不動産売却では、希望の金額で売却できたと満足していたら、売却にかかった費用や税金が意外とかかり、手元に残ったお金が思ったより少なくてがっかりしたという話も聞きます。
不動産を売却すると、いろいろ費用がかかるものです。
不動産売却をするとどんなことに費用がかかるかよく理解し、少しでも安く抑えるためのポイントを知っておきましょう。

不動産売却にかかる費用とは?返却される費用もある

不動産売却には、以下のような費用がかかります。

費用 ●絶対にかかる
▲場合によってかかる
安くできるポイントあり
仲介手数料
ローン返済と手数料  
抵当権抹消登記費用
売買契約書の印紙税  
不動産譲渡所得税
リフォーム費用
クリーニング費用
引越費用

仲介手数料

不動産売却をする場合、不動産会社に仲介依頼をしますが、契約は成功報酬制ですので、売買が成立した場合のみ仲介手数料を支払います。この仲介手数料は各不動産会社で定めていますが、法外な金額にならないよう宅地建物取引業法で上限が決められています。

成立金額のうち、

200万円以下の部分 取引額の5%を上限とする
200万円超、400万円以下の部分 取引額の4%を上限とする
400万円超 取引額の3%を上限とする

たとえば、2,000万円で不動産を売却した場合の手数料は、

2,000万円のうち200万円については5%→200万円×0.05=10万円
2,000万円のうち200万円から400万円については4%→200万円×0.04=8万円
2,000万円の残り1600万円については3%→1600万円×0.03=48万円

と計算し、10万円+8万円+48万円で、仲介手数料は66万円になります。
これを簡単な計算式にすると、400万円以上の物件については、成立金額×0.03+6万円となります。
この仲介手数料には、消費税がかかります。
消費税は2019年10月から10%に引き上げられます。一部の品目については軽減税率で8%据え置きとなりますが、住宅売却の手数料は10%となる予定です。
売却成立金額に対しての仲介手数料と、それにかかる消費税を8%と10%で比較したものが以下の表です。

成立金額 仲介手数料 消費税(8%) 消費税(10%) 消費税差額
1,000万円 360,000円 28,800円 36,000円 7,200円
2,000万円 660,000円 52,800円 66,000円 13,200円
3,000万円 960,000円 76,800円 96,000円 19,200円
4,000万円 1,260,000円 100,800円 126,000円 25,200円
5,000万円 1,560,000円 124,800円 156,000円 31,200円
6,000万円 1,860,000円 148,800円 186,000円 37,200円
7,000万円 2,160,000円 172,800円 216,000円 43,200円
8,000万円 2,460,000円 196,800円 246,000円 49,200円
9,000万円 2,760,000円 220,800円 276,000円 55,200円
1億円 3,060,000円 244,800円 306,000円 61,200円

売却のタイミングが消費税引き上げ後になりますと、このように税金が多くかかってしまいます。普通、仲介手数料は売買契約締結時に半分を支払い、残り半分を引き渡し時に支払うことになっています。消費税引き上げ前の売却を狙っていても、引き渡しが消費税引き上げ後になった場合、その半額分については10%で課税されますので注意しましょう。

ローンの繰り上げ返済とその手数料

住宅ローンが残ったままの不動産は売却ができません。住宅ローンを借りた際に登記簿につけた抵当権を抹消しないと、新しい所有者に登記変更できません。
しかし、不動産売却前に住宅ローンの残額を一括返済できる資金があるとは限りません。通常、不動産売買契約が成立し、引き渡しの時に残金の決済と同時に抵当権抹消と所有者移転の登記を一括して行います。
住宅ローンの繰り上げ返済には、各銀行で決められた事務手数料がかかり、その金額は5,000円~数万円とかなり差があります。利用する住宅ローンを決める際、各ローンの金利を比較はしますが、なかなか事務手数料まで注意は払いません。売却の段階ではじめて、「借りたローンの手数料が他より高かった!」と後悔してしまうこともあるかもしれません。
マイホームの買い換えなどで、新しいローンを組む際は、事務手数料もチェックしておきましょう。
なお、現在借りているローンの事務手数料は、住宅ローンを借りた際の契約書に記載がありますので確認してください。

抵当権抹消登記費用(登録免許税と司法書士への報酬)

新しい所有者への所有権移転登記は買った側が負担、抵当権抹消登記については売った側が負担というのが一般的になっています。そのため、不動産売却で売主が支払うのは抵当権抹消にかかる登録免許税と司法書士への報酬です。登録免許税は不動産1つに対して1,000円となっています。もし一戸建てを売却した場合は、土地で1,000円、建物で1,000円となります。また、土地が2分割、あるいは3分割に分かれて登記されている場合は、1区画について1,000円となりますので注意してください。
司法書士への謝礼は5,000円~15,000円となっています。

売買契約書の印紙税

不動産売買に関する契約書は、租税特別措置法によって印紙税の軽減措置が取られ、税率が引き下げられています。軽減措置の対象となるのは、2014年4月1日~2020年3月31日の間に作成される、記載金額が10万円を超えるものです。
これは、土地・建物の売買当初に作成される契約書のほか、売買金額が変更される際に作成される変更契約書、補充契約書等も該当します。
印紙税の本来の税率と、軽減される税率は以下の通りです。

契約金額 本則税率 軽減税率
1万円未満 非課税  
1万円以上10万円以下 200円 対象外
10万円超50万円以下 400円 200円
50万円超100万円以下 1,000円 500円
100万円超500万円以下 2,000円 1,000円
500万円超1,000万円以下 10,000円 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 20,000円 10,000円
5,000万円超1億円以下 60,000円 30,000円
1億円超5億円以下 100,000円 60,000円
5億円超10億円以下 200,000円 160,000円
10億円超50億円以下 400,000円 320,000円
50億円超 600,000円 480,000円

不動産譲渡所得税と住民税

不動産売却では、不動産譲渡所得税と住民税がかかる場合があります。
もし、売却した金額が、その不動産を購入した金額よりも安かった場合、売却損となるので税金はかかりません。
では、購入金額よりも売却金額が高ければかかるのかというと、そうでもありません。
不動産売却における譲渡所得(売却益)とは、売却金額から購入金額を引いて利益が出るかどうかというものではありません。購入金額のほかに、取得にかかった費用や譲渡にかかった費用も合わせて引くことができるので、その分利益を圧縮することができます。

譲渡所得の計算方法

×   売却金額 ― 購入金額

〇   売却金額 ― 取得費・譲渡費用(購入金額+取得と譲渡にかかった諸経費)

取得費・譲渡費用について、その詳細は以下の通りです。

取得費

取得費は売却した不動産を購入した際の購入金額のほか、購入手数料など資産取得にかかった費用、さらにその後発生したリフォーム費や設備費も含まれます。
ただし、建物についての取得費は所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。
また、古くからの家を引き継いで住んでいるなど、不動産の取得費がわからい場合や実際の取得費が売却金額の5%より少なかった場合には、譲渡金額の5%を取得費とすることができます。

譲渡費用

譲渡費用は不動産を売却するためにかかった費用のことで、仲介手数料、売買契約書の印紙税、測量費、売却するため借家人に払った立ち退き料、家を壊して更地にして売る場合の取り壊し費用なども含まれます。

譲渡所得税は、以上の費用の計算をして売却益(譲渡所得)が出た場合に、税率をかけて計算します。不動産を売却した年の1月1日時点で、その不動産の所有期間が5年を超えている場合は「長期譲渡所得」となり、5年以下の場合は「短期譲渡所得」となって、税率が変わります。

長期譲渡所得の場合 譲渡所得税 長期譲渡所得金額×15%
住民税 長期譲渡所得金額×5%
短期譲渡所得の場合 譲渡所得税 長期譲渡所得金額×30%
住民税 長期譲渡所得金額×9%

長期譲渡所得、短期譲渡所得のどちらも、2013年から2037年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて納付しなければなりません。

土地境界画定測量費用

土地を売却する場合、後々となりの所有者と境界線をめぐってトラブルになるのを避けるために、測量して隣地との境界線をはっきりさせ、権利関係を明確にしておかなければ売却できません。そのためにかかる費用が土地境界画定測量費用です。

リフォーム・クリーニング費用、引っ越し費用

不動産を売却するにあたって傷んだところをリフォームする、あるいは引渡し前にクリーニングをするなど、リフォームやクリーニング費用がかかります。
また、不動産売却の契約が成立すると、引き渡し前に引っ越しをしなければなりませんので、その費用がかかります。このほかに、不要な家具などを処分する場合は、廃棄物処理費がかかります。

返還される費用

不動産売却には、返還される費用もあります。
固定資産税と都市計画税はその年の1月1日時点の所有者に対して、1年分の税金の請求が届きます。請求を受け取った売主が1年分を支払いますが、引き渡し日以降の分は買主の負担として按分計算し返還されます。マンション売却の場合は管理費や修繕積立金についても、日割り計算しで返還されます。いずれも、買主から残金が支払われる決済日に精算金として入金されます。

不動産売却にかかる費用を安くするには①複数の会社から見積もりを取って決める

不動産会社は、最初に説明した通り、法律で仲介手数料の上限が決まっており、各社はその範囲内で料金を設定しています。無料で複数の不動産会社から査定見積もりが取れる、不動産売却一括査定サービスを利用すると、高く売ってくれる不動産会社を見つけることができますが、その際仲介手数料についても比べてみることで手数料を安く抑えられます。
また、リフォームやクリーニング、引っ越し費用についても、複数の会社の見積もりを取ることで、安くてよいサービスを提供してくれる会社を見つけられます。

不動産売却にかかる費用、安くするには②不動産譲渡所得税・住民税を安くする

不動産譲渡所得税・住民税は、長期譲渡所得と短期譲渡所得で税率に差が出ますが、その他にも、一定の条件を満たせば優遇税制が利用でき税金を抑えることができます。これらの優遇税制を理解して、上手に活用しましょう。

マイホーム売却の3,000万円特別控除の特例

マイホームを売却したときは、所有期間の長期・短期に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります。

住宅借入金等特別控除

2021年12月31日までに住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合、一定の条件を満たせば所得税額から一定額が控除される制度です。控除される期間は、2013年度以降に購入した物件については10年間となっています。

10年超所有の軽減税率の特例

マイホームを売却した年の1月1日時点で、そのマイホームの所有期間が10年を超えている場合、「マイホーム売却の3,000万円特別控除の特例」適用後、課税される長期譲渡所得金額については、以下の税率で税金を計算することができます。

課税譲渡所得6,000万円までの部分
所得税10%、住民税4%
課税譲渡所得6,000万円を超える部分
所得税15%、住民税5%

マイホーム買い換え特例

2019年12月31日までに、居住していたマイホームを売却して新しいマイホームに買い換えて、売った金額より買い換えた金額の方が高かった場合、一定の条件を満たせば譲渡所得に対する課税を将来買い換えたマイホームを譲渡するまで繰り延べられる特例があります。
ただし、売却した年、前年、前々年に「マイホーム売却の3,000万円特別控除の特例」「10年超所有の軽減税率の特例」「マイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を適用している場合は利用できません。
また、住み始めた年、その前年、前々年に、この特例の適用を受けた場合は、「バリアフリー住宅ローン控除」は受けられないなど、他の控除との併用は難しくなっていますので、詳細を確認して適用を受けるようにしてください。

マイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

マイホームを売却して買い換えた際、譲渡によって損失が出た場合には、一定の条件を満たせば、その年のその他の所得と相殺して所得税や住民税が減らせる特例があります。また、その年の所得では相殺しきれない場合は、最長3年間控除が繰り越せる特例もあります。

手間をかけて費用を抑える工夫も

不動産売却にかかる費用を抑える方法としては、手間はかかりますが、する所有権抹消登記を司法書士に依頼しないで自分で行えば、司法書士へ払う費用を節約することも可能です。
また、不動産売却を考え始めたら、不動産の市場動向や同じエリアの不動産物件の売買情報などを集めて、高く売れるタイミングを考える、仲介業者(不動産会社)をじっくり選ぶなど、手間暇をかけて高く売却できれば、結果として費用を圧縮することができます。