一戸建て住宅の売却は、意外と手間がかかるので、所有している一戸建て住宅の売却を不動産会社に任せきりにする人はかなりいます。そのため、売買契約を交わしたあとに「もっと高く売れたはずなのに」と後悔する人があとを絶ちません。
そこで一戸建て住宅を高く売りたい売り主は、これから紹介する8つの「ひと手間」を1つでも多く実行してみてください。

一戸建て住宅と家族

売り急がない、売り遅れない

一戸建て住宅の売却は、タイミングが大切です。売り急がないようにしながら、売り遅れないようにしてください。

なぜ売り急いではいけないのか

まず、なぜ売り急いではいけないのでしょう。
「売り急ぐ」とは、売り主が自分の家の価値を把握していない段階で売ってしまうことです。例えば、本来2,100万円の価値がある一戸建て住宅を2,000万円で売ってしまう、といったようなことです。

しかし自分の家の価値を知ることは簡単ではありません。土地の価格には基準がありますが、家には基準がないからです。中古住宅の価格は、「屋根がいくら、壁がいくら、窓がいくら、玄関がいくらだから総額で〇万円」とはなりません。不動産会社や購入希望者は「全体的に見て大体〇万円くらい」と希望価格を出します。
それに対し売り主は「〇万円は安すぎます。この家には□万円の価値があるはずです」と、根拠を持っていなければなりません。その根拠が当てずっぽうだと、不動産会社や購入希望者から「ぼったくり」と思われて、交渉は決裂してしまいます。
自分の家に付ける値段は、相場を根拠にするとよいでしょう。相場については次の章で解説します。

売り遅れると価値が落ちる

次に、なぜ売り遅れてはいけないのか、見てみます。
一戸建て住宅は必ず劣化します。時間の経過によって家に価値が生まれることはありません。確かに古民家が高値で取り引きされることはありますが、これはレアケースです。普通の一戸建て住宅の価格は、時間の経過とともに値下がりします。

よって、売り主が「自分の家を□円で売る」「□円にした根拠はこれ」と定めることができたら、その価格で買ってくれる人がいればすぐに売ってしまったほうがいいのです。
売りに出してからすぐに購入希望者が現れたのに、「もう少し探せばもっと高い価格で買ってくれる人が出てくるのではないか」と考えていると、売り時を逃すことになります。

相場を知る

売り主は売却する一戸建て住宅の売却額を決めますが、そのとき「高ければ高いほうがよい」と考えることは禁物です。「ダメ元で高い値段を付けたらそのとおりに売ることができた」ということは、不動産売買では滅多に起きません。むしろ不動産会社や購入希望者に「高い金額を吹っかけられた」と思われてしまいます。そんなことで信用を失ってしまうと、最終的にたたき売りすることになりかねません。

不動産会社の無料相談を活用しよう

そうならないように相場を把握しましょう。相場を把握しておけば、購入希望者に自信を持って「なぜこの値段なのか」を説明できます。
相場を知るには、不動産会社の無料相談を活用することが最も簡単で最も確実な方法です。不動産売買のプロではない売り主が、家の周辺の不動産市場を調べるのは非現実的です。

ほとんどの不動産会社は「今はまだ売却するつもりはないが、いくらくらいになるのか知っておきたい」という前提でも、大体の値段を教えてくれます。
相場を知るには、できれば3社以上の不動産会社に相談したほうがいいでしょう。3社から自分の家の大体の値段を聞いておけば、実際の売却額はその価格帯のなかに収まるはずです。

また親族や知人など知り合いに売ろうと考えている売り主も、不動産会社に相場を尋ねておいたほうがいいでしょう。知り合いとの売買では、相場より高く売っても安く売ってもトラブルになる可能性があるからです。

不動産取引情報提供サイトで相場をつかむこともできる

「不動産会社に相談したら営業攻勢をかけられるのではないか」と心配する方は、不動産流通機構(レインズ)が開設している「不動産取引情報提供サイト」を利用してはいかがでしょうか。
売りたい一戸建て住宅がある住所や家の大きさなどを入力すると、過去に成立した似た条件の不動産売買が表示され、その際の価格がわかります。
値段を調べてもサイト運営者から連絡が来ることはありません。
不動産取引情報提供サイトのURLは以下のとおりです。
http://www.contract.reins.or.jp/search/displayAreaConditionBLogic.do

自分の家を魅力と欠点を知る

売り主は自分の家を売りに出す前に、その家の魅力と欠点を正確に把握しておいたほうがいいでしょう。

屋根裏部屋の雰囲気も魅力になる

家の魅力とは、具体的には次のようなものです。

  • バーベキューができるウッドデッキ
  • リフォームしたばかりの水回り
  • 最新のシステムキッチン
  • 最新のトイレシステム
  • 丹精した庭木
  • 汚れがつきにくい外壁
  • 居間の窓からの眺望
  • 日当たりのよさ
  • 屋根裏部屋の秘密基地のような雰囲気
  • 駅、公共施設、商業施設からの近さ

魅力はなんでもかまいません。売り主が「いいな」と感じている部分を1つでも多くメモに書いていってください。
このように自分の家の魅力を「見える化」しておくと、売り主が不動産会社の担当者や購入希望者から質問を受けたとき、スラスラと説明できるようになります。
購入希望者は魅力が多い家を求めているので、売り主が自分の家の魅力をしっかりプレゼンできれば、高値で買ってもらえるかもしれません。

欠点の見える化はトラブル回避に有効

自分の家の欠点も見える化しておいたほうがいいでしょう。
一戸建て住宅の欠点には次のようなものがあります。

  • 雨漏り
  • シロアリ被害
  • 使いにくい部屋
  • 使いにくい設備
  • 日当たりが悪い部屋
  • 駅、公共施設、商業施設からの遠さ

一戸建て住宅の売却では、売り主は「積極的に欠点をPRする必要はないが、尋ねられたら正直に答えなければならない」という暗黙のルールがあります。
例えば、売り主が自ら進んで「シロアリ被害に遭いましたが、2年前に駆除済みです」と伝える必要はありませんが、購入希望者から「シロアリ被害はどうですか?」と聞かれたら、正直に答えなければなりません。
そこでもし「シロアリ被害を受けたことはありません」と嘘をついた場合、売買契約成立後に大きなトラブルになる可能性があります。損害賠償を求められることも考えられます。

リフォームまたはリノベーションをする

一戸建て住宅にリフォームまたはリノベーション(以下、「リフォームなど」と表記します)を施しておけば、高値で売れるかもしれませんが、リフォームなどの費用を回収できないリスクもあります。
リフォームは「新しいものに取り替える」、リノベーションは「新しい価値を足す」という違いがあります。また、リフォームの料金は数十万~数百万円、リノベーションは数百万円~1千万円程度といった違いもあります。

リフォームなどをすべきかどうかは、「リフォームなどの料金」と「リフォームなどを施したことによる売却額上昇効果」の比較で決まります。

リフォームなどの料金<リフォームなどを施したことによる売却額上昇効果

となれば、リフォームなどをしたほうがいいでしょう。
例えば、そのままでは2,000万円でしか売れない家に、500万円かけてリフォームをしたところ、2,600万円で売ることができたら、リフォームをしたほうがいいわけです。

しかし、「リフォームなどを施したことによる売却額上昇効果」を事前に知ることは簡単ではありませんが、一般的に次のような傾向があります。

  • 都心部の人気のエリアにある一戸建て住宅はリフォームなどによる売却額効果が高い
  • リフォームよりリノベーションのほうが売却額上昇効果は高い
  • 地方の一戸建て住宅はリフォームなどの効果は薄い

「リフォームよりリノベーションのほうが売却額上昇効果は高い」についてですが、例えば、トイレを最新式のものに換えても、トイレの改修では購入希望者の購入意欲を高めることが難しいので、売却額の引き上げ効果は薄いでしょう。
一方で、居間とキッチンの間を仕切る壁を取り去り、キッチンをアイランド型にするイノベーションを行えば、感度が高い購入希望者に価値を認めてもらえるかもしれません。

土地の権利を明確にする

一戸建て住宅の売却では通常、土地も一緒に売ります。そのとき、土地の権利を明確にしておくことを忘れないでください。
特に地方の一戸建て住宅では、隣の家の家主と「なんとなく共有している土地」が珍しくありません。そういった家を相続して売却するときは、測量会社などに依頼して「地積測量図」や「境界確認書」などを作成してもらう必要があります。

地積測量図は土地の面積を明らかにした図面で、法務局が受理することになります。地積測量図は、本来は土地を登記するときに添付するものですが、何かの手違いで不明になっていることがあります。
境界確認書とは、隣地の方々と協議して土地の境界を定めたことを証明した書類です。土地の測量が必要になります。
一戸建て住宅を売却したあとのトラブル回避のために土地の権利を明確にしておきましょう。

しっかりした内覧会を企画する

まれではありますが、一戸建て住宅が相場の価格より高く売れることがあります。それはしっかりした内覧会を開き、購入希望者に高く評価してもらえたときです。
購入希望者は普通、相場の値段かそれ以下の価格で買いたいと考えますが、「その家にしかない魅力」を発見できると高くても買おうとします。

個人でももちろん内覧会を開くことはできますが、1人でも多くの人に見てもらうには、やはり不動産会社に協力してもらったほうがいいでしょう。
不動産会社は手数料を取る代わりに、宣伝や段取りをしてくれるので、たくさんの人に集まってもらえますし、家を魅力的に見せる方法を知っています。

ただ不動産会社に内覧会を依頼するときも任せきりにせず、売り主自らがひと手間加えましょう。
第一印象の効果は長期間継続しますから、玄関、ガラス窓、外壁といった外観は念入りに掃除しておいてください。
もし売り主がその家に住みながら内覧会を実施する場合、家のなかを「すっきり、シンプル」にしておいてください。小物類は見えない場所にしまっておきましょう。洗面所や風呂、トイレなどに洗剤や清掃用具があると印象を著しく落としますので注意してください。

庭の草むしりや物置のなかの整理整頓にも気を配りましょう。購入希望者は、家主が普段手をかけない場所をチェックして、家の手入れ状況を推測しようとするからです。

内覧会当日は、カーテンは全開にします。そして晴れた日の昼間でも明かりを点けておいてください。内覧者が現れたときに慌てて点灯すると、イメージが悪くなります。
その家独特のニオイを消臭剤や芳香剤を使って消しておきましょう。ニオイ消しもニオイづけも1週間前から行うようにしてください。

内覧者は、「今ここに住み始めたらどのような感じになるか」を想像しながら家のなかを見て回ります。そのため家から売り主の生活臭が染み出ていると、よい印象を抱きません。
可能な限り無機的で人気(ひとけ)を感じさせないほうが、よい印象を与えることができます。

親族、知人に売る

一戸建て住宅は、不動産会社に売却を仲介してもらう以外に、親族や知人(以下、「親族など」と表記します)に売る方法があります。そのメリットとデメリットを紹介します。

親族などに売るメリットは、すべてを知って買ってもらえることです。この「すべて」には、家はもちろんのこと、売り主のことも含みます。一戸建て住宅の売買は、「千万円」単位の取り引きになりますので、大なり小なりトラブルやもめごとが発生してしまいます。そしてトラブルは大抵、買い主の「聞いていなかった」「知らなかった」という主張から始まります。
なので、すべてを知って買ってもらえれば、トラブルは回避できます。

ただ親族などと大金のやりとりをする場合は、現金一括払いが理想です。長期にわたる分割払いだと、支払いが滞ったときの対処や利子などを事前に決めておかなければならないからです。
中古といえども一戸建て住宅を現金一括払いで買うことができる人は多くないので、買い主が限定されます。これが親族などに売るときのデメリットです。

不動産会社を選ぶ

一戸建て住宅の売却は、信用できる親族などが現金で買ってくれるのでなければ、不動産会社に仲介を依頼したほうがいいかもしれません。
不動産会社に依頼すると手数料を支払わければなりませんが、デメリットはそれくらいで、あとのわずらわしい手続きはすべて任せることができます。
不動産会社に売却を仲介してもらう場合、必ず複数社に声をかけましょう。

3種類の契約から1つを選ぶ

不動産会社に一戸建て住宅の売却仲介を依頼する際には、不動産会社と契約を交わすことになります。契約の形態には「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3種があります。それぞれ一長一短あります。

専属専任媒介契約

声をかけた複数の不動産会社のなかから1社を選んで契約し、他社には売却仲介を依頼できなくなります。また、契約後に親族などが買ってくれることになっても、不動産会社を通さなければなりません。親族に売却しても手数料の支払いが発生するということです。
その代わり、契約を結んだ不動産会社には「売り主のために早く高く売ろう」という動機が生まれやすくなるメリットがあります。

専任媒介契約

専属専任媒介契約とほとんど同じで、売却仲介は1社にしか依頼できません。ただ親族などが買ってくれることになったら、不動産会社を通す必要はありません。
専属専任媒介契約も専任媒介契約も売り主を大きく制限することになるので、契約期間は3カ月に決められています。つまり専属専任媒介契約または専任媒介契約を結んでも、3カ月後には自動解約となり、他の不動産会社を利用することができるようになります。

一般媒介契約

複数の不動産会社と契約することができます。その代わり、契約を結んだ複数の不動産会社の「売り主のために早く高く売ろう」という動機は弱くなってしまいます。

仲介手数料には上限がある

不動産会社に一戸建て住宅の売却仲介を依頼し、その後売買が成立すると、売り主は不動産会社に仲介手数料を支払わなければなりません。
仲介手数料は以下のように上限額が決まっています。

  • 売却額200万円以下の部分:売却額の5%以内
  • 売却額200万超~400万円以下の部分:売却額の4%以内
  • 売却額400万円超の部分:売却額の3%以内
  • (別途消費税がかかります)

これは上限額なので、不動産会社と交渉することで下げることができます。

一括見積もり査定サイト

一戸建て住宅の売却を検討したら、まずはいろいろな不動産会社に簡単にアクセスすることができる「一括見積もり査定サイト」を使うことをおすすめします。
一括見積もり査定サイトを利用するには、サイトに登録し、複数の不動産会社からの連絡を待ちます。
一括見積もり査定サイトには、「地域密着型タイプ」「大手不動産会社を集めたタイプ」「興味本位で値段を知りたいだけの利用を歓迎するタイプ」などがあるので、自分のケースにマッチした不動産会社を選ぶことができます。
家を高く売るにはより多くの情報があったほうがいいので、一括見積もり査定サイトは売り主の味方になってくれます。