岩手県

岩手県内の中古マンション、中古戸建て、土地の相場と不動産売却の事例を紹介します。
まず結論からいうと、岩手県全般の傾向としては、不動産市場に勢いは感じられません。不動産の売却を検討している方にとっては厳しい状況が続きそうです。
東京と地方の大都市では、不動産価格の値上がりが顕著で「プチバブル」の様相を呈していますが、岩手県にはまだその波は訪れていないようです。

ただ明るいニュースがないわけではありません。県庁所在地の盛岡市の不動産市場には回復の兆しがみられます。また岩手県内の地方では大型投資もみられます。
不動産価格はその土地の経済状況とともに上がり始めます。したがって売却用の不動産のオーナーは、不動産所在地の地域経済を把握し「売り時」を逃さないようにしたいところです。
そこでこの記事では不動産相場や市況だけでなく、「地域性に徹底的にこだわった」不動産関連ニュースやトピックスも紹介していきます。

岩手県の不動産価格に影響を与えそうなトピックス

岩手県内の不動産価格に影響を与えそうなニュースやトピックスを紹介します。

人口は減少、経済成長率も鈍化

右肩下がり

不動産価格は経済動向の影響を受けますが、経済動向は人口動向の影響を受けます。岩手県は残念ながら、人口も経済も鈍化しています。

2016年10月現在の岩手県の人口は1,268,083人です。
岩手県の人口は昭和53年(1978年)から140万人台を維持していましたが、2004年に130万台に落ち込むとその後も減少を続け、2013年には130万人を割り込みました。そして依然として減少傾向に歯止めはかかっていません。
その一方で世帯数は増加傾向にあり、2016年には約52万世帯となりました。人口が減るなかで世帯数が増えるということは、1世帯当たりの人員数が減ることを意味します。それはすなわち「大きな家」や「立派なマンション」への需要が低下することでもあります。
廉価住宅が増えれば「不動産デフレ」がさらに進み、中古不動産は値下がりします。

岩手県の2014年の県内総生産は4兆9,025億円で、前年比1.0%増でした。ただ、増加率は、2011年3.1%増、2012年4.9%増、2013年4.9%増より確実に鈍化しています。そして岩手県の県内総生産の全国シェアは0.95%で、「日本経済への貢献度は1%に満たない」状況です。
ネガティブな数字はまだあります。
岩手県民の平均所得は271万6千円で、国民平均所得より3.3%低い水準です。

こうした経済指標が軒並み悪い数字を示していることは、「岩手県全体の不動産市場に勢いが感じられない」傾向のベースになっていると考えられます。

宮古市のメガソーラーは2020年に稼働

サステナジー株式会社(本社・東京都渋谷区)は岩手県宮古市に、大規模太陽光発電所「メガソーラー」を建設します。完成は2020年3月です。
宮古市は県東部の海の街で、2011年3月11日の東日本大震災で大きな被害を受けました。宮古市は岩手県内で最大の面積を有し、全国市町村の面積でも11位になります。今回のメガソーラー事業はその広大な土地を活用できることになります。
メガソーラーを建設する土地は未利用地で、地権者が有効利用を検討していました。年間発電量は1,450万kWhで、3,000世帯分の電気をまかなうことができます。
この事業は電気事業以外の経済効果が期待できます。
事業自体はサステナジー系列が実施するのですが、三井住友ファイナンス&リースと富国生命保険相互会社が、太陽光パネルなどの発電設備一式をリースします。また設計や施工などは大和ハウス工業が担当し、太陽光パネルは中国のジンコソーラー社のものをつかい、パワーコンディショナーはやはり中国のファーウェイ社のものを使います。
これだけの大企業や優良企業が50億円を投資しますので経済効果に期待が膨らみます。

東芝は最低でも1,000億円を投資

東芝メモリ株式会社(東京都港区)は、県中央部の北上市に、コンピュータの主要部品であるフラッシュメモリーの製造工場をつくります。工場は2019年に完成し、2020年から量産を始めます。総事業費は公表していませんが、製造工場のだけで1,000億円になることがわかっています。
株式会社東芝は原子力発電事業が失敗したことで多額の負債を抱え、「稼ぎ頭」の東芝メモリ株式会社をアメリカの投資ファンドに売却しました。
それで東芝メモリはこうした攻めの投資ができるわけです。

北上市は県南部に位置し、東北自動車道、秋田自動車道、東北新幹線にアクセスできます。この流通のよさを武器に北上市はこれまで180社以上誘致してきました。東芝メモリも北上市の価値をみつけることができたのでしょう。
東芝メモリがつくっている半導体関連部品は将来が有望な事業です。これだけの大企業の一大拠点が北上市にできることは、地域経済にとって一定のインパクトをもたらすでしょう。
経済が上を向けば不動産価格が上昇することが期待できます。

岩手県の中古マンションの売買状況

岩手県内の中古マンションの売買状況をみていきましょう。
中古マンションの価格に影響を与えそうなトピックスと、地域ごとの相場を紹介します。

JR盛岡駅から徒歩11分「レーベン盛岡中央通THE BIRTH」は2020年7月完成

株式会社タカラレーベン(東京都千代田区)が、JR盛岡駅から徒歩11分の盛岡市中央通り3丁目に建てている96戸、13階建ての「レーベン盛岡中央通THE BIRTH」は2020年7月に完成します。

販売価格は公表されていませんが、部屋の広さは55~100平方メートルで夫婦2人世帯から子育て世帯まで入居できます。
ロケーションとしては、県庁や市役所、県警本部などの官公庁、商業施設、教育機関、岩手医科大学附属循環器医療センターなどの医療機関が徒歩圏内にありながら、北上川や中津川、岩手公園といった自然環境にも恵まれています。
都市機能と自然の融合は、地方都市の魅力のひとつです。

新築マンションができることは、一般的には中古マンションには不利になります。新築マンションと比較すると中古マンションの劣化が目立ってしまうからです。
ただ「盛岡市中央通り」は地域としてのステータスが元々高いので、新築マンションができると土地の魅力が増します。「盛岡市中央通りに住みたいけど新築マンションは手が出ない」人たちが中古マンションに流れてくる可能性があります。
ただ単純に楽観視できない状況もあります。

盛岡市愛宕町の2017年完成の新築マンションが200万~300万円引きで販売

盛岡市愛宕町に2017年に完成した9階建てのマンションで、2階4LDK(81平方メートル)の2,990万円の部屋が2,690万円に、9階3LDK(69平方メートル)の2,920万円の部屋が2,700万円に値下げして販売しています(2018年11月現在)。いずれも未入居の新品です。
愛宕町は中津川に面し、愛宕山記念公園が近くにある住環境に恵まれた地域です。
新築マンションが1年半ほど売れ残ることは珍しくありませんが、この2部屋の値引き幅200万~300万円は決して小さくありません。
盛岡市民の購買力とマンション市場の双方に力強さが感じられません。
先ほど紹介した「レーベン盛岡中央通THE BIRTH」の建設は将来的に中古マンション市場にプラスに働くかもしれませんが、現状は楽観視できないといえるでしょう。

岩手県の中古マンション市況

岩手県内の中古マンション市況をみていきます。不動産販売会社のデータを利用して岩手県内全市町村別、面積別の平均価格を表にしました。
念のため全市町村を表示しましたが、市場が形成されているのは盛岡市、北上市、一関市、奥州市の4市でした。

岩手県の中古マンションの市況

地区 ~40m2 ~50m2 ~60m2 ~70m2 ~80m2 ~90m2 ~100m2 101m2~
盛岡市 355万円 1,490万円 1,125万円 1,890万円 3,350万円
宮古市
大船渡市
花巻市 2,100万円
北上市 1,680万円 1,890万円 2,880万円
久慈市
遠野市
一関市 2,850万円 2,760万円
陸前高田市
釜石市
二戸市
八幡平市
奥州市 1,960万円 1,805万円 2,200万円
滝沢市
岩手郡雫石町
岩手郡葛巻町
岩手郡岩手町
紫波郡紫波町
紫波郡矢巾町
和賀郡西和賀町
胆沢郡金ケ崎町
西磐井郡平泉町
気仙郡住田町
上閉伊郡大槌町
下閉伊郡山田町
下閉伊郡岩泉町
下閉伊郡田野畑村
下閉伊郡普代村
九戸郡軽米町
九戸郡野田村
九戸郡九戸村
九戸郡洋野町
二戸郡一戸町

盛岡市の4,700万円の中古マンションの詳細

上の表のなかから、盛岡市の物件を紹介します。
東北新幹線・盛岡駅から徒歩4本の21階建て2013年6月完成のマンションの5階、3LDK(87平方メートル)の部屋が4,700万円で売りに出されています。
部屋の広さや階数からするとかなり強気な価格設定に感じるかもしれませんが、岩手県内では珍しいタワーマンションという付加価値が背景にあるのでしょう。

岩手県の中古戸建ての売買状況

岩手県内の中古戸建ての相場と、中古戸建ての価格に影響しそうなトピックスを紹介します。

県が提唱する「岩手型住宅」は戸建ての付加価値を高めるか

岩手県は岩手型住宅の建設を推進しています。そのコンセプトは次のとおりです。

  • 岩手県の厳しい気候でも快適にすごすことができる住空間
  • 省エネ性能(木質バイオマスエネルギーの活用)
  • 県産木材の使用

岩手県は冬の寒さが厳しいので、暖房エネルギーの消費が増えます。また、家のなかの暖かい部屋と寒い部屋の温度差が大きくなることで心臓に過剰な負荷をかけてしまうヒートショック現象も問題になっています。省エネルギー化した住宅は暖房費を減らせるだけでなく住宅をより安全にすることができるのです。
また岩手県は面積の8割が森林で占められる木材の県です。地産地消することで地元経済が潤うだけでなく、木材を移動させる距離が短くなるので二酸化炭素の排出抑制効果も得られます。
岩手県はこの岩手型住宅をつくる業者を選定し、より付加価値が高い木造住宅の普及を目指しています。この取り組みは、長期的な視野に立つと中古戸建て市場の底上げにつながるでしょう。

岩手県の中古戸建て市況

岩手県内の市町村ごとの中古戸建ての平均価格を、不動産販売会社のデータなどを活用して表にしました。
ただ岩手県では「~100平方メートル」までの市場が形成されていなかったため、「101平方メートル~」の価格帯のみ掲載しました。

岩手県の戸建ての市況(市場が形成されている101平方メートルのみ掲載)<>

地区 101m2~ 地区 101m2~
盛岡市 2,024万円 岩手郡雫石町 660万円
宮古市 1,539万円 岩手郡葛巻町
大船渡市 岩手郡岩手町
花巻市 1,452万円 紫波郡紫波町
北上市 1,571万円 紫波郡矢巾町 1,299万円
久慈市 和賀郡西和賀町
遠野市 胆沢郡金ケ崎町 889万円
一関市 1,890万円 西磐井郡平泉町
陸前高田市 気仙郡住田町
釜石市 上閉伊郡大槌町
二戸市 下閉伊郡山田町
八幡平市 下閉伊郡岩泉町
奥州市 1,384万円 下閉伊郡田野畑村
滝沢市 2,275万円 下閉伊郡普代村
九戸郡軽米町
九戸郡野田村
九戸郡九戸村
九戸郡洋野町
二戸郡一戸町

盛岡市みたけの2,680万円の物件とは

上の表のなかから、盛岡市みたけの木造2階建て4LDK(133平方メートル)2,680万円の物件をみてみましょう。
外観はコンクリート打ちっぱなしを彷彿(ほうふつ)とさせるグレー単色で、無機質さがモダンな雰囲気を醸し出しています。
家のなかに入ると白い壁紙と木肌がむき出しの柱と梁(はり)が目を引きます。133平方メートルなら一家5人で住んでも問題のない広さで、駐車場もあります。
完成は2006年8月です。
最寄り駅のいわて銀河鉄道・厨川駅までは徒歩22分ですが、JR盛岡駅の半径5キロメートル以内に入っているので、自家用車を保有していれば不便を感じることはないでしょう。
築年数は10年を超えますが、この立地とこの家の雰囲気であれば、3,000万円を大幅に割り込む価格は妥当といえるでしょう。

一関市旭町の3,550万円の物件とは

上の表のなかから、一関市旭町の木造2階建て7DK(200平方メートル)3,550万円の物件をみてみましょう。
JR東北線と新幹線の共通駅である一ノ関駅から徒歩5分という立地のよさです。7DK200平方メートルの「かなり広い家」ですが、驚くのは土地面積で652平方メートルもあります。玄関や庭は豪邸の雰囲気すら漂います。
完成は2004年で古さは感じません。
一関市は岩手県の最南端に位置し、県内2位の人口を誇ります。
一関市旭町には製紙工場があり経済的に豊かなことからこれだけ大きな家が建ったのでしょう。住宅規模と新幹線駅の近さから考えると、この価格は決して「高い」とはいえません。

滝沢市牧野林の2,598万円の物件とは

上の表のなかから、滝沢市牧野林の木造2階建て4LDK(101平方メートル)2,598万円の物件をみてみましょう。
立地はいわて銀河鉄道・厨川駅の半径3キロメートル以内の場所にあり、完成は2017年9月と、まだ新築の香りがしそうです。
滝沢市は盛岡市に接し、盛岡経済圏に組み込まれています。そして同市牧野林は森林や牧場が広がる広大なエリアに接していて、自然の豊かさも魅力です。
築浅であることと100平方メートルを超える広さから、2,598万円の値段は魅力があるでしょう。

岩手県の土地の売買状況

岩手県の土地価格に影響を与えるトピックスと売買状況をみていきます。

2018年地価調査、県全体の住宅地価格は18年連続下落

2018年の岩手県の地価調査は「日本の好景気はまだ岩手県に届いていない」と感じさせる結果になってしまいました。
県全体の住宅地の平均変動率は前年比1.2%減少と18年連続で下落してしまいました。しかも下げ幅は前年の1.1%減より広がっています。
盛岡市の住宅地の平均変動率は前年比0.4%増と4年連続で増加したものの、こちらも前年の1.1%増と比べると上げ幅は狭まっています。
そして東日本大震災で被害を受けた県沿岸部の住宅地の平均変動率は1.8%減と3年連続で下落しました。

ただ前年より価格が上昇した住宅地の地点は38地点あり、その内訳は盛岡市26地点、北上市1地点、滝沢市4地点、築波町1地点、矢巾町6地点でした。
盛岡市の南部に接している矢巾町で6地点も上昇したのは岩手医科大学附属病院が盛岡市から移転したからです。このように県民が重視する施設が建つと、地域の不動産価格は顕著に上昇します。

岩手県内の不動産専門家は、住宅地の値下がり傾向について、被災地の移転需要が鎮静化したことが大きいとみています。「公営住宅の整備がひと段落し、新たに土地を取得しようという動きがほぼなくなった」と分析しています。

商業地はさらに厳しい状況で、県全体の平均変動率は2.0%減で、25年連続で下落しました。

岩手県の土地市況

岩手県の「~100平方メートル」の土地は市場が形成されていません。そのため「101平方メートル~」のみ、みていきます。

岩手県の土地の市況(市場が形成されている101平方メートルのみ掲載)

地区 101m2~ 地区 101m2~
盛岡市 938万円 岩手郡雫石町 1,117万円

宮古市 岩手郡葛巻町
大船渡市 695万円 岩手郡岩手町
花巻市 459万円 紫波郡紫波町
北上市 590万円 紫波郡矢巾町
久慈市 和賀郡西和賀町
遠野市 胆沢郡金ケ崎町 601万円
一関市 240万円 西磐井郡平泉町 978万円
陸前高田市 760万円 気仙郡住田町
釜石市 上閉伊郡大槌町
二戸市 下閉伊郡山田町
八幡平市 315万円 下閉伊郡岩泉町
奥州市 下閉伊郡田野畑村
滝沢市 481万円 下閉伊郡普代村
九戸郡軽米町
九戸郡野田村
九戸郡九戸村
九戸郡洋野町
二戸郡一戸町

一関市でも苦戦

県内では経済力があるほうの一関市でも、230平方メートルの住宅地が250万円、242平方メートルの住宅が230万円という価格になっています。
売却用の土地を持っている方は、なかなか「売り時」が測れず苦労しているのではないでしょうか。

盛岡市の土地の売買状況

盛岡市の土地価格をみていきましょう。

  • 高松4丁目の207平方メートルの住宅地は750万円です。周囲は新興住宅地を形成していて、新しい家が並びます。
  • 同じ高松4丁目でも別の住宅地は175平方メートルで1,058万円と割高な設定になっています。
  • 高松町2丁目の住宅地は323平方メートルで1,650万円です。JR盛岡駅からバスで25分かかり、バス停からさらに徒歩6分という距離にあります。
  • 黒石野1丁目の242平方メートルの住宅地は800万円です。
  • みたけ3丁目の439平方メートルの住宅地は2,255万円です。付近は中規模の住宅が立ち並ぶ中産階級の住宅街を形成しており、落ち着いた雰囲気があります。

雫石町の1,669平方メートルの土地が2,000万円

雫石町は東側を盛岡市に接し、西側を秋田県に接します。温泉やスキー場、ゴルフ場のほか、全国的に知られている小岩井牧場がある、自然と観光の街です。
その雫石町笹森で、1,669平方メートルもの広大な住宅地が2,000万円で売りに出ています。秋田新幹線の雫石駅と小岩井駅の両駅から3キロメートルほどしか離れていない好立地です。
また3キロメートルほど離れた場所には岩手県立御所湖広域公園があり、県民の憩いの場になっています。
都会のビジネスパーソンが定年退職後に移住先を考えるとき、こういった「穴場」的な田舎はおすすめかもしれません。

まとめ~不動産オーナーの苦悩はまだ続きそう

岩手県の不動産価格の弱さは地方特有といえるでしょう。岩手県は東京から遠く離れ、近隣には宮城県仙台市という東北を代表する大都市があります。企業が岩手県内で大きなビジネスを展開することは難しく、その結果不動産需要が低迷しているのです。
また地方の安い土地に吸い寄せられるように工業投資は目立ちますが、こちらは一定の経済効果は期待できますが、定住人口の大幅増までは期待できないでしょう。
例えば太陽光発電所は完成してしまえばそれほど多くの人員を必要としませんし、最近の工場は無人化や省人化が進んでいます。
さらに国内景気は2020年の東京オリンピック・パラリンピックを機に低迷するとの観測も流れています。そうなるとますます、岩手県内の中古マンション、中古戸建て、土地は売りにくくなります。したがって岩手県内の不動産オーナーは「売れるときが売り時」の原則とおりに売却したほうがいいかもしれません。