媛県内の不動産全体に影響を与える話題を紹介します。
不動産価格は地域経済の影響を受けます。地域経済が活発なら不動産が必要になって値上がりしますが、地域経済が落ち込めば不動産を手放す人が増えて買う人が減るので価格は下落します。
そして愛媛県のような地方では、地域経済は日本経済の影響をまともに受けます。日本経済が「くしゃみ」をすれば、愛媛県経済は「風邪をひく」でしょう。
したがって売却用の不動産を保有している方は、愛媛県経済と日本経済の両方を注視しておく必要があります。

愛媛県には「よい経済」ニュースは多い

瀬戸内しまなみ海道

愛媛県には、よい経済ニュースがたくさんあります。しかもそのほとんどは、全国的な話題になっています。
最初に紹介するよい経済ニュースは「瀬戸内しまなみ海道」(以下、しまなみ海道)です。しまなみ海道は、愛媛県今治市と広島県尾道市を結ぶ60キロの「西瀬戸自動車道と生口島道路と大島道路」の総称で、1本のつながった道です。
しまなみ海道は自動車専用道路ですが、自転車や歩行者が使える道も整備されていて、今ではしまなみ海道といえば自転車で走る道と認知されているほどです。全国の自転車愛好家にとって、サイクリングの聖地のような存在になりました。

しまなみ海道がなぜこれほど有名になったのかというと、しまなみ海道のメーンである西瀬戸自動車道からの絶景です。西瀬戸自動車道には本州と四国を結ぶ大橋がいくつもあり、橋の上からは瀬戸内海に浮かぶ小島を見渡せます。

愛媛県の伊予鉄道の社長だった愛媛商議所連会頭の佐伯要氏は「しまなみ海道は瀬戸内の経済を大きく変えた。経済効果への期待は大きい」と述べています(*)。
*:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45351650Y9A520C1962M00/
しまなみ海道はいまや愛媛県の重要観光資源になっていて、サイクリストを中心とする観光客が訪れるようになり、宿泊業や飲食業が潤っています。
さらに、しまなみ海道が「アイコン(象徴)」のような存在になり、建築、アート、Iターン、タオル製造、海産物、柑橘類生産といった地場産業に相乗効果が生まれています。

さらに愛媛県は、人気アニメ「進撃の巨人」とコラボした観光PRキャンペーンを展開しています。
その一環として「進撃の巨人×まじめえひめ」というタイトルのスライドムービーを制作しました(*)。愛媛県が巨人に襲来され、それを撃退すべく調査兵団が戦略を練るのですが、その会議室のテーブルに愛媛の柑橘類や魚介類が並んでいます。そして愛媛奪還作戦を敢行します。愛媛県のゆるキャラである「みきゃん」が巨人をおもてなしして鎮める、というオチになっています。
その他にも松山城ロープウエー乗り場に、高さ4メートルの巨人の頭部のモニュメントを設置したり、県内の観光スポットでスタンプラリーを開催したりしています。
*:https://www.pref.ehime.jp/h12200/ehimenettv/4ch/310409-2.html

全国的な話題を提供することは、地方の県にとってとても重要です。知名度が上がれば移住者が増えたり、大都市に本社を置く必要がないIT企業やネット企業が会社ごと移住してきたりするからです。
そうなれば不動産価格の上昇も期待できます。

「四国のリーダー」として頑張っているが弱い

愛媛県の経済力は、四国4県のなかで最も勢いがあります。
内閣府の県民経済計算によると、愛媛県の2014~2015年の経済成長率は4.0%増で、47都道府県中16位という好位置につけています。
高知県は3.0%増で27位、香川県は2.3%増で36位、徳島県は1.2%増で42位でした。
また、瀬戸内海の対岸の本州では、9位の広島県(4.7%増)にこそかないませんが、山口県は47位(△3.1%減、△はマイナス)でした。
愛媛県は、中国・四国地方で健闘している県といえます。

ところがこれだけでは安心できません。
2015年の経済規模(県内総生産、GDP)をみると、愛媛県は4.9兆円で27位に転落します。香川県(36位、3.8兆円)、徳島県(43位、3.1兆円)、高知県(46位、2.4兆円)と比べるとまだリードを保っていますが、対岸の広島県は12位11.9兆円と、愛媛県の2.4倍の規模を誇ります。山口県も24位5.9兆円で、愛媛県より1兆円も規模が大きいのです。

つまり愛媛県経済の短期的な勢いは、経済規模が小さいゆえの出来事と考えることができます。経済規模が小さい地域では、小規模の経済効果が生まれただけで成長率が跳ね上がります。もちろん小さい経済効果を積み重ねていくことで、大きなトレンドをつかめるようになるのですが、売却用の不動産を保有している方は「別の視点」を持つ必要があります。
個人が自身の不動産を売却する場合は、「今ならいくらで売れるか」が重要になってくるので足元の経済に気をつける必要があります。それを次の章でみていきます。

足元の経済には懸念材料が散見される

愛媛県では将来への投資が進んでいますが、足元の経済を観察すると懸念材料が散見されます。愛媛県産業政策課が2019年4月に発表した「最近の県内経済情勢―2019年3月分」によると、愛媛県経済は「一部に弱い動きがみられるものの、緩やかな持ち直しが続いている」状態です。
2013年から始まった日本の好景気は、2018年終盤から急激に減速し始めています。したがって愛媛県の不動産オーナーは「緩やかな持ち直し」に期待するのではなく「弱い動き」に注目しておいたほうがよいでしょう。

新設住宅着工戸数が「負け越し」需要が懸念

「最近の県内経済情勢―2019年3月分」のなかの新設住宅着工戸数に注目してみます。
愛媛県内の2019年2月の住宅着工戸数は、前年同月比13.5%増で、2カ月連続で前年を上回りました。この数字が、日本経済が上り調子のときに発表されたのであれば、不動産オーナーは楽観視できます。しかし不動産オーナーが注意しなければならないのは、次の前年同月比の数字です。

2018年2月 約△10%減(△はマイナス)
3月 約△5%減
4月 約△40%減
5月 約50%増
6月 約△5%減
7月 約△5%減
8月 約△30%減
9月 約5%増
10月 約5%増
11月 約5%増
12月 約△10%減
2019年1月 約20%増
2月 約10%増

新設住宅着工戸数からは、愛媛県民がどの程度住宅をほしがっているかがわかります。「増」を勝ち、「減」を負けとすると6勝7敗の負け越しです。
景気がよくなって給料が上がれば、県民の間に「少し無理してでも家を建てよう(または、マンションを買おう)」という機運が高まるので、その需要に応えようと建設会社が家をたくさん建てるようになり、新設住宅着工戸数が上昇します。
つまり新設住宅着工戸数が負け越しているということは、愛媛県民はいま「住宅を買う時期ではない」と感じているのです。当然、中古マンションや中古戸建て、土地への購入意欲も低下するので、売却用の不動産を持っている人は、現状は楽観できる状況ではないと認識しておいたほうがよいでしょう。

愛媛県の中古マンションの売買状況

それでは不動産の種類ごとにみていきましょう。
全国指定流通機構連絡協議会が運営する不動産取引情報提供サイト「レインズマーケットインフォメーション」(以下、レインズ)によると、愛媛県内の中古マンションは、市場規模、価格ともに上昇しています。
詳しい数字は以下のとおりです。

愛媛県全域
中古マンション
2017年5月から2017年7月 2017年8月から2017年10月 2017年11月から2018年1月 2018年2月から2018年4月  
合計成約件数(件) 29 28 33 51  
平均成約価格(万円) 1,347 1,053 1,382 1,487  
平均m²単価(万円/m²) 20 19 21 21  
平均専有面積(m²) 66 51 66 69  
  2018年5月から2018年7月 2018年8月から2018年10月 2018年11月から2019年1月 2019年2月から2019年4月  
合計成約件数(件) 41 41 40 50 72%
平均成約価格(万円) 1,531 1,671 1,473 1,409 5%
平均m²単価(万円/m²) 21 23 22 21 6%
平均専有面積(m²) 68 67 64 63 -5%

中古マンションの市場規模の指標となる成約件数は、「2017年5~7月」の29件から、2年後の「2019年2~4月」には50件にまで増えています。増加率は実に72%増です。
この旺盛な需要のお陰で、平均成約価格は同じ期間に1,347万円から1,409万円へと5%上昇しています。平均平方メートル単価も20万円/平方メートルから21万円/平方メートルへと6%上昇しています。

この好調な数字を支えているのは、県庁所在地、松山市の中古マンション市場です。その詳細は以下のとおりです。

松山市内
中古マンション
2017年5月から2017年7月 2017年8月から2017年10月 2017年11月から2018年1月 2018年2月から2018年4月  
合計成約件数(件) 24 27 29 44  
平均成約価格(万円) 1368.33 1029.81 1437.24 1483.41  
平均m²単価(万円/m²) 20.82 18.84 21.81 20.83  
平均専有面積(m²) 62.77 50.02 65.09 68.34  
  2018年5月から2018年7月 2018年8月から2018年10月 2018年11月から2019年1月 2019年2月から2019年4月 2017年5月比
合計成約件数(件) 38 37 37 42 75%
平均成約価格(万円) 1531.16 1668.97 1501.54 1474.38 8%
平均m²単価(万円/m²) 21.5 22.98 22.08 22.19 7%
平均専有面積(m²) 67.08 66.01 63.17 61.43 -2%

松山市内の中古マンションの成約件数は、「2017年5~7月」の24件から「2019年2~4月」の42件へと75%も増えています。
そして松山市の「2019年2~4月」の42件は、愛媛県全域の「2019年2~4月」の50件の84%を占めることから、愛媛県全域の中古マンション市場は松山市内の市場の動向に左右されることがわかります。
実際に愛媛県内で中古マンション市場が形成されているのは、松山市、今治市、新居浜市、西条市ですが、そのほとんどは松山市に集中しています。

それでは次に、愛媛県内ではどのような中古マンションが売りに出ているのかみていきましょう。

松山市南町1丁目の7階112平方メートル3LDKが5,880万円

松山市南町1丁目にある8階建て全71戸のマンションの7階、112平方メートル3LDKの部屋が5,880万円で売りに出ています。2016年8月完成です。

築浅物件で100平方メートルを超える広々した物件ではありますが、地方都市の中古マンションで、しかも10階以下で約6,000万円は、強気な価格設定のように感じます。ただし
このマンションにはそれだけの「中身」があります。
この部屋は7階ですが、この部屋の上には部屋がなく、ここが最上階になります。この部屋にだけ屋上の庭「ルーフバルコニー」がついているのです。屋上を独り占めできます。
さらに1階にはコンシェルジュカウンターがあり、日常生活をサポートしてもらえます。エントランスの造りも豪華です。
また、4LDKでもおかしくない広さにもかかわらず3LDKにしてあるので、リビングダイニングは広々していて収納もたくさんあります。築浅物件なのでキッチン、浴室、トイレ、洗面所の水回りの設備には最新式のものが採用されています。

このマンションがある松山市南町1丁目は、JR予讃線・松山駅まで道路距離で約4キロありますが、近くに路面電車(伊予鉄JR松山駅前線)・南町駅があるので不便は感じないでしょう。
それよりも、松山市南町1丁目から名湯・道後温泉までは500メートルしかありません。このプレミアムな立地こそ、この物件の最大の魅力かもしれません。
周囲には松山赤十字病院や道後温泉病院、奥島病院、浦屋病院、乳腺クリニック道後などがある他、幼稚園や小学校、中学校、高校も近くにあるので、ファミリー層にも高齢世帯にも喜ばれる場所です。
そして少し歩けば、夏目漱石坊ちゃん碑、松山市立子規記念会館、愛媛県県民文化会館やセキ美術館があります。

これだけの住環境に恵まれ、マンションの質も高いので、高額になるのはやむを得ないでしょう。

今治市松本町4丁目の4階82平方メートル4LDKが1,480万円

今治市松本町4丁目にある11階建て全59戸のマンションの4階、82平方メートル4LDKの部屋が1,480万円で売りに出ています。1996年4月完成です。

中グレードのマンションです。82平方メートルで4LDKは、各部屋がやや狭くなりますがそれでも不便を感じることはないでしょう。
ただ築20年以上が経過しているので、住宅設備は「それなり」です。

今治市松本町4丁目は、JR予讃線・今治駅から道路距離で1.6キロの場所にあります。蒼社川の河口付近に位置し1キロほど歩けば瀬戸内海に出ます。その手前には今治城の吹揚公園があります。散歩やウォーキングを趣味にしている人には絶好のロケーションです。
今治セントラル病院や羽鳥病院が近くにあるので安心です。さらにマルナカ今治松本店まで徒歩約4分、ユニクロ今治店まで徒歩約5分と、商業施設にも恵まれています。

これだけの住環境を約1,500万円で手に入れることができるのは、地方に住む人の特権といえるでしょう。

愛媛県の中古戸建ての売買状況

続いて愛媛県内の中古戸建ての売買状況をみていきましょう。ただ、レインズが愛媛県内の中古戸建て情報を提供していないので、別のデータを紹介します。
愛媛県の市町ごとの中古戸建て平均価格は次のとおりです。

  • 松山市:1,951万円
  • 今治市:1,474万円
  • 宇和島市:1,159万円
  • 八幡浜市:982万円
  • 新居浜市:1,340万円
  • 西条市:1,561万円
  • 大洲市:1,192万円
  • 伊予市:1,818万円
  • 四国中央市:1,634万円
  • 西予市:1,710万円
  • 東温市:1,715万円
  • 松前町:2,210万円
  • 砥部町:1,626万円

中古戸建て市場が形成されている市町のみ掲載しました。
中古マンション市場より規模が大きいことは一目瞭然です。また価格面でも、県中心部の松山市の1,951万円や今治市の1,474万円だけでなく、松山市から遠く離れた西予市(1,710万円)や四国中央市(1,634万円)でも「しっかりした値段」がついています。

こうしたことから愛媛県民は戸建て志向が強いことがわかります。したがって、個人の売買でも中古マンションよりは中古戸建てのほうが売りやすいといえます。

それでは愛媛県内で売りに出ている物件を確認しておきましょう。

松山市松末1丁目の193平方メートル6SLDのハイセンス豪邸が4,980万円

松山市松末1丁目にある木造2階建て、土地面積198平方メートル、延べ床面積193平方メートル6SLDKの豪邸が4,980万円で売りに出ています。2013年9月完成です。

この物件のハイライトは外観です。金属製のサイディング(外壁材)は、黒っぽい濃い灰色でセンスが光ります。土地面積が約200平方メートルもあるので、駐車スペースは詰めれば3台停めることができます。
6SLDKは6部屋と2つのリビングダイニングなどで構成されていますが、延べ床面積が193平方メートルもあるのでそれぞれの部屋は十分な広さが確保されています。

松山市松末1丁目は、JR松山駅まで道路距離で5キロほどの場所にありますが、松山市民には郊外に感じられるかもしれません。
周囲は大規模住宅街が形成され、学校、医療機関、商業施設、飲食店などが充実しています。伊予鉄横河原線・福音寺まで500メートルほどです。

市中心部から外れてしまいますが、築浅であることと豪華な造りからすると約5,000万円の価格は納得できます。

今治市郷桜井4丁目の111平方メートル4SLDKが2,280万円

今治市郷桜井4丁目にある木造2階建て、土地面積196平方メートル、延べ床面積111平方メートル4SLDKが2,280万円で売りに出ています。2016年7月完成です。

土地が広々しているので、4台分の駐車スペースがあっても広い庭が確保されています。対面式キッチン、浴室、トイレの水回り設備は築浅物件らしく最新のものが使われています。

今治市郷桜井4丁目は瀬戸内海に面した地区で、近くに内海マリーナがありプレジャーボートが停泊している風景を楽しめます。
周囲に商業施設や医療機関はそれほど多くはありませんが、JR予讃線・伊予桜井駅まで500メートルほどです。伊予桜井駅から今治駅までJRで7分なので、生活で不便を感じることは少ないでしょう。
築浅物件であることを考えると、2,500万円を大きく割り込む価格はお値頃感があります。

移住者向け? 愛南町広見の広大な土地の家が1,250万円

愛南町は愛媛県内で松山市から最も遠い自治体です。愛南町役場から松山市役所まで道路距離で132キロもあり、自動車で2時間かかります。

その愛南町広見の木造1階建て、延べ床面積76平方メートル4SDKが1,250万円で売りに出ています。1973年3月完成です。
この物件の目玉は土地面積が7,633平方メートルもあることです。

庭には立派な木々が生い茂り、敷地内には田畑があります。この家ならガーデニングも家庭菜園も「プロレベル」で楽しむことができます。
住宅は広くない上に設備が「昭和レベル」ですのであまり期待できませんが、ただ使い勝手に支障はなさそうです。

愛南町広見は山間(やまあい)の小さな集落ですが、エレクトロニクスの株式会社レクザムの工場があります。地区内に飲食店が多いのはそのためでしょう。
愛南町には足摺宇和海国立公園があり、愛南町広見からは約20キロ、自動車なら30分ほどで到着します。足摺宇和海国立公園は海と森を同時に満喫することができます。
また高知県の一級河川にして日本最後の清流、四万十川まで、中村縮毛道路を使えば自動車で1時間ほどです。

1,250万円でこれだけの自然とこれだけの土地を手に入れられるのは、愛媛県ならではのことです。移住者の住居や隠れ家に絶好の物件です。

愛媛県の土地の売買状況

2018年の愛媛県内の公示地価の平均変動率(前年比)は、全用途が△1.2%減、住宅地も△1.2%減、商業地は△1.3%減でした(△はマイナス)。
いずれも前年よりは減少幅を縮めたものの、軒並み「△1.0%台」を記録したことは深刻に受け止める必要があります。
もちろん、土地の価格は個別の事情に左右されるので「絶対に上昇しない」とはいえませんが、上昇を期待して売却用の土地を持ち続けるのはリスクが高いといえるでしょう。

2018年の愛媛県公示地価の1平方メートル当たりの平均価格は次のとおりです。

  • 全用途71,400円/平方メートル
  • 住宅地53,700円/平方メートル
  • 商業地112,900円/平方メートル

26年連続で下落

愛媛県の公示地価の「2017→2018年」の推移は、全用途△1.8%→△1.2%、住宅地△1.8%→△1.2%、商業地△1.9%→△1.3%という結果でした。
全用途と商業地の平均変動率は1997年から26年連続で前年割れとなり、住宅地は21年連続の下落です。
つまり、縮小幅を縮めているのは事実ですが、下落が止まらないのも事実です。土地オーナーは「縮小幅が縮まっていること」に安堵することなく、「下落が止まらない」ほうを警戒すべきでしょう。

2018年公示地価の全国平均は、住宅地0.3%増、商業地1.9%増となっています。地方圏に絞っても、住宅地△0.1減、商業地0.5%増となっていて、愛媛県はこれを大きく下回ります。
それで「土地オーナーは売却活動をある程度進めておいたほうがよい」というアドバイスになるわけです。

松山市経済圏の不調が足かせに

各都道府県の公示地価をながめてみると、愛媛県のような地方県には次のような特徴があることがわかります。

  • 公示地価が順調な地方県は県庁所在地の自治体が堅調
  • 公示地価が不調な地方県は県庁所在地の自治体が不調

地方県の公示地価では、なかなか県全域で満遍なく底上げすることはできません。しかし東京・大阪・名古屋から離れた県でも、県庁所在地の自治体にビジネスやインフラが集中していると、その自治体の公示地価が上がるので県平均も好調に推移します。
例えば、2018年の北海道は住宅地0.0%(横ばい)、商業地2.3%増、宮城県は住宅地2.7%増、商業地4.8%増、広島県は0.6%増、商業地2.0%増、沖縄県は住宅地5.5%増、商業地5.6%増となっています。これらの県には「強い県庁所在地」があります。

ところが愛媛県では、県庁所在地の松山市ですら2018年公示地価の平均変動率は、全用途△0.2%減、住宅地△0.3%減でした。商業地でかろうじて0.2%増になっただけです。
そして松山市経済圏を形成する、周辺2市2町(伊予市、東温市、松前町、砥部町)、今治市、新居浜市、西条市も、軒並み下落しています。これでは県全域をけん引するどころか、かえって足かせになっています。
詳しい傾向や数字は以下のとおりです。

  • 周辺2市2町:住宅地、商業地ともに下落
  • 今治市:全用途△0.9%減、住宅地△0.8%減、商業地△1.5%減
  • 新居浜市:全用途△1.1%減、住宅地△1.1%減、商業地△1.6%減
  • 西条市:全用途△1.4%減、住宅地△1.2%減、商業地△2.1%減

ベスト3とワースト3

2018年公示地価の平均変動率のベスト3とワースト3は次のとおりです。

全用途の平均変動率ベスト3は、1位:松山市△0.2%、2位:松前町△0.7%、3位:今治市△0.9%でした。
ワースト3は、1位(最下位):大洲市△3.2%、2位:久万高原町△2.9%、3位:八幡浜市△2.8%でした。

住宅地の平均変動率ベスト3は、1位:松山市△0.3%、2位:松前町△0.5%、3位:今治市と四国中央市△0.8%でした。
ワースト3は、1位(最下位):大洲市△3.6%、2位:東温市△2.8%、3位:八幡浜市△2.7%でした。

商業地の平均変動率ベスト3は、1位:松山市0.2%、2位:松前町△1.4%、3位:今治市△1.5%でした。
ワースト3は、1位(最下位):久万高原町△3.5%、2位:八幡浜市と西予市と鬼北町と愛南町△3.0%でした。

松山市は「三冠」に輝きましたが、単純には喜べないでしょう。全用途と住宅地ではマイナスでした。上位2位と3位も、マイナスなのにトップ3入りしています。
3項目で上位2位になった松前町は松山市の西に隣接し、3項目で上位3位になった今治市は松山市の東に隣接しています。
つまり愛媛県の地価ランキングは、前年より下落している市が上位に食い込んできてしまうという結果になっています。

ワースト3に入っている大洲市、八幡浜市、西予市、鬼北町、愛南町は県南西部の「南予」地域にあり、松山市から離れています。松山市経済圏から離れているため、地価が落ちているのです。
では松山市経済圏が安泰かというとそうでもなく、やはりワースト3にランクインしている久万高原町と東温市は松山市と接しています。
以上のことから、松山市経済圏の恩恵が受けられないと地価は下がりやすくなるものの、恩恵を受けられる地域でも地価が下がることがわかります。

まとめ~元気なだけに警戒強化を

愛媛県は四国のリーダー的な存在で、観光業も順調です。多くの国民が愛媛県に対して「暖かい」「ミカン」といったよいイメージを持っているのではないでしょうか。
ただ、元気な県だけに、愛媛県内の不動産オーナーは警戒を強化したほうがよいでしょう。それは「元気=経済が順調」と錯覚してしまうからです。
適正価格で中古マンションと中古戸建てと土地を売却するには、冷静に「今の」市場動向を見極めなければなりません。

冷静に愛媛県内の不動産市場を観察すると、厳しい数字が見え隠れしています。この状況を反転させる材料に乏しいだけに、愛媛県内に売却用の不動産を保有している方は「売れる時に売る」姿勢でいたほうがよいでしょう。
まずは不動産仲介業者に査定を依頼して、いつでも売却活動をスタートできるようにしておいてはいかがでしょうか。