東京オリンピックまでは不動産の価格は上昇傾向にあるといわれており、今のうちに利用予定のない土地の売却をしてしまおうとお考えの方もいるでしょう。
土地売却をすると、売却した金額を収入として得られますが、その代わりにそう安くはない税金を支払う必要があります。
それらの税金には、土地売却など不動産売買取引においては絶対に課税されるものもあれば、利益が出た場合だけに課税されるものなどいくつかの種類があります。
土地売却をお考えの方は、ぜひ事前に税金について学んでおくことをおすすめします。
どのくらいの税金が課税されるのか、また適用される控除の特例があるのかなどについて事前に知っておくことで、税金が節約できる場合も多いのです。
税金は毎年税率が変更されたり、控除の内容が変わったりしますので、うっかり見逃がすと損をしてしまうことがあります。
土地売却による課税については、売主が法人か個人かでも違いますが、ここでは個人が土地売却をする場合に知っておきたい税金や諸費用、並びに税金の控除の特例について説明します。

土地売却でかかる費用とは

土地売却ではどのような費用がかかるのでしょうか。一覧で説明します。

仲介手数料
土地の売買契約が成立すると、仲介した不動産会社に仲介手数料を支払うことになります。その計算方法は土地代金により異なり、上限額は宅地建物取引業法で決められています。この仲介手数料は成功報酬となりますので、売買契約が成立しなければ支払う必要のないものです。計算方法は以下の通りです。

土地代金 仲介手数料の上限
200万円以下の部分 取引額の5%
200万円を超えて400万円以下の部分 取引額の4%
400万円を超えた部分 取引額の3%

これを計算式に表すと、400万円以上の物件の場合は次のようになります。

土地など不動産の売却金額 × 0.03 + 6万円 + 消費税 = 仲介手数料

なお、2019年10月より消費税が10%に引き上げられます。2%分の消費税が増えることで、仲介手数料の違いを比べてみましょう。

売却代金 消費税8%時の仲介手数料 消費税10%時の仲介手数料 差額
1,000万円 388,800円 396,000円 7,200円
2,000万円 712,800円 726,000円 13,200円
3,000万円 1,036,800円 1,056,000円 19,200円
4,000万円 1,360,800円 1,386,000円 25,200円
5,000万円 1,684,800円 1,716,000円 31,200円
6,000万円 2,008,800円 2,046,000円 37,200円
7,000万円 2,332,800円 2,376,000円 43,200円
8,000万円 2,656,800円 2,706,000円 49,200円
9,000万円 2,980,800円 3,036,000円 55,200円
1億円 3,304,800円 3,366,000円 61,200円

3,000万円の土地を売却した場合、消費税前と消費税後では仲介手数料に19,200円の差が出ます。仲介手数料は売買契約を締結する際に半金を支払い、引き渡し時に半金を支払います。売買契約が消費税増税前であっても、引き渡しが増税後となると半金については消費税10%で計算されますので注意が必要です。

税金

土地売却でかかる税金には、不動産譲渡所得税、住民税、印紙税、登録免許税があります。税金については、あとで詳しく説明します。

諸費用

測量費用

土地を売却する場合、測量費用が必要となります。土地売却では、登記簿謄本と実際の土地の境界線が違っていたり、面積に間違いがあったりして、後々隣家とトラブルになることを避けるため、取引前に測量を済ませておくのが一般的となっています。
現況測量図、地積測量図、確定測量図の3種類がありますが、実際に使われるのは確定測量図です。その違いを説明します。

現況測量図

現況を図っただけの図面です。隣接する土地の所有者から境界確認を得ずに作られているものは売買契約で使用はできませんが、隣接するすべての土地の所有者が立ち会って作成された測量図については、売主と買主が合意していれば契約に使用できます。

地積測量図

法務局に登記されている図面のことですが、古い測量図の場合は測量技術が今ほど精密ではないため正確とはいえない場合もあります。この地積測量図は、売買契約には使えません。

確定測量図

土地の境界線が明示され面積や寸法が確定した図面です。隣接する土地の所有者立会いで承認が得られたもので。さらに承諾員が得られていると信頼度が増します。売買契約時に使われるのはこの確定測量図です。確定測量の流れは、「法務局などで資料を取得→隣の土地の所有者や行政担当者に連絡→現地での測量調査→境界を確定し、境界杭を打つ→図面を作成し立ち会った所有者、隣接する土地の所有者などが押印する」という流れになります。

※一般的な確定測量にかかる費用は、100坪までの土地で35~45万円となっています。ただし、土地が公道に面していて行政の立会いが必要な官民立会いの場合、60~80万円ほどかかります。

司法書士への報酬

ローンを払っている土地を売却する場合の抵当権抹消登記や、売却にあたり行う住所変更登記は自分でも行えますが、手続きが面倒で多くの場合は司法書士に依頼します。この場合、司法書士に支払う報酬は司法書士事務所により異なりますが、抵当権抹消登記、住所変更登記共に、1件あたり5,000円~20,000円の範囲で請求されます。

建物の取り壊し費用

古い一戸建て住宅を売却する場合、家を取り壊して更地にして売却する方が売りやすいこともあります。このような場合、建物の取り壊し費用がかかります。費用の目安はおおよそ、木造で2~3万円/坪、軽量鉄骨造で3~4万円/坪、鉄筋コンクリート造で4~5万円/坪となっています。

土地売却でかかる税金とは

ここでは土地売却の際にかかる税金について説明します。
土地売却をすると、以下の税金がかかります。

印紙税

印紙税は土地売却時、不動産売買契約書に貼ることで納める税金です。印紙税額は契約金額によって違います。また、契約金額が10万円以上のものについては、2020年3月末まで軽減税率が適用されます。

契約金額 本則税率 軽減税率
10万円以下 200円
10万円超~50万円以下 400円 200円
50万円超~100万円以下 1,000円 500円
100万円超~500万円以下 2,000円 1,000円
500万円超~1,000万円以下 10,000円 5,000円
1,000万円超~5,000万円以下 20,000円 10,000円
5,000万円超~1億円以下 60,000円 30,000円
1億円超~5億円以下 100,000円 60,000円

この軽減税率は、土地売買の契約の際に取り交す売買契約書以外にも、たとえば売買金額を変更するために作成される変更契約書などについても適用されます。

登録免許税

土地や住宅などの不動産売買では、その土地が誰のものになったかを公的に証明するために、不動産移転登記や抵当権抹消登記を行います。
不動産登記を行うことで、買主は土地の所有者が自分になったと、その権利を主張することができるのです。
また、売主は売却物件にローンが残っていて、土地や建物に抵当権が付いている場合、売却するのは困難です。ローンを完済し抵当権抹消登記を行なって、抵当権がないことを公的に証明する必要があります。
土地の売買で売主から買主へ所有者を変更する不動産移転登記にかかる登録免許税は、土地売却金額の20/1000となっています。また、2019年3月末までは軽減税率が適用されて、15/1000となります。
ただし、売主→買主への不動産移転登記についての費用は、慣例として買主が負担することになっていますので、売却する側への負担はありません。
一方で、住宅ローンで抵当が付いている土地の抵当権抹消登記は、買主が負担することが慣例となっています。この場合の登録免許税は、1つの不動産に対して1,000円となっています。
マンション売却の場合は1,000円となります。しかし、土地に建物がある場合は土地に1,000円、建物に1,000円かかり、合計2,000円となります。また、1つの土地が1つの登記となっていれば1,000円ですが、分筆登記といって、いくつかの区画に分けられて登記されている場合、1つの区画ごとに1,000円かかります。

消費税

消費税は、課税事業者が消費されるものの取引をする場合に課税されますので、個人が自宅などを売却する場合は消費税はかかりません。また、事業者であっても土地は「消費するものではない」という考えのもと、土地売却については非課税となっています。もし、事業者が住宅など建物を一緒に売却する場合は、建物については消費税がかかります。

不動産譲渡所得税と住民税

不動産を譲渡して利益が出た場合については、その売却益は譲渡所得となり所得税と住民税が課税されます。2013年から2037年までの25年間は、2011年に起きた東日本大震災の復興のための財源確保を目的とした復興特別所得税が加算されます。
所得税と復興特別所得税は売却した年の翌年の3月15日までに確定申告を行い、一括して納めます。住民税は確定申告後、その申告内容が税務署から市区町村に報告されますので、改めて申告する必要はなく、売却した翌年の住民税として支払うことになります。
これらの所得税や住民税は、譲渡所得を通常の給与所得や事業所得と合計して計算するのではなく、分離して計算するために分離課税といわれています。

なお、不動産譲渡所得は、土地売却の代金からその土地を購入した際にかかった取得費用や売却時にかかった譲渡費用を差し引いて計算します。

課税譲渡所得金額の計算方法

土地など不動産売却代金 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除額(適用される場合)= 課税される譲渡所得金額

取得費…売却した土地や建物などを購入した際の購入代金や仲介手数料など、取得にかかった費用の合計です。建物の場合は減価償却費相当の金額が控除されます。
なお、受け継いだ土地で購入額がわからない場合や、購入した時の書類が残っていないなどの場合、あるいは実際の取得費が譲渡価額の5%に満たない場合については、譲渡価額の5%相当額を取得費として計算します。

譲渡費用…不動産会社に支払った仲介手数料、貸家を売却するのに支払った立ち退き料、測量費や建物取り壊し費用など土地を売るのにかかった費用をいいます。

なお、取得費、譲渡費用ともに領収書などの必要書類がないと認められませんので、不動産売買に関する書類は保管しておくようにしましょう。

・特別控除額…控除の特例により売却代金から控除できるものです。次項で詳しく説明します。

この計算式で計算をして、譲渡所得が出た場合は所得税と住民税が課税され、損失が出た場合は課税されません。

税額の計算

所得税と住民税の税額は課税譲渡所得金額に税率を掛けて計算します。

  所得税 住民税
長期譲渡所得 15% 5%
短期譲渡所得 30% 9%

税率は長期譲渡所得か短期譲渡所得かで異なります。これは、バブル期に投機目的で短期間に土地を売り買いする土地の転売が盛んになったため、土地転がしを防ぐ目的で定められたものです。

長期譲渡所得…土地など不動産を売却した年の1月1日現在で、その売却物件の所有期間が5年を超えている場合は長期譲渡所得となります。

短期譲渡所得…土地など不動産を売却した年の1月1日現在で、その売却物件の所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得となります。

なお、これらの所得税、住民税のほか、確定申告の際には、基準所得税額に2.1%を掛けた復興特別所得税が課税されます。

土地売却で課税される所得税と住民税の控除について

土地売却では以下の条件に該当する場合、各種控除が受けられます。

土地売却で控除を受けられるための条件

  • その土地が居住用であり、住居と一緒に売却する場合。
  • 転居から3年後の12月末までに、住居としていた建物と一緒に土地を売却する場合。
  • 災害などで住んでいた住居が滅失し、災害のあった日から3年後の日が属する年の12月末までに、その土地を売却する場合。
  • 転居した後に住居だった建物を取壊した場合、転居してから3年後の12月末までか、取壊してから1年以内か、いずれか早い日までにその土地を売却する場合。ただし、取壊し後にその土地を貸した場合や、事業に使った場合は適用外となります。

譲渡所得がある場合に受けられる特例

マイホームを売却した時の3,000万円の特別控除

3,000万円の特別控除は、譲渡所得を計算するにあたって、マイホームを売却する場合に限って3,000万円を控除できるというものです。

不動産売却代金 -(取得費+譲渡費用)- 3,000万円= 課税される譲渡所得金額

この3,000万円特別控除で、住んでいた家と土地、マンションなどを売却しても所得税が非課税となる人はかなりの数になります。ただし、この特別控除は、親族や同族会社に売却した場合には適用されませんので注意が必要です。

所有期間10年超のマイホームを売却した場合の軽減税率の特例

長期所有と短期所有で所得税率や住民税率が違うという説明をしましたが、さらにこの軽減税率の特例では、所有期間が10年を超えるとさらなる軽減税率が適用されます。

譲渡所得金額 所得税 住民税
6,000万円以下の部分 10% 4%
6,000万円超の部分 15% 5%

※譲渡所得金額は、3,000万円の特別控除適用後の金額となります。

3,000万円特別控除を適用しても所得税が課税される人でも、10年を超えて住んでいた物件であればこの控除が適用されて所得税や住民税が節税できます。

特定のマイホームの買換え特例

特定のマイホームを2019年12月末までに売却し、代わりのマイホームに買換えた場合、一定の条件のもとで譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができる特例があります。

譲渡金額 ≦ 買換え金額の時

譲渡益の課税が、将来買換え物件を売却する時まで繰り延べられます。
※譲渡益が非課税となるわけではありませんのでご注意ください。

買い替え特例を受けるための売却物件の条件

  • 売却する物件は居住期間が10年以上であること。
  • 転居してから3年後の12月末までに売却すること。
  • 災害で住居を減失した場合、その住居を所有していたならば、その年の1月1日で所有期間が10年を超える土地であること。
  • 売却額が1億円以下のもの。

なお、前年、前々年に上の1、2の特例を受けていると特例を受けられませんので、どちらが自分にとって節税となるのかしっかりシミュレーションをして検討することが大切です。

譲渡で損失が出た場合に受けられる特例

マイホーム買換えで譲渡損失が出た場合の損益通算及び繰越控除の特例

買換えを行うことを前提に、住居としていた物件2019年12月末までに売却した場合、その年の1月1日時点での所有期間が5年を超え、譲渡損失が発生した場合、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)できる特例です。その年で控除しきれなかった場合には、翌年以降3年間繰越控除できます。
損益通算は、給与所得等他の所得のプラスと、譲渡損失のマイナスを合算させることで、全体の所得を下げ、所得税を節税できます。

この特例の適用を受けるためには、以下の条件が必要です。

この特例を受けるための売却物件の条件

  • 売却する物件は売却する年の1月1日時点で所有期間が5年以上であること。
  • 親族などへの売却ではないこと。
  • 転居してから3年後の12月末までに売却すること。
  • 家屋を取り壊して土地を売却する場合、所有期間が5年以上で、転居から3年以内かつ取り壊してから1年以内に売却すること。

この特例を受けるための買換え物件の条件

  • 売却した年の前年1月1日から翌年12月31日までに取得し、取得した日からその年の12月末までに居住を開始すること。
  • 取得をした年の12月末または、特例の適用を受けようとする年の12月末において買換え物件に一定の住宅ローン残高があること。
  • 登記簿面積が50㎡以上であること。
マイホーム売却で譲渡損失が出た場合の損益通算及び繰越控除の特例

特例の内容は、1で説明した居住用財の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例と同じですが、買換えが条件とはなっていません。
この特例の適用を受けるためには、1の売却物件に該当する条件のほかに、売却にあたって譲渡契約を締結した日の前日において一定の住宅ローン残高があることが条件となっています。
なお、この特例では、「譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額」か「譲渡資産にかかる一定の住宅ローンの金額から譲渡資産の譲渡対価の額を控除した残額」の少ない額が損益通算の対象となります。

土地売却をお考えの方は、売却にかかる諸費用や税金についてもよく理解し、どのような控除の特例を利用すればいちばん節税できるのか検討してみましょう。