群馬県の中古マンション、中古戸建て、土地の相場と不動産売却事例をみてみましょう。
2013年のアベノミクス開始から5年目の2018年は、日経平均がバブル以来の最高値をつける場面があるなど、「失われた20年」は完全に終結したといっていいでしょう。

景気の回復は不動産価格を押し上げる効果があるので、群馬県内に売却したい中古マンション、中古戸建て、土地を保有している方のなかには、「そろそろ塩漬けしていた物件を処分できるのではないか」と期待している人もいるのではないでしょうか。

しかし結論をいうと、「群馬県の中古不動産の『売り時』を判断することは難しい」となります。判断が難しい理由については、後ほど詳しく解説しますが、首都圏や大都市圏に訪れている好景気が「大波」だとすると、群馬県に届いている波は「小波」にすぎないからです。

いま売却してしまったほうがいいのか、東京五輪の2020年直前まで引っ張ったほうが得策なのかは、「案件ごと、地域ごとに不動産市況を観察しないとわからない」という状況で、群馬県の不動産オーナーの悩みはしばらく続きそうです。

群馬県の不動産価格に影響を与えそうなトピックス

まずは群馬県内の不動産価格に影響を与えそうな経済ニュースやトピックスをみていきましょう。

ポテンシャルはある

そもそも群馬県は、不動産を売却しやすい都道府県ではない、といえます。なぜなら県としてのブランド化に成功しているとはいいがたいからです。ブランド総合研究所の2017年の地域ブランド調査で、群馬県は47都道府県中41という成績だったのです。過去の記録では2012年に47位を記録しました。
中古マンションや中古戸建ては、人々が「住みたい」と思う地域の物件ほど高く売ることができます。そういった意味では、群馬県内の不動産売却はスタート時点から出遅れているようなものです。

しかしこれは群馬県全体のイメージであって、県内の個別地域を見渡すと、キラリと光る地域も存在します。
県庁所在地の前橋市は、野村総合研究所の2017年の都市成長可能性ランキングで、「子育てしながら働ける環境がある」部門で100市中2位でした。この結果は、小売業や医療機関、公園や緑地の多さが高く評価されたものでした。
また桐生市は出版社の宝島社の「住みたい田舎ベストランキング」の総合部門で、全国8位を獲得したことがあります。

このように群馬県にまだ表に現れていないポテンシャルが存在しています。

決して不調ではないが好調とはいえない

株式会社都市未来総合研究所によると、2013年から始まったアベノミクス以降、日本国内全体の景気と地価と不動産価格には次のような相関関係があります。

  • 景気がよくなると不動産売買額は敏感に反応し上昇する
  • 不動産の貸し出し市場は、景気がよくなる前に先行して上向く
  • 景気がよくなるとすぐに住宅地価格が上昇し、次に商業地が動き始める。工業地は景気との相関関係はない
  • 景気がよくなると3~6カ月後に賃貸住宅市場が活性化する。賃貸住宅市場の活性化は、「空室率の改善→賃料の上昇」という順に起きる
  • 景気がよくなると賃貸オフィスビルと賃貸マンションの賃料が上昇する

景気が上向くとほとんどの不動産指標も上向くことがわかります。
つまり、群馬県内に売却したい中古マンション、中古戸建て、土地を保有しているものの、希望する価格で購入してくれる買主が現れず「塩漬け」にしている方は、群馬県の景気が改善したというニュースが出てきたら「売り時」とみたほうがよい、といえます。

ただ2018年に入っても群馬県全域の景気は、「不調ではないが決して好調とはいえない」状況です。
詳しくみてみましょう。

日銀の群馬県の景気判断は微妙。不動産オーナーの悩みは続きそう

日銀前橋支店は、2018年10月に群馬県の景気について「回復している」としました。この表現は一見よさそうにみえますが、実は前回の景気判断と同じ表現なので、群馬県の景気判断は据え置かれた状態です。
個人消費の判断が下がったことが、設備投資の引き上げを相殺してしまいました。
群馬の3大温泉地、草津、伊香保、水上の宿泊客数が8カ月連続で前年を下回るなど、観光業が足踏み状態だったことも景気に悪影響を及ぼしています。

やはり2018年10月に公表された日銀の企業短期経済観測調査(短観)でも、群馬県の業況判断指数は前回より4ポイント悪化しました。
同期間、茨城県が7ポイント改善しているのと対照的です。
群馬県は工業が盛んな自治体ですが、製造業が足を引っ張る形になりました。

この微妙な景気状況のなかで、売却不動産のオーナーはどのようなアクションを起こしたらいいのでしょうか。取りうる対応は次の2つのうちのいずれかになります。

  • 好景気の波が来ないうちに景気が後退するなら、今売ってしまったほうがよい
  • 2020年の東京五輪までに群馬県の景気も上向くなら、もう少し待ちたい

「今のうちに売ってしまう」という判断は無難です。仮に群馬県内の景気が上向いたとしても、バブル期のような異常な高騰は期待できません。それなら不動産を保有し続けるコストを考えると、今売るのは合理的といえるでしょう。

ただ日銀が2018年10月に短観を発表した後、日銀前橋支店長が「この悪化は一時的なものと考えられる」と発言しています。
この見通しを信用するのであれば、2020年直前まで売却しないでおけば、多少の価格上昇が見込めそうです。

群馬県の中古マンションの売買状況

群馬県内の中古マンションの売買状況は、決して活況とはいえず「しっかりした価格」がつきにくい状況が続いています。
ただ前橋市や高崎市には大規模マンション建設の動きがあり、これが中古マンション市場にどう影響するか見極める必要があるでしょう。

住友不動産が前橋市の再開発に合わせて120戸の分譲マンションを建設

群馬県内の中古マンション市場に影響を与えるニュースを紹介します。

住友不動産は2017年3月、前橋市城東町で地上12階建て120戸の分譲マンション「シティテラス前橋広瀬川」の建設に着工しました。2019年1月完成予定です。
マンション名通り前橋市民の憩いの場である広瀬川に面した自然を感じられる立地です。

前橋市は、中心市街地の老朽化した建物の更新と定住人口の増加を目指し、再開発「前橋市市街地総合再生計画」に取り組んでいます。広瀬川エリアはこの計画の重点地区で、住友不動産の「シティテラス前橋広瀬川」は再開発の目玉となる新築建設物です。

新築マンションが中古マンション市場に与える影響は、よい方向に向くものと悪い方向に向くものがあります。
新築マンションが建つと、近くに建っている中古マンションが陳腐化します。これが悪影響です。
しかし新築マンションに入居する新住民たちが地域を活性化させると「素敵な街」になるので、そういった地区に住みたい人が流入してきて中古マンション市場も動きだします。これがよい影響です。

では住友不動産の「シティテラス前橋広瀬川」は、地域によい影響を与えるのでしょうか。このマンションが完成しても、前橋市の中古マンション市場に与える影響は限定的とみるべきでしょう。
というのも、前橋市に隣接する群馬県内人口第2位の高崎市のJR高崎駅近くに、「シティテラス前橋広瀬川」のおよそ2倍の規模のマンションが建つからです。

JR高崎駅前の「群馬県最高」の28階建てマンションに期待できる理由

高崎市もJR高崎駅東口の再開発事業に乗り出しています。そのエリアに東京建物と地元企業などが2017年7月、28階建て225戸の分譲タワーマンションの建設に着工しました。2020年2月完成予定です。
28階建ては群馬県内最高層で、しかもマンションが建つ場所は、大型家電量販店やホテルなどが並ぶ一等地です。

このマンションだけでも高崎市内の中古マンション市場は大きなインパクトを受けますが、JR高崎駅東口再開発ではこのほかにも次の3つの大型プロジェクトが進行中です。

  • コンベンション施設「Gメッセ群馬」
  • 高崎芸術劇場
  • 高級ホテル

このうち高級ホテルについては、高崎市が事業者を公募しています。高崎市としては高品質かつ大規模宴会場を備えたホテルの建設を希望しています。その希望を現実のものにする事業者が現れれば、市は土地取得を仲介したり補助金を支給したりします。
ホテルの規模は客室200~300ほどで、商業施設などを含む複合ビルになるという情報もあります。

大規模開発が高崎市で続々始まっているのは、軽井沢まで北陸新幹線で15分というロケーションのよさです。訪日外国人観光客の急増を受け高崎市は、国内有数の観光地・軽井沢のインバウンド需要を狙っているわけです。

長野県軽井沢町は知名度こそ全国区ですが、同町の人口は2万人にすぎません。一方、高崎市の人口は37万人です。街の再開発の規模では、スケールメリットを活かすことができる高崎市に軍配が上がります。
高崎市の街の魅力が向上すれば、「軽井沢の玄関口」として地位を築くことも不可能ではありません。
この動きは、高崎市のブランド化戦略にほかなりません。
これは中古不動産オーナーには喜べる動向です。ブランド化が成功し「JR高崎駅周辺に住みたい」という人が増えれば、近隣の中古マンションが値上がりすることは十分考えられます。

群馬県の中古マンション市況

不動産会社が公表しているデータから、群馬県の中古マンション市況を表にしました。
ご覧のとおり、町村にはほとんど中古マンション市場は形成されていません。
また市でも市場が形成されているのは前橋市、高崎市、伊勢崎市、館林市だけです。

群馬県の中古マンションの市況
地区 ~40m² ~50m² ~60m² ~70m² ~80m² ~90m² ~100m² 101m²~
前橋市 298万円 880万円 745万円 2,290万円 2,040万円 1,850万円
高崎市 328万円 923万円 2,893万円 1,577万円 3,780万円
桐生市
伊勢崎市 1,199万円 2,350万円
太田市 1,659万円
沼田市
館林市 1,308万円 1,800万円 2,090万円
渋川市
藤岡市
富岡市
安中市
みどり市
北群馬郡榛東村
北群馬郡吉岡町
多野郡上野村
多野郡神流町
甘楽郡下仁田町
甘楽郡南牧村
甘楽郡甘楽町
吾妻郡中之条町
吾妻郡長野原町 198万円 950万円
吾妻郡嬬恋村 90万円
吾妻郡草津町 35万円
吾妻郡高山村
吾妻郡東吾妻町 350万円
利根郡片品村
利根郡川場村
利根郡昭和村
利根郡みなかみ町 200万円
佐波郡玉村町 798万円
邑楽郡板倉町
邑楽郡明和町
邑楽郡千代田町
邑楽郡大泉町
邑楽郡邑楽町

中古マンション市場は低調? 前橋市と高崎市で逆転現象

「前橋市と高崎市に中古マンション市場が形成されている」といっても、価格が安定していません。前橋市の中古マンション価格は、「~70平方メートル」帯が2,290万円で最も高く、次いで「~80平方メートル」帯の2,040万円、その次が「~90平方メートル」帯の1,850万円となっています。
中古マンションを含む不動産は通常、広いほど価格が高くなります。それが完全に逆転しているのです。
高崎市でも「~70平方メートル」帯のほうが「~80平方メートル」帯より高値になっています。
これは市場に出回る中古マンションが少なく、特異な価格設定の中古マンションに平均価格が引っ張られているためと考えられます。

前橋、高崎両市の中古マンション市場は低調といってよさそうです。
この地域で中古マンションの売却を検討しているオーナーは、好条件が出るまで粘り強く待つか、それとも購入希望者が現れたらディスカウントして手放してしまうか、厳しい選択を迫られるでしょう。

群馬県の中古戸建ての売買状況

群馬県の中古戸建て市場は、中古マンション市場と比べるとまだ好調です。
「101平方メートル~」帯しか市場は形成されていませんが、それでも群馬県内人口トップ3の前橋市、高崎市、太田市は2,000万円台に乗せていますし、人口4位ながら太田市を猛追している伊勢崎市も1,900万円と健闘しています。
さらに郡部でも2,000万円台の中古戸建てがあります。この結果をみると群馬県民は「広い戸建て志向が強い」ことがわかります。

群馬県の中古戸建ての市況(相場が形成されている「101平方メートル」のみ掲載)
地区 101m²~ 地区 101m²~
前橋市 2,299万円 北群馬郡榛東村 1,946万円
高崎市 2,197万円 北群馬郡吉岡町 1,815万円
桐生市 1,910万円 多野郡上野村
伊勢崎市 1,900万円 多野郡神流町
太田市 2,049万円 甘楽郡下仁田町
沼田市 548万円 甘楽郡南牧村
館林市 1,851万円 甘楽郡甘楽町 1,890万円
渋川市 1,876万円 吾妻郡中之条町 998万円
藤岡市 2,015万円 吾妻郡長野原町 998万円
富岡市 2,027万円 吾妻郡嬬恋村 500万円
安中市 1,594万円 吾妻郡草津町
みどり市 1,796万円 吾妻郡高山村
吾妻郡東吾妻町
利根郡片品村
利根郡川場村
利根郡昭和村
利根郡みなかみ町
佐波郡玉村町 1,566万円
邑楽郡板倉町 1,049万円
邑楽郡明和町
邑楽郡千代田町
邑楽郡大泉町 2,097万円
邑楽郡邑楽町 2,376万円

スバル効果で「太田市と近隣2町」が2,000万円超

郡部の「101平方メートル~」帯で2,000万円超を果たした大泉町と邑楽町は、いずれも県内人口3位太田市に接しています。もちろん太田市の中古戸建ての価格も2,049万円で2,000万円を超えています。
太田市には自動車メーカー・スバルの本工場があります。スバルの知名度は、日本国内ではトヨタやホンダや日産ほど高くはありませんが、アメリカでの業績が好調で「儲かっている会社」です。そのため太田市は、財政力指数や生産年齢人口比率が高いことで知られています。
太田市は、スバル本工場の住所が「群馬県太田市スバル町1-1」となっているほどの「スバル城下町」です。
スバルは2018年3月期連結決算で、販売台数、売上高ともに6期連続で過去最高を記録しました。そのスバル効果が隣接する町の中古戸建て市場にも及んでいると考えられます。太田市、大泉町、邑楽町に保有している中古戸建ての売却を検討している方は、いまは「売り時」といえるかもしれません。

群馬県の土地の売買状況

群馬県では土地の価格も、元気がありません。売買状況を概観してみましょう。

2018年地価公示、群馬県はマイナス0.5%

群馬県が2018年1月に公表した地価公示では、県内の全用途を合わせた対前年比平均変動率はマイナス0.5%でした。前年はマイナス0.6%でしたので、ほぼ同じペースで地価が下がっていることになります。
群馬県の地価公示は、1993年に下落に転じて以降26年連続で前年比割れとなりました。
土地の用途別でみると、住宅地マイナス0.6%、商業地マイナス0.4%、工業地マイナス0.3と「全滅」です。

利便性が高く住環境に優れた中心部の住宅地価格は上昇している

ただ2018年1月の群馬県内の地価公示では好材料もありました。それは、個別の地点を観察するとプラスに転じた場所が増えていた点です。
プラスになった地点数は以下のとおりです。

プラス地点数 住宅地 商業地 工業地 計(全用途)
2018年 36地点 18地点 1地点 55地点
2017年 32地点 11地点 1地点 44地点

住宅地のプラス地点が多かったのは次の自治体です。
前橋市、伊勢崎市、太田市、みどり市
群馬県の担当者は「JR高崎駅周辺など、利便性が高く住環境が優れた中心市街地の住宅地の地価は上昇している」と分析しています。

地価の全体が落ち込むなか、中心市街地の地価が上昇しているということは、都市部と地方部の地域間格差がますます広がっていることを意味しています。

群馬県の土地市況

群馬県の土地市場ですが、こちらも「~100平方メートル」以下の市場は形成されていません。以下は「101平方メートル~」のみの比較となってしまいます。

群馬県の土地の市況(相場が形成されている「101平方メートル」のみ掲載)
地区 101m²~ 地区 101m²~
前橋市 1,057万円 北群馬郡榛東村 350万円
高崎市 1,170万円 北群馬郡吉岡町 1,604万円
桐生市 677万円 多野郡上野村
伊勢崎市 911万円 多野郡神流町
太田市 807万円 甘楽郡下仁田町
沼田市 甘楽郡南牧村
館林市 1,004万円 甘楽郡甘楽町
渋川市 561万円 吾妻郡中之条町
藤岡市 806万円 吾妻郡長野原町 1,325万円
富岡市 1,045万円 吾妻郡嬬恋村 300万円
安中市 592万円 吾妻郡草津町 650万円
みどり市 603万円 吾妻郡高山村
吾妻郡東吾妻町
利根郡片品村
利根郡川場村 980万円
利根郡昭和村
利根郡みなかみ町
佐波郡玉村町 657万円
邑楽郡板倉町
邑楽郡明和町 482万円
邑楽郡千代田町
邑楽郡大泉町 829万円
邑楽郡邑楽町 825万円

吉岡町と長野原町で1,000万円越え。「売り時」は今か?

町で1,000万円を超えたのは、吉岡町と長野原町の2町でした。
吉岡町は前橋市と接し、長野原町は国内有数の温泉地がある草津町に接しています。ただこれは、いずれも広大な土地が売りに出たため、「瞬間風速」的に価格が急騰しただけです。
しかし土地オーナーが「売り時」を今に決めたことに大きな意味があります。
2019年10月には消費増税が控えていて、土地の購入希望者からすると実質的に土地は値上がりすることになり買いにくくなります。この土地オーナーは、「土地購入マインドが冷え込まないうちに売りに出そう」と判断したのかもしれません。

まとめ~我慢の時か、決断の時か

大型再開発プロジェクトが進んでいる高崎市や、県庁所在地の前橋市ではやや持ち直しているものの、そのほかの自治体の不動産売買は「活況とはいえない」状況が続いています。
売却物件を抱えている群馬県の不動産オーナーは、いまを売り時とみるか五輪景気の盛り上がりを期待して待つべきか、悩ましい日々はしばらく続きそうです。