家を売却すると一時的に大きな額が収入として入るので、確定申告するべきかどうか迷いますよね。住まいの売却は一生にあるかないかの希な体験なので、売却後の確定申告に疑問を抱く人は多いでしょう。
「いつするの?」「そもそも確定申告はするもの?」「書き方が分からない」という人のために、不動産売却の確定申告についてお教えします。
不動産売却をしたら確定申告は絶対必要なの?
不動産を売ったからといって必ずしも確定申告が必要なわけではありません。
そもそも確定申告って?年末調整とは何が違うの?
会社勤めをしていると、一年の終わりに「年末調整」の書類を提出します。これは、会社が毎月の収入に合わせて徴収する所得税や住民税の払い過ぎた分を年末に調整するものです。月々の徴収額は、概算で納めていますが、人によって「扶養控除」「保険料控除」などが違います。年末に書類を提出し、再計算したうえで、「払い過ぎた分を返還してもらう」ということもあります。
しかし、この確定申告はあくまでも「会社の給料」に対しての計算です。不動産を売って収入があった場合は、給与所得とは切り離して税額計算されるので、個人的に確定申告が必要になります。
不動産売却で確定申告が必要なケース
結論から言うと、確定申告が必要なのは、不動産売却で「利益が出た人」。
「利益」とは、売却代金すべてを指すわけではありません。売却時には、不動産会社に支払った仲介手数料や登記のための費用、収入印紙代などの「経費」がかります。この経費を引いてプラスになったときに「利益があった」と判断されますので、「確定申告書」の提出が必要になります。
利益がなければ確定申告書を出さなくてもいい?
利益がなければ原則的には申告書の提出は不要。確定申告というと「税金を払う」というイメージがあるため、提出することに抵抗がある人もいるかもしれません。しかし、実は確定申告で税金が軽減されこともあるので、不動産売却で利益が出なくても「税金を抑える」という意味で確定申告をした方がいい場合もあります。
課税譲渡所得金額の計算方法について
利益がプラスかマイナスかは
【売却代金-(取得費+譲渡費用)=譲渡所得】
という算式に当てはめて計算すればOKです。
譲渡所得の具体的な計算例
例をあげて説明します。
【計算例】売却代金①-(取得費②+譲渡費用③)=譲渡所得
- 売却代金⇒4400万円
- 取得費⇒4100万円
- 譲渡費用⇒120万円
上記に当てはめると、4400万円-(4100万円+120万円)=180万円となり、180万円が利益と考えられ、確定申告が必要です。
取得費とは何を含む?
売却した不動産を購入したときにさかのぼって考えます。ただし、気をつけたいのが「購入したときの額そのもの」では計算しないことです。
建物は、年数が経つにつれて次第に劣化していきます。
例えば、4300万円で購入した物件でも、その価値は年々薄れていき価値がさがります。そのため、通常は当時の購入金額をベースに法定耐用年数に当てはめて計算し、その分を控除したものが「購入代金」になります。
また、購入したときに支払った不動産会社への仲介手数料、登記のために司法書士へ支払った報酬なども「取得費」の一部になります。
取得費が不明なケースはどうする?
購入時の書類をなくした、相続で得た不動産だから詳細が分からないなど、古い不動産を売却するとき、「購入代金」が不明だということもあるでしょう。そんなときには、売却代金の5%相当を取得費として計算できます。
例えば、4000万円で売却することができたら、取得費の部分を「4000万円×5%=200万円」とすることができます。
譲渡費用とは?
譲渡費用には、いろいろな諸経費が含まれます。仲介手数料や登記費用はもちろん、売却時に建物を解体した費用や整地費用、不動産取得税なども譲渡費用として計上できます。
損失が多いケースでも確定申告をした方がいい理由
原則的には、不動産を売って「利益が出た」なら確定申告は必須です。
ただ、計算式に当てはめて計算すると「むしろ損失が大きかった」という「譲渡損失」のケースもあるでしょう。この場合、利益が出てないので確定申告は基本的には必要ありません。
そのため確定申告しなくても注意をされることはありませんが、申告することによって「節税」できるケースもあるので注目です。
譲渡損失の分を「損をしましたよ」と申告をすることで、給料などの他の所得から控除することができるので、税金を抑えることができるかもしれません。これを「損益通算」と言います。
ただ、なかにはその年の所得だけでは相殺できないほどマイナス額が大きいことがあるかもしれません。そんな場合は、翌年度から3年の間、損失がゼロになるまで控除を繰り越す「繰越控除」が適用されることもあります。
どちらも税額を抑えることができる嬉しい節税方法なのですが、マイナスが出たら必ず利用できるわけではありません。
売却時に所有期間を5年超えていること、居住用の不動産であること、売却のための契約直前の時点で住宅ローンの残債があること…など、細かい要件があります。これを満たすと、損益通算あるいは繰越控除の特例を受けられるかもしれません。国税庁のHPを見ながらチェックしましょう。
いつまでに確定申告書を出すべき?
確定申告はいつでもできるわけではないので注意しましょう。
売却した翌年の2月16日~3月15日内に申告をする
確定申告は前年度分の所得に対して行われるので、不動産を売った「次の年」の2月16日~3月15日の期間内に手続きしなければなりません。申告期間が1ヶ月と短いので、忘れないように注意しましょう。
確定申告時期は混み合う
近くの税務署に行けば、申告に必要な書類や書き方を教えてもらうことができます。しかし、毎年確定申告の時期の税務署には、不動産売却で収入があった人以外にも大勢の人が訪れ、かなり混み合います。
しかも仕事をしていると平日に行くのが難しくタイミングを逃すことも少なくありません。ギリギリになって焦ると、提出書類や書き方に不備があったりして、慌てるもの。余裕を持って行動するようにしましょう。
窓口以外でも申告は可能
「混み合う窓口に行く時間がない」という人は、窓口以外での申告方法を知っておくと便利です。申告書は、税務署だけでなく、国税庁のHPからも入手することが可能です。なるべく早めに入手して記載し、時期が来たら郵送するという方法もいいでしょう。また、「窓口が閉まった後や土日祝日なら税務署に行くことができる」という人なら、時間外収受箱(税務署の外に設置されている時間外専用の受付け箱)に投函してもOKです。仕事が終わってからの遅い時間でも提出ができるので、便利ですね。
また、インターネットを利用して電子申告をすることもできます。
家にいながら申告できる「e-Tax」とは?
窓口に行ったり、郵送したりしなくてもOKの申告スタイルが「e-Tax」です。「家にいながら」申告ができるのでとても便利ですが、ただ、注意しなければならないことがあります。e-Taxの利用には、事前の準備が必要ということ。直前になって「e-Taxで申告しよう」と思っても利用することはできません。
- システムを利用できる環境が整っている(インターネット環境は必須)
- 本人確認のための電子証明書を取得する
- 利用者識別番号および暗証番号を取得する
- ソフトのダウンロードをする
これらの初期登録を確定申告時期よりも前に、余裕を持って行っておかなければなりません。
電子申告ですので、郵送や窓口など書面で提出するときに必要な添付書類を省略することができます。それに、時間関係なくいつでも申告することができるメリットがあります。
ただ、申告のための準備に時間がかかるデメリットを感じる人もいるでしょう。本人確認のため電子証明書が必要ですので、公的機関が発行するマイナンバーの読み取りに対応したICカードリーダライタというものを数千円で購入しなければなりません。
「電子申告は楽そう」と思えるかもしれませんが、慣れていなければ手間取ることもあるでしょう。
窓口での提出、郵送での提出、電子申告など、確定申告にはいくつかの提出方法がありますが、どの方法を選択するにしても余裕を持って進めるようにしましょう。
確定申告書の書き方や提出書類
確定申告を出すときには、申告書や添付書類が必要です。
申告に必要な基本的な書類は?
確定申告するときには「申告書B」の他、給与所得とは別に課税される分離課税ですので、「分離課税申告書」への記入が必要です。書き方は国税庁のHPに詳しく説明されているので、それを見ながら間違いのないように記入していきましょう。
パソコンがあるなら国税庁HPにある「確定申告書作成コーナー」を利用すると大変便利です。記入欄に順番に入力していけば、面倒な計算も自動で行ってくれます。自宅にパソコンとプリンターがあれば、印刷して提出することも可能です。
添付書類はいるの?
確定申告では、前項であげた基本的な申告書以外にも添付しなければならない書類がいくつかあります。売却した物件情報や売却額を記載する「譲渡所得の内訳書」が、売却した売主のもとに税務署から送られてくるので、申告時期までなくさないように保管しておきましょう。
また、売買契約書の写し、売却に関係する費用の領収書のコピーなど、申告内容に応じて必要なものがあるので、事前に国税庁のHPで確認しておきたいところです。
書類を揃えてから申告書の作成をしよう
初めて確定申告をするときは、書き方が分からなくて不安を覚えるかもしれませんね。
申告書や内訳書には、売却した不動産の正式な所在地や売却代金、買主情報、給与の金額などを記入する必要があります。
売却時の書類(売買契約書や仲介手数料の領収書など)はもちろんですが、給与の源泉徴収票など必要書類をすべて手元に揃えておいてから書くことをおすすめします。